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朝ドラのような爽快感!韓国ドラマ『二十五、二十一』感想&紹介


韓国ドラマ『二十五、二十一』について

Netflixで昨年から配信されている韓国ドラマ『二十五、二十一』がすごく面白かった。最近ドラマを一気見したことはありませんでしたがドはまりして10話以降から1日で見てしまいました。
韓国ではテレビドラマとして放送されており、当時はテレビドラマ話題性ランキングで4週連続1位になった作品でNetflixで配信された際も話題になりました。

主人公ナ・ヒドが同じ高校生ながら韓国のフェンシングスターとして活躍するコ・ユリムに憧れ、彼女のライバルとして認めてもらうために同じ高校に入学して、彼女自身もフェンシングスターになるまでを描いた本作品では、スポーツ物としてのスポ根要素もありながら、青春・恋愛、さらには舞台が1990年後半で1998年に起きた韓国のIMF通貨危機、2001年ニューヨークで起きた911テロ事件など社会情勢を反映させた韓国ドラマらしい奥行きある作品になっています。
主人公ナ・ヒドやライバルコン・ユリムを含めた5人のメインキャラクターの群像劇にもなっており、それぞれの成長に目が離せません。

日本でいう朝ドラのような、主人公を長い期間で成長を描いているドラマであり『あまちゃん』と作品の傾向的にはよく似ています。

ティーンエイジャーを描いたドラマでありながら大人も共感してしまう

このドラマの魅力は5人のメインキャラクターが10代、もしくは20代前半で青春・恋愛・将来を面白おかしく描きながらも赤裸々に、時に切なく描いた作品であり、傾向的にはメインキャラと同じようなティーンエイジャーの視聴者をターゲットにしていますが、描かれている時代が1990年代後半ということもあり今30~40代として生きている人にも刺さる内容となっています。

ドラマは韓国がIMF通貨危機という、韓国の金融界が危機に陥りそれから銀行の営業停止・それによる資金繰りの困難化から会社の倒産が相次ぎ社会に大きな影響を与えた実際に起きた出来事(つまり途端に不景気に突入した)から始まり、いきなりメインキャラクターに危機が訪れます。

1話で主人公のナ・ヒドの所属する高校のフェンシング部がIMF通貨危機が起きた事でフェンシング部が廃部になった際、顧問から「お前の夢を奪ったのは俺ではない、時代だ」という発言が時代を物語っています。

少しでも諦めてしまえば夢や希望が腐ってしまいそうな時代ですが、時代のせいにして諦めるのではなく、どうすれば憧れに辿りつけるか、自分の大切な物を守っていけるかを考え5人は時代に立ち向かっていきます。
なので、物語としてはとっても明るく元気をもらえる作品です。

5人の物語

ドラマは全16話で大きく分けると3つのパートに別れており、主人公であるナ・ヒドが既に成長して娘がおり、その娘が母親の日記を読むことで5人の話が語られます。

ざっくりナ・ヒド目線でパート分けすると……
1~5話 ナ・ヒドがテヤン高校に転校してコン・ユリムと共にフェンシング韓国代表になるまでの話。
6~13話 アジア大会の決勝戦で韓国代表同士で戦うことになったナ・ヒドとコン・ユリムの対立から和解をして親友へと結ばれる高校卒業までの話。
14~16話 高校を卒業してそれぞれの道を歩み、ナ・ヒドとコン・ユリムはオリンピックの舞台で再び決勝でぶつかり合い、そして現代へと繋がる話。

メインキャラクター5人の名場面を紹介する前に軽くメインキャラとその関係性を紹介します。

主人公のナ・ヒドはソンジュン高校でフェンシング部に在籍していましたが不景気になり部は廃部、それでもフェンシングを続けるべく、コン・ユリムのいるフェンシング強豪校でもあるテヤン高校に転校してそこで3人のかけがえのない仲間に出会います。
それがコン・ユリム、ムン・ジウン、チ・スンワンの3人で、4人はクラスメイトです。

コン・ユリムは前述した通り高校フェンシング界だけでなく韓国フェンシング界を席巻するスターで、コン・ユリムにとってはナ・ヒドは大勢いる格下の眼中にない存在だと思ってしました……。

ムン・ジウンはクラスで1番のイケメンでお調子者、コン・ユリムのことが大好きで、ナ・ヒドとは陽気さでは波長の合う仲、チ・スンワンに対しては不良の自分をらしさとして認め、フォローもしてくれる頼りになる存在です。

