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【6-7月】中日ドラゴンズファームレビュー野手編

皆さん、こんにちは。今年も「中日ドラゴンズファームレビュー」という形で、毎月定期的に中日二軍成績をウォッチしていきたいと思います。イレブンスポーツ (@ElevenSportsJP)さんのサービス開始から格段に二軍戦も身近になりましたが、データの面ではまだまだ充実しているとは言い難い状況だと思いますので、このファームレビューが少しでも若手野手の活躍や中堅・ベテラン選手の調整状況を把握する一助になればと思います。

昨年は激重PDF形式でまとめていましたが中々見辛かったように思うので、今年は普通にnoteすることにしました。ボリュームが多いので野手編、投手編に分けています。

それでは野手編、いってみましょう!

1. 6-7月二軍野手ハイライト

●一軍昇降格まとめ

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今月最大のハイライトと言えば、やはり高卒ルーキー二人、石川昂弥岡林勇希が早くも一軍昇格を果たしたことでしょう。詳しい成績は後ほど触れますが、高卒ルーキーらしからぬ好成績を残していたとは言え、この時期に一軍に呼ばれる異例の事態にはファンの間でも賛否両論が巻き起こりました。

いちファンとしては内部でどういう事情があったか把握することはできません。主力野手の離脱、若手・中堅野手が揃って不振だったチーム事情を踏まえても、一定期間の「お試し昇格」が中長期的な育成計画と矛盾するものではなかったか、また一軍と二軍でどういう起用法を取るか合意が取れていたかどうかは気になるところです。ただ仁村二軍監督のコメントや当人たちの高い意識を考えると、今回の一軍昇格を良い経験として昇華してくれるはずと信じています。

石川昂、岡林以外だと主力野手に怪我人が多発する中、渡辺勝石垣雅海に中々結果がついてこず、二軍再調整となったのは残念でした。二軍レベルでは常に好成績を残すところまで来ている二人なので、今後も好調を維持し次のチャンスを窺っていって欲しいと思います。

2. 起用法レビュー

●球団別 二軍打席配分: ウエスタンリーグ (7/31時点)

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次に年齢構成と比較した、ウエスタンリーグ各チームの二軍打席配分を見ていきます。何故二軍における年齢別の打席配分を確認しなければならないか?については、下記の記事で私見をまとめていますのでお時間あればどうぞ。

上記表を見ると、中日は他球団と比べて25歳以下の若手野手への打席配分が6割程度とまだまだ多くはないものの、野手年齢構成と比較するとかなり優先的に起用できていることが分かります。高卒ルーキー石川昂、岡林はもちろん、昨季から引き続き根尾昂石橋康太滝野要らには多くのスタメン機会を与えることができています。

●ポジション別出場機会配分

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ポジション別の出場機会配分を見ても、若手野手を優先起用していることがよく分かります。ベテラン・藤井淳志大野奨太はスタメンでフル出場することはほとんどなく、2-3打席での交代や途中出場、さらにDHでの出場も多くなっています。二軍を若手育成の場へと大きく舵を切る方針は2018年の根尾獲得から始まったと思いますが、今年もその傾向はかなり強くなっています。

3. 野手ピックアップレビュー

ここからは6-7月に二軍戦に出場した選手の中からピックアップして、詳しく二軍成績を見ていきます。今回は以下12人の選手をレビューします。

▼捕手:
石橋康太 郡司裕也
▼内野手:
根尾昂 石垣雅海 高松渡 石川昂弥 石岡諒太
▼外野手:
伊藤康祐 シエラ 滝野要 藤井淳志 岡林勇希

石橋康太

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打率.300、OPS.841と開幕からかなりの好成績をマーク。三振が多く四球が取れない点やプルヒッターな点は相変わらずでも、フライを上げ強い打球を打つことで着実に長打を増やしている印象。今季は外角のボールを逆らわずセンターから右方向へヒットを飛ばすシーンもよく見られ、得意の内角を強く引っ張り込む以外にもヒットを打てる対応力が徐々に身についている点が好成績の理由として挙げられるか。

守備面では二軍の「正捕手」として、開幕からチーム出場機会の約半分を与えられている。盗塁阻止率.417、捕逸ゼロは立派だが、石橋がマスクを被った際に投手の暴投が5つもあるのは気に掛かる。映像を見る限り投手がどうしようもないボールを投げたというよりも、手元でワンバウンドしたボールを不用意に横に逸らした隙を相手走者に突かれて進塁を許すケースが多いので、この点は修正の余地があるかもしれない。

