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戦時下のデパートも戦争協力が次第に柱にー表面だけでも追随しないと営業も厳しかっただろう

 戦時下の生活の一端を知るため、中産階級から上流階級向けとはいえ、デパートの通販カタログを収集しています。昭和初期から日中戦争初期ごろのものはわりあい入手できましたが、太平洋戦争下となると、1つも入手できていません。まあ、1939(昭和14)年ごろが生産のピークで、同年9月18日には国家総動員法に基づく価格統制令も出る、1942(昭和17)年には衣料切符制も導入されると、商売の環境は困難を増すばかりでしたし。
 今回は収蔵品の中で、最も太平洋戦争に近い、1941(昭和16)年9月の第丸の通販カタログから紹介させていただきます。

表紙からして軍国調に

 まず表紙をめくって驚いた。「更生部のご利用」がトップです。

商品がなければ商品を持ち込ませればいい?

 それでも天下の大丸、質は落ちても着物と帯はそれなりに揃えています。当方、着物の知識が少ないので分かりませんが、見る人がみれば、大丸の苦しい台所事情も分かるかもしれません。

レーヨンとの混紡が主ですが、それなりに。

 そして代用品が登場。また、「禁製の特免品」の皮手袋は、革製品は軍需用として民需では使えなくなっていましたが、それ以前の在庫ならば販売は可能だったため「売り」にしたもの。倉庫の底から見つかったのでしょうか。

人気のなかったスフは入らぬが「人造」の毛糸と代用金属の電気ごて
禁製の特免品と明記しなければ、いろいろ言われたでしょう。

 そして、時局に合わせた防空用品の数々。女性の防空帽子とモンペ、手動発電機入りの懐中電灯ほたる、各種消火剤。各地で防空演習は行われていましたが、本格的な空襲の洗礼を受けるのは、あと3年半ほど先のことでした。

防空帽子は防空頭巾が主流でした。ほたる電灯は発電をやめると消えるのが難点。
空襲より、普段の備えとしての役割は充分果たせた消火機材

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 物は減っても、お客を引き付けるには、さまざまな工夫が必要で、戦時下では、戦争推進の旗を振る側に回って息を継ぎます。太平洋戦争開戦後、1942(昭和17)年3月と5月の「松坂屋御案内」で、雰囲気を見てみましょう。

それぞれ3つ折りの催し案内。表紙絵はもろに戦争です。

 まず3月の案内から。「米英撃砕!大東亜解放展」が大政翼賛会などの主催で開かれています。そして「衣料切符制実施と戦時生活指導展」は、店としてもスムーズに販売する啓もうのためには大事だったでしょう。さらに「皇軍慰問品」を地階で販売と、時局に合わせた宣伝も欠かせません。
 また、男性が兵隊にとられ抜けた穴を塞ぐ女性の増加を背景とした「働く女性服の会」も目を引きます。

自存自衛の戦争が解放戦争にすり替わり
衣料切符制度の導入は2月から。通常の美術展もあるのがちょっと救い。
慰問品のほか、春の入学用品は季節側大事。働く女性も増えたか。

 5月の案内は「戦う工場と教育展覧会」で、愛知県と愛知県産業報国会の主催です。戦時下では、こうした組織と結びつく側にいないと、便宜を図ってもらえなかったでしょう。
 初夏の商品案内に続き、防空用品と1行案内を入れるのを忘れません。また、海軍記念日に合わせた「大東亜戦争海軍展」、そして戦費をまかなう戦時債券写真展、戦意高揚の愛国詩歌展覧会、海軍記念日協賛の習字図画工作展と、戦時ネタの行事が続きます。普通の美術展も続けられているのが、こうして書いていても、やっぱり救われる思いです。

ひたすら増産を求められる時代です。
防空用品を扱っているぞ、と示すのは保身のため大切だったでしょう。
戦争に絞れば展示の題材に事欠かない戦時下

 そして、いずれの案内も戦費をまかなう国債や戦時債券の販売をきちんとPRしていました。

戦費確保へも協力

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 ここまで戦時下、協力してきましたが、1942(昭和17)年末、全国の百貨店が売り場面積の一割を供出することになり、1943(昭和18)年1月から実施することになったと、大阪三越から顧客に通知が新しい売り場の案内とともに届きました。売るものが減ってきたのに目を付けた、戦時下に生まれたさまざまな団体が一等地に事務所を構えたかったのでしょう。案内では供出された場所がどうなったかは不明ですが、既に大阪市軍事援護相談所があったようです。空白部分が痛々しい店内配置一覧表が、戦局悪化を伝えたかもしれません。

配給(有料)も担っていた様子が分かるあいさつ文
空白が供出部分。近いに切符制商品配給所があります。
軍事援護相談の下の階に、代用品、防空用品と並んでいるのが時代を示します。

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