チ・スンワンはクラスをまとめる学級委員で成績優秀、品行方正、誰よりも優しく真面目で、学級委員の鏡のような生徒です。
真面目とは正反対なムン・ジウンを自分に持ってない物を持っている人と陰ながらに恋心を抱いています。
面白い事が大好きで、学校内に隠し部屋を持っていたり、放送部をしていることやネットで海賊DJとしてパーソナリティをしています。

そして最後の1人は高校生ではなく4人からすれば4つも年上のペク・イジンという青年がメインキャラクターです。
彼は父親が事業をしていたためお坊ちゃまでしたが、IMF通貨危機の影響で会社は倒産、大学を中退せざる負えなくなり職を探していました。
時代がすべてを奪ったと落胆していましたが、転校してでもフェンシングを続けるナ・ヒドに出会い、その前向きさに影響を受けてテレビ局スポーツ部記者として働きます。
フェンシング担当記者になった彼はナ・ヒドとコン・ユリムを取材して彼女らの魅力を社会に伝えます。
また、テヤン高校のOBということもあり4人の保護者としての立場でいつの間にか5人で行動しています。
コン・ユリムとは昔からの知り合いで、テヤン高校にいた時は放送部だったこともありチ・スンワンにめちゃくちゃ尊敬されています。

キャラクターの魅力と名シーン集

ここからはネタばれありです。

最高の主人公ナ・ヒド

ナ・ヒドは『ハイキュー』でいう日向翔陽のような、主人公に相応しいエネルギッシュなキャラクターです。
コン・ユリムに認めてもらうため奮闘したり、ペク・イジンを好きになったり、恋愛や友情、将来に対して笑って悩んで挫折して成長していく姿を赤裸々に見せてくれます。
選手としては幼い時からフェンシングの才能があったものの、なかなか開花せずテヤン高校に転校するまでコン・ユリムと肩を並べられませんでした。

コン・ユリムを演じたのはキム・テリという女優なんですが、ものすんごく演技が上手だなという印象です。
まっすぐなキャラクターなんですがそれ故、喜怒哀楽を激しく変化させることが求められている難しいキャラ、キム・テリはすべて100点でこなしており、個人的にはフェンシングで大事なところでポイントを取って雄叫びをあげる姿は本物のスポーツ選手を観ているような感動を与えてくれます。

ナ・ヒドの名場面は本当に多くて絞るのが難しいのですが、やはり犬猿の仲だったコン・ユリムとの和解シーンだと思います。
ナ・ヒドはコン・ユリムに憧れていますが、彼女からは「私が知らない選手ならその程度ってことね」と眼中にない発言を浴びせられます。
ただ、ナ・ヒドはコン・ユリムに憧れすぎて戦闘データを全部把握しており試合では互角の戦いをするため思いがけない天敵でもあるせいで対立が芽生え、アジア大会決勝戦でナ・ヒドが優勝した時にそれが決定的になります。

誤審も疑われるくらいシビアな試合で、コン・ユリムは負けたことを認めず、世間はコン・ユリム贔屓な流れになり、ナ・ヒドは優勝したにもかかわらず誤審が生んだニセの勝者だとバッシングを浴びせられます。

その誤審疑惑炎上事件はペク・イジンの力でなんとか沈静化してナ・ヒドの持ち合わせている根っからの明るさもあり少しずつ立ち直っていくのですがコン・ユリムとの仲は埋まりません。
しかし、そんな犬猿の仲の2人が大親友になるどんでん返しがあります。

実はナ・ヒドとコン・ユリムは匿名のネット掲示板同士の知り合いで、掲示板では誰にも言えない悩みをお互い打ち明け合う程の仲という伏線を序盤で展開しています。
現実世界では仲が悪い2人が実はネット世界では仲が超良かった、なのであとはそれがお互い気づけばいいだけだったのです、それが判明して仲良くなるタイミングも見事です。

物語ってある程度「この問題がいずれ解決する時は感動するんだろうな」と察する時があると思うのですが、韓国ドラマはそのタイミングと演出がとても上手だなと思います、自分の期待するエモーションと物語が用意してくれるエモーションが完璧に合致するような感覚になり普段の感動以上のものをくれます。

