針を置いたらあの海へ 第7話
フェアアイルを仕上げて旅に出ようと決意してからは、取り憑かれたように編んだ。秋口に編み始めたのに、もう五月。俺はずいぶんと編むことから逃げていた。その時間を取り戻すために時に徹夜して編む。
「レオ、編む段数どんどん増えてるけど大丈夫なの?」
「いいんだ、とにかくこれを編み上げて、次に行きたいんだ」
たっちゃんさんは、毎回寝不足顔の俺を案じ、そして不思議そうな顔をしていた。
俺は、それぞれの腹の中の苦しみや後悔を納めに行かなきゃいけない、そして次の段階に行かなきゃいけない