また今季は郡司裕也がマスクを被る際はサードとしても起用された。キャッチャーながらポリバレント性を高めることは今後より重要になると思われるので、一時的なものでなく今後も引き続き取り組んでもらいたい。

郡司裕也

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郡司は開幕一軍入りを果たしプロ初打席もヒットで飾るものの、中々出場機会に恵まれず7/3に二軍再調整。7/17以降は石橋と交互にスタメンマスクの機会を分け合っている。

少ない打席数ながら結果が出ているとは言い難いが、最大の武器である「選球眼」は遺憾無く発揮できており、打席数に対する四球割合 (BB%)はリーグ平均を大きく超えてチームトップの14.8%をマークしている。

守備面では盗塁阻止率.556と、こちらも石橋同様に好成績をマーク。今後は石橋同様にマスクを被らない試合で外野やファーストなど、他ポジションにも挑戦する可能性があるかどうかには注目していきたい。

根尾昂

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ファーム開幕から全試合でスタメン出場中。打撃は一時16打席ノーヒットと落ち込む時期もあったが、徐々に盛り返し7/29のオリックス戦では3安打、2ホーマーと大暴れ。明日8/4の今季一軍初登録が確実視されている。

打撃成績に目を向けると、三振は多く、四球が少ないのは課題と言えるものの、現時点では軒並みリーグ平均レベルを上回る数字を残すことができている。主に3番打者として起用されており、広角に打球を飛ばしているのが特徴。ただ引っ張り打球は変化球、レフト方向への打球はストレートを打ったものが多いため、この傾向が一軍レベルでどう出てくるかは気になるところ。また打ち取られる打球はゴロが多いが、ヒット打球はライナー&外野への飛球が多い。

守備面では、セカンドをメインポジションとしながらも、チーム最多5ポジションを守るポリバレント性を見せる。仁村二軍監督によると「守備と打撃の頭の切り替えを自然にさせるため」開幕からしばらくはセカンドに専念していたが、石川昂の一軍昇格に伴いサードへ、さらに打撃の調子が上向いた7月終盤からは外野も守りだすようになった。
▽中日・根尾改革第2弾は「内野重視」 攻守の切り替えが外野より自然にできると判断

自身二度目の一軍昇格は「お試し」ではなく、直近5試合20打席で打率.500、2ホーマーと結果で「勝ち取った」もの。プロ初安打はもちろん、低迷する打線の起爆剤としての大活躍を期待したい。

石垣雅海

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開幕から打撃好調をキープし、7/8には一軍昇格。打っては代打で2試合連続ヒット、守っては松葉貴大の初勝利をアシストするファインプレーと存分にアピールした。

ただ代打での2安打以降はヒットが出ず、石川昂の優先起用の影響もあってか限られた出場機会の中で結果を出し続けることができなかった。

二軍成績に目を向けると、どの指標もリーグ平均を上回る成績を残すなど完全に二軍レベルは脱したように見える。守備面でも内外野どのポジションでも高い守備力を発揮しており、もはや二軍でやることは殆どない。今後は引き続き好調を維持し、一軍選手との入れ替えが発生する際には真っ先に名前が呼ばれるようにしてもらいたい。

高松渡

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直前までその高い走力とコンタクト能力で開幕一軍入りが有力視されたが、最終的には二軍落ち。一軍で守備に就けたのはセカンドのみで、「代走屋」としてベンチに置くには役割が限定的すぎることが理由だったと見られる。

二軍合流後は中々試合に出場せずファンをやきもきさせたが、ユーティリティ性向上のため課題である外野守備練習に集中的に取り組んでいた模様。一軍戦力となるためには必要な方向性のように思う。
▽中日・高松、外野も守って1軍だ! 出場機会増へ「両方守れるように」

二軍打撃成績を見ると、相変わらず高いコンタクトセンスで広角にヒットを飛ばし、リーグ平均以下の三振割合と打率.297はさすが。ただ未だ四球ゼロ、さらにゴロ打球が多く長打が出ていない点は幾ら俊足が売りのスピードスターとは言え改善の余地がある。

守備面では根尾と交互にセカンドを守ることが多いが、根尾が一軍昇格後も外野での出場機会は一定以上確保することで、シーズン後半には「代走の切り札」として一軍ベンチに送り込めるような準備をし続けて欲しい。

