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DMM英会話あるある6 先生のミスをうまく見逃してあげることに気を使う(後)

前編はこちら


単純に「ちょっと変な指導をされて、納得がいかない」だけであれば、納得するフリをして納得しなければいいだけではある(別にその場で疑問をぶつけてもいいけれど)。
そして授業が終わった後に、自分で正解を調べればよい。

しかし一筋縄ではいかないのが、「先生が間違えて読んだ文章を、私が直後にリピートしなければいけない時」である。
そこでは確実に、「生徒として先生のミスをどのように扱うべきか」という葛藤が発生する。

例えば、たしかこれは「survey(調査、調査する)」の説明文だったと思う。
surveyという単語は、「to find out the opinions, behavior, or experience of a group of people by asking them questions」という意味である。と書かれた部分があり、先生がまずそれを読んだ。その後すぐ私もリピートしなければいけない。
ところが、先生が最初に出て来る「opinions(オピニオンズ)」を、間違えて「options(オプションズ)」と読んでしまった。
そして本人はその間違いに気付いていない。

私は、「あれっ? 今、先生 option(オプション)って言ったよね? どう見ても opinion(オピニオン)なのに」と気付くわけだが、そこに気付いた時、では次に自分はどうやって読めばいいかというのが、非常に悩ましい課題となるのだ。
opinions は、最初の5単語めで出て来る単語である。
もしリピートする私がテキスト通り「opinions(オピニオンズ)」と読んでしまったら、先生はそこで「んっ? opinions? 今、彼はopinions(オピニオンズ)って読んだよね。間違えたのかな? テキストはどうなってるんだっけ………あっオピニオンズだっ!! オピニオンズが正しいんだ!!! 俺さっきオプションズって読んじまった!! 俺が間違えてた(涙)!!! 先生なのに間違えたぁっ(号泣)!!!」と、生徒の前で大恥をかいた気持ちになるであろう。

私としては……、「目上の人は常に敬わなければいけない」という儒教思想を叩き込まれている昭和世代のアダルト生徒としては、私にレッスンをしてくれている先生をそのような気持ちにさせるわけにはいかないのである。
かと言って、では「私も一緒に間違えた方のoption(オプション)で読むべきか?」と考えると、opinion を option にしたら、surveyの意味を説明する文として成立しなくなってしまうではないか。

ということで、先生が読み終わってからの2秒間で頭をフル回転させて悩んだ私は、結局………、最初のセンテンスだけ、ものすごいスピードで読んだ。
一応自分としてはテキスト通りopinionで読んでいるつもりなのだけど、聞いている方はopinionなのかoptionなのかごちゃごちゃしてどっちなのかよく聞き取れないくらい、ぐちゃぐちゃっ!と読んだ。水曜日のダウンタウンでオードリー春日が「おつかれさまでした」を「大きなタマネギの下」と発音してうやむやに挨拶しても相手に気付かれなかった企画のように、そう言っているんだと思い込んでいる人にとってはそう聞こえてもおかしくないような曖昧さを込めて、例文を読んだ。
ひとたびopinionsを通り過ぎたら、その後の behavior, or experience of ~ あたりからは、発音に気をつけて丁寧に読んだ。
これならば、私はあくまで opinions として読んでいるつもりなのだから間違って読んでいることにはならないし、それでいて先生に間違いを突きつけて傷つけることも避けられるのである。

これが、生徒としての思いやりである。
生徒から先生に対する、思いやりの贈り物である。これこそが昭和の儒教精神である。おじさんの懐の深さである。
生徒がこんな気を使っていることには気付かず、きっと先生は「今回も良いレッスンをしてあげられたな」と、満足して授業を終えるのだろう。
まあいいのですよそれで。そう思ってもらうために私は気を使ったのですから……。

他には、「How can I contact the Applicant Service Center?」という文章を、先生が「How do I contact the Applicant Service Center?」と間違えて読んでしまったこともあった。
この時は、私は、先生の間違いに付き合って「How do I」の方で読んだ。
テキストでは can になっているけど、あえて do にしてリピートした。
How can と How do は違いがはっきりし過ぎてごちゃごちゃ曖昧作戦で読むのが無理だったし、別に can を do にしたところで文法上の間違いにはならなそうだったから。
私が先生と同じ単語をリピートすれば、先生は「あれ?」っとテキストを確認することはないはずなのだ。先生と違う発声をしてしまったら先生は「ん? なんか自分が読んだのと違うな?」と思って確認作業に入る確率が高くなるのであって、先生の発声をそのままリピートするならば先生は聞き流すだけでテキストとの照らし合わせなんてしないのである。


しかし、次の例は困った。
「He read the book without using a dictionary.」という文章。
これもまず先生が読み、私がリピートすることになっていたのだが、この例文の最初の「He read」の部分を、先生は、「ヒーリード」と発音した。

これ、間違ってるよね?
He read はヒーリードではなく、ヒーレッドだよね?
read は現在形は「リード」と読むが、過去形は同じ綴りでも読み方が「レッド」である。
そして、これが現在形の文なのだったら He reads と三単現の s がつくはずなのに、ついていない。s がついていないということはこの read は過去形で、だとしたらレッドと読まなければいけないはずである。
しかし先生はリードと現在形で読んでしまった。

