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未来の建設業を考える:「水力発電」(2023年11月1日)

機械学習

 AI(人工知能)時代を制すためには、膨大な量のデータを活用した機械学習データ分析が必要とされる。科学技術振興機構によれば、世界のIPトラフィック(一定時間内のデータ流通量)は2030年には現在の30倍以上、2050年には4,000倍にも達すると予想される。これに比例して、2030年には現在の年間使用電力量の倍近い電力が必要となる。

AI時代に必要な電力量

 大量のデータを処理する半導体やIT機器の開発に加え、いかにAI時代に必要な電力量を確保するかが、今後の日本のAI発展を制する時代を迎える。

日本のエネルギー事情

 ただ残念ながら日本のエネルギー事情は貧困な限りだ。経産省の調べ(2022年)によれば、世界の主要国エネルギー自給率ランキングの1位はノルウェーで、759%(自国消費量の約7.6倍の供給量があるということ)、2位がオーストラリア、3位がカナダ、日本は11%で37位。米国でも100%を超える。
 ノルウェーにおける自給率が高いのは、フィヨルドなど急峻な地形を活かして、雪解け水など豊富な水量を利用した水力発電を中心に、自国電力消費量の約9割を賄っている。カナダもナイアガラの滝に代表されるように、カナダの電力需要の約6割を水力発電でまかなっている。アイスランドオーストリアなども同様だ。日本も山岳に囲まれ、また降水量は世界平均の2倍と多いため、高低差を利用した水力発電が大いに可能だ。日本における水力発電の導入ポテンシャルは、中国、米国、カナダなどに次いで世界5位であり、欧州の水力発電大国であるロシアやノルウェーよりも大きいと言われている。
 しかし残念ながら、2022年の日本の水力発電量は約8%で75億kWhでしかない。日本の発電量の7割は石炭などの化石燃料による火力発電に依存しているのが現状だ。

水力発電は二酸化炭素を出さない発電

 水力発電は二酸化炭素を出さない発電であり、GX(グリーントランスフォーメーション)時代に相応しい発電方法だ。また、エネルギー変換効率で見ると、風力発電や太陽光発電のエネルギー効率が10%から40%、火力発電や原子力発電が30%程度であるのに対し、水力発電は80%程度と非常に高く、比較的発電量が安定している。実質無料の水を資源とするため、ダム建設費など当初の投資を除けば、発電コストが安価であるのもメリットだ。100年を超える水力発電ダムもあるほどだ。

どうして水力発電が増えないのか?

 それでは、どうして水力発電が増えないのか?日本のダムは全国で約2千8百か所ある。そのうち水力発電用に使われているダムはわずか396か所しかない。それは、「特定多目的ダム法」により目的とは異なるダムの転用が困難になっていることや、既存のダムを改修して水力発電を行おうとすると、当初にかかったダム建設費用を負担すべき「バックアロケーション」などの課題があるためだ。

治水目的のダム

 治水目的のダムは、基本、異常降雨時に対応して、通常、水位を低く管理することが望まれるが、水力発電のためには、一定の高さを確保するため、通常の貯水量を高めに確保することが求められる。ただし、最近は、より正確な気象予測が可能となったため、異常時の治水に備えた対応も事前に可能となってきた。福島県は、大規模水力発電施設「田子倉発電所」を中心に、2040年までに県全体の電力需要を再生エネルギー発電でまかなうことを目指している。

日本に適した水力発電を推進

 いままさに、AI時代を迎え、電力需要の爆発的なニーズに応えるためにも、規制緩和とAIの活用で、より一層日本に適した水力発電を推進すべき時期に来ているのではないか。

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