石川昂弥

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二軍公式戦24打席目で早くもプロ1号を広いナゴヤ球場のライトスタンドに叩き込むなど、高卒ルーキーとは思えない打撃成績を残していた石川昂。三振の多さは課題だが四球獲得能力はリーグ平均レベル、さらに純粋な長打力を表すISOではリーグ平均を大きく上回る好成績を見せていた。フライ打球が多いのも特徴で、非力なゴロヒッターが多いチームにおいて、純粋なパワーヒッターとしてのポテンシャルを遺憾無く発揮した。

高橋周の離脱もあり7/12に早くも一軍昇格を果たすと、プロ初打席で初ヒットをマーク。賛否両論、不安と期待が入り混じる中自らのバットで全てのモヤモヤを払拭して見せた。

その後は21打席ノーヒットと苦しみ一時打率は.050まで落ち込んだが、そこから急激に一軍レベルに適応して最終的には打率.222まで成績を戻した。十分に戦力として機能し始めた矢先、高橋周の復帰に伴い7/31に二軍降格が決定してしまったが、仁村二軍監督のもとでまた「4番打者」としての英才教育が施されるだろう。

石岡諒太

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個人的に6-7月最大のサプライズが、今季から育成契約に切り替わった石岡諒太の大活躍。全ての打撃指標がリーグ平均を上回る好成績で、怪我がちだったこれまでとは打って変わって、手薄なファーストをメインに守りながら二軍に欠かせない選手となっている。

石岡といえばソフトバンク・柳田悠岐を彷彿とさせるフルスイングから生み出される長打力が魅力だが、ここ数年はフルスイングというよりオーバースイング気味で、確実性に乏しくお世辞にも長打力を発揮できていると言えない状況だった。

ただ今年は打席でのアプローチが格段に良化し、打てるボールを的確に見極めていい塩梅のフルスイングで広角に強い打球を打てている。フィールドアウト割合を見ると内野フライのアウト=打ち損じが多いのは気になるが、健康にプレーし続け好成績を維持できるようだと、支配下復帰も遠くないだろう。

伊藤康祐

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伊藤康祐は開幕からセンター、ライトでの優先起用が続くものの、思うような結果が残せなかった。打撃指標を見るといずれの数字もリーグ平均を下回っており、昨季まで少なかった三振割合までも大きくリーグ平均を超えているのは懸念材料。主力野手が怪我で相次いで離脱し、控え外野手のチャンスが増える中で台頭の機会を掴めなかったのは残念だった。

ただ今季の伊藤康は開幕前から、今年再ブレイクした高校の先輩、広島・堂林翔太との自主トレの中で、広島・鈴木誠也を参考にスイング軌道を修正する試みを行っていた。長打力アップを志向する上で昨年と比較してもフライ打球が増えているのは、分かりやすい結果が出ていなくとも中長期的に見たら「想定内」なのかもしれない。伊藤康の打撃スタイルの進化は、今後も注目していきたい。
▽伊藤康、新打法は広島・誠也と巨人・坂本がお手本?スイングの軌道まねてみた

シエラ

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二軍調整が続く新外国人・シエラは、二軍レベルでも適応に苦しんでいる。四球獲得能力は高いため出塁率は優秀な成績は残せているものの、チームがシエラに求める「長打の創出」という面ではここまで役割を果たせていない。スラッガータイプの打者ではないためホームランをバンバン打つことを求めているわけではないが、せめて二塁打を量産するなど今後の復調を期待したい。

守備面ではレフト、DHとしての出場がメインだったが、高橋周の離脱後からサードも守るように。殆ど経験のないポジションだったそうだが、立場上守れるオプションを増やすことは悪いことではない。個人的には怪我がちな平田に代わるライトのオプションをつけて欲しいと思うが、まずは打つ方でアピールすることが先決か。

滝野要

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伊藤康、シエラと同様に多くの打席を与えられながら打撃不振に苦しんだのが滝野要だ。リーグ平均を大きく下回る三振割合から昨年と同じく高いコンタクトセンスを垣間見ることができる一方で、打率.170を始めそれ以外の指標ではリーグワーストレベルに沈んでいる。

ただこれも伊藤康と同様に、長打力アップを目指す過程で生じる「必要経費」であると考えると悪くない。仁村二軍監督は滝野に対し「もったいない。イメージで柳田(ソフトバンク)みたいに振れ」と話すなど、結果に拘らず思い切り振ることを要求している。トータルの打撃成績を見ると見栄えは悪いが、7/21のソフトバンク戦で放った自身公式戦初となるスリーランホームランは見事だった。この日以降フライ打球が増え、打率も.292 (24-7)と復調傾向なのを考えると、この一発で何か良い感覚を掴んだのかもしれない。