これを、どうリピートすればいいか。
2単語めにいきなり登場する単語なので、これも私の技術ではごちゃごちゃ曖昧作戦は使えない。
これをリードと読むのは、英語として間違いである。英語をちゃんと勉強しているつもりである私は、間違えたくない。
この例文は、He の後に read を持って来ているということからして、生徒を引っかける気まんまんな問題である気がする。英会話のテキストとしてこの文を出しているということは、「Heの後なのに動詞原型のreadが来てるっていうことはどういうことか、よく考えようねみんな~~どう発音するかちゃんと考えてね~~」という、初心者を引っかける意図で作られた文章ではないか。
そして、先生がまんまと引っかかっている。
私は、どちらの発音でリピートするべきなのか……。

ここなのだ。
ここで私は、「先生にミスを突きつけるか、先生と一緒にミスをして心中するか」の2択の十字架を背負わされることになるのだ。
もし私が「ヒーレッド」と読んでしまったら、きっと先生は「んっ? レッド? 今、彼はレッドって発音したよね。俺はリードと読んだはずなのに。テキストはどうなってるんだっけ………あっ、過去形だっ!!! 主語がHeなのに三単現のsがない!!! てことはこのreadは過去形で、レッドが正しい発音じゃないか!!! 俺、リードって読んじまった!!! 先生なのにこんな初歩的なミスをっ!!! しかも生徒はちゃんと気付いて正しく読んでいる!!! 俺のミスリードに惑わされずに!!! 恥ずかしいっ!! 先生として恥ずかし過ぎるっ(涙)!! もうDMM英会話の講師を続けて行く自信がなくなったああもうやめるっっ(号泣)!!!」と、恥をかくどころか退職まで決意するということになるのではないか。
先生がミスしてリードと読むことで生徒を間違いに誘導しようという文字通りのミスリード……。

そして……、
悩んだ末、私が選んだのは、先生と心中する方であった。
私はミスリードに従い、「ヒーリード」と読んだ。
間違っていることを知りながら。心の中で、悔しさに煮える涙を流しながら。
しかし私がリードと読むことで、先生の退職を防げるのならば私は間違えよう。私が耐えることでレッスンの雰囲気が保たれ先生のメンタルを守れるのならば、私は犠牲になろう。
英語の勉強の本筋とまったく関係ないところでなんでこんな生徒が気を使わなければいけないんだ……。


最後にもう1個。
「瞬間英作文・スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング」という教材がある。
細かく説明すると長くなるが、簡単に言うと「日本語の文章を、生徒が英訳するレッスン」である。
生徒の私が日本語の問題文を英語に訳し、先生はテキストに記載されている回答を見て、正解かどうか判定するのだ。
その教材で、「ミケはもうすぐ23歳になります」という日本語の文が出て来た。

↑問題文を画像キャプチャしました

この日本文を、私は「Mike will soon be twenty-three years old.」と英訳した。

これはおそらく正解なのである。
「will soon be」なんていう soon の入れ方は自力では絶対出て来ないが、この教材は事前に一定時間だけ正解の英訳を見る時間が与えられるため、その隙に記憶することでこういうシャレた表現もその直後にのみできるようになるのだ。

ともかく、私は「Mike will soon be twenty-three years old.」という正解を叩き出した。

ほら正解!

ところが!
それを聞いて先生は、素直に「正解!」とは言わず、「ああ惜しい、一箇所だけ訂正があるよ」という。
どこですかと聞いてみると、「キミは今『Mike』を『ミケ』と言ったけど、これは『マイク』と発音するんだよ」とのこと。

なるほど……。
言われてみれば納得である。
たしかに、Mikeは英語としてちゃんと読むと、マイクであろう。

………………。
いや、たしかにそうなんですけどね、
でもね、

日本語の問題文におもいっきり「ミケはもうすぐ23歳になります」と書いてあるんですよ。

日本語のカタカナで「ミケ」って書いてあるから、それをそのまま読んだんです。ミケという名前をそのままミケと発音しただけなんです。
それを「本当はマイクだよ」などと言われましても。


間違えたのは私ではなく、この教材を作った人である。
この教材を作った人が、本当は「マイク」としなければいけないところを、「ミケ」と書いてしまったのである。
教材を作った人のミスを、なぜ私が代理で怒られなければいけないのか。納得がいかない。
でも、そこで「いやいや、問題にはカタカナで『ミケ』って書いてあるんですよ!! それをそのまま読んだだけなんです!!!」と真っ赤になって主張したところで、それがなんになるのであろう。
先生に当たり散らしたところで、レッスンの時間が無駄に消費されるだけである。
それに残念ながら、私は「問題にはカタカナで『ミケ』って書いてあるんです! それをそのまま発音したんです!」と主張できるだけの英語力を、持ち合わせていない……。
It is written as Mike(ミケ) in Japanese. So I just pronounced Mike(ミケ) as it says. とかかな? 自信はない。


こういう場面では、こっちは英語の勉強に集中したいのになんでこんな余計なことで悩まなきゃいけないんじゃ~~!!と、変なストレスにも襲われる。
しかし、私は英語で外国の人と喋れるようになるために英語を勉強しているわけで、「英語で人と話す」という作業には単に英語を使うということだけでなく、相手に気を使ったり誤解を解消したり押したり引いたり、語学以外の無数の課題が含まれるはずである。
語学が使えるだけでは人間間の問題など解消されず、ただスタート地点に立てるだけである。語学はただのツールであり、人間関係はその先にあるのだ。
実際のコミュニケーションとはそういうものなので、そういうややこしい課題もシミュレーションさせてくれるオンライン英会話の場は、やはり非常に有用なものなのであるなあ。

That's it.


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