守備面では、ファーストでのスタメン出場した試合途中から外野へ移る起用が続いている。センターも守るが彼の守備能力的には両翼を守る「打撃型」が将来像のように思うので、内外野問わずコーナーポジションでの選択肢を増やすことは出場機会を増やす意味で良い方向性だろう。

藤井淳志

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昨季に続き、開幕から二軍暮らしが続く大ベテラン。前述の通り若手育成を最優先するチーム方針のもとで、フル出場する機会は少なくスタメン出場しても2-3打席で交代する日が多い。スタメン出場時もDHがメインで、守備機会も若手外野手と比べると限定的だ。

ただそれでも全ての打撃指標がリーグ平均を上回るなど、一定以上の成績を残し最低限の調子は維持している。岡林昇格の際、個人的には昇格候補は藤井ではないか?と思ったが、首脳陣的には藤井の力を借りるのはまだ先だったようだ。調整が難しい状況ではあるが、直接一軍戦力にならなくともベテランとして若手野手に与えられる影響力は大きいはず。二軍にいる間は若い選手も模範となるような「将来の指導者」としての行動を、コンディションの維持と同じくらい個人的には期待している。

岡林勇希

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主に上位打線で起用された岡林は、3割を超える高打率と高い四球獲得能力で4割を超える高出塁率をマークした。打席数に対する三振割合もリーグ平均をわずかに下回っており、ゴロ打球が多く長打がゼロな点は課題とは言え、石川昂と同様に高卒ルーキーとしては桁違いな成績を残していたと言える。

守備ではセンターを守ることが多かった。外野全体ではトータルで87回1/3を守りエラーはゼロだった一方で、打球の追い方には課題が残る。打球を見続けたまま飛球を追うため、持ち前の俊足を持ってしても外野の間に飛んだ大きな飛球に追いつけないことが多かった。

外野守備に課題を抱えていたとは言え、開幕から不振に陥った渡辺勝の代役となる若手・中堅外野手が軒並み打撃不振だったこともあり、7/19には打撃の好調さを買われ一軍昇格。ベンチ要員として途中出場がメインだったが、7/30にプロ初安打、さらに8/2には初スタメンの両方を記録した。

本日8/3に一軍登録を抹消されてしまったが、一軍で間近に見た名手・大島洋平の外野守備や英智外野守備走塁コーチの指導、さらに一軍レベルの投手たちとの対戦は岡林の今後のキャリアにとっては貴重な経験だったはず。二軍では改めて課題である長打力アップと外野守備の向上に、腰を据えて取り組んで欲しい。

4. 8月二軍野手注目ポイント

最後に、今月の二軍野手起用の注目点について見ていきます。

①アルモンテの復帰はいつになるか?
7/3の登録抹消以来、未だ二軍戦での実戦復帰がかなわないアルモンテアリエル・マルティネスが好調とは言え、彼の復帰が得点力不足の打線に更なる厚みをもたらすことは間違いない。アルモンテの調整状況は引き続き注目していきたい。

②若手野手の「総ポリバレント化」に期待
前述の通り石橋はサード、根尾、石垣、高松、滝野らは内外野を守るなど、若手野手が複数ポジションを守る「ポリバレント化」が進んでいる。一つのポジションで固定して使い続けないこの起用法は「たらい回し」ではないかという批判もあるかもしれないが、むしろMLBのトレンドにも沿った、限られた野手登録枠を有効に活用するための起用法であると言える。今月は伊藤康のセカンドや、郡司のファースト&外野起用も見られるかに注目したい。

③一軍を経験した石川昂、岡林のパフォーマンスはどう進化するか?
石川昂は3週間、岡林は2週間の一軍体験を二軍でのプレーにどのように活用するかは注目。石川昂はボールを見ようとし過ぎて猫背になりがちな点がチェックポイントの一つとして認識できたそうだが、岡林は攻守に様々な課題が見つかったに違いない。怪我人が続々と復帰し始めた今、高卒ルーキーの二人には改めて二軍で研鑽を積んで欲しい。
▽2軍落ち…中日・石川昂弥が1軍で“猫背”になってしまった理由 「ボールを見よう見ようとすることで…」


以上、ロバートさんでした。投手編も今週中にはまとめてnoteしたいと思います。ありがとうございました!

データ参考:
NPB
日刊スポーツ ファーム情報
プロ野球データFreak
nf3 - Baseball Data House -

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