孤高の美少女コン・ユリム

まず言わせてください、コン・ユリムを演じたボナは宇宙少女という韓国アイドルのメンバーなんですが引くほど可愛い、絶対的美少女といった感じ。

彼女は中学生くらいの時からスターとして活躍しており、韓国フェンシング界の絶対的エースです。

プライドが高く負けず嫌いでナ・ヒドに攻略されてもなかなか実力を認めず、アジア大会決勝で誤審が生まれるような僅差の敗北をした際、自分の方が突きが早かったと猛抗議します。
それは、彼女が家族を一番に考えており、貧乏な家庭なこともあり自分がフェンシングで活躍して家族を養っていくんだと、あくまでフェンシングを過程としてとらえています。
物語終盤では彼女の父親が事故を起こしたことによりその示談金を稼ぐため韓国代表からロシア代表に帰化をして、その契約金で工面をしようとしたくらい1番に家族のことを考えています。

コン・ユリムの名場面はナ・ヒドのそれでもあるのですが、オリンピックでロシア代表として戦うコン・ユリムと韓国代表として戦うナ・ヒドの決勝戦です。
ロシアに帰化したため韓国国民からは売国奴とあまりにひどいバッシングをされるのですが、その時には既に仲良くなっていた2人は、お互い口にしなくても決勝の舞台で周りの声関係なしにお互いの実力を最大限に発揮するベストな試合をしようと心で通じており実際に最高の試合を見せつけます。
その試合が終わった途端2人はカメラの前で抱き合うのです。
このシーンの深い所はナ・ヒドも1度誤審を疑われて世間から叩かれた経験があることから彼女だけがコン・ユリムの辛さを一番に理解しており、その瞬間国境を越えた最高のライバルであり、理解者であり、親友になったのです。このシーンは大泣きしてしまいました。

キザだけどいい男ムン・ジウン

ムン・ジウンはナ・ヒド達が所属するクラスで『7組のイケメン』という肩書を持ち、自身もそれを認めているナルシストな奴で、コン・ユリムのことが大好きです
当時まだ流行っていなかった韓国POPのジャンルに目をつけて広めるインフルエンサーであり、高校を卒業すると自らでファッション交流サイトを立ち上げ、利用者がモデルの服を購入できる『WEAR』のようなビジネスを始める先見性もあります。

彼のセリフはくせになり、キザなセリフに恥じない男気溢れる行動力があります。その理由は行動をしてからキザなことを言うので納得性があるからでしょう。
例えば、コン・ユリムが久々に授業に出席した際、教科書を忘れて教師に廊下に立たされます。それを見たムン・ジウンは迷うことなく廊下に出て一緒に立ちます。教師からは「何をしているんだ?」と尋ねると「授業よりも大切な事が廊下にある」と言うのです。
めちゃくちゃかっこよくないですか……?

ムン・ジウンの名場面ではそのかっこよさゲージが最高潮に達します。
それはコン・ユリムがロシアに帰化すると知れ渡った際、友達であるナ・ヒドも「他の道はなかったの?」と彼女に考え直すように言うのですがムン・ジウンだけは「かっこいい決断だ」と賛同します。
それで終わりではありません。
2人はその時には付き合っていてロシアに住むことが決まったコン・ユリムはムン・ジウンに別れを告げます。しかし、その回のラストシーンでは車の運転が苦手なものの、ムン・ジウンは全速力で空港まで運転して「俺はいつまでも待つし会いに行く、他の女なんか好きにならない」と出発ロビーで誓い抱きしめるのです。
「ラブ・アクチュアリー」の転校する少女を見送る少年くらいの愛が溢れた空港名シーンです。

個人的に一番応援したくなったチ・スンワン

チ・スンワンはクラスの学級委員長で、ナ・ヒドなどの練習で授業になかなか出られない生徒や不良というレッテルを張られているムン・ジウンにも気遣いを見せます。成績優秀で学年トップの座にもいるため教師たちも一目置かれている生徒です。

スタンスは真面目ですが校内に秘密の部屋を持っていたり、ネットで海賊DJと自称して生ラジオをして自分の思いを打ち明けたり、リスナーの悩みを聞くユーモラスな面もありその2面性が大好きです。

チ・スンワンの名場面はムン・ジウンが教師に体罰を受けているところを目撃して勇気を出して警察に通報する場面です。
しかし、通報しても警察からは「生徒が教師を通報するなんてありえない」と体罰を容認している大人たちの価値観によって変えられない現実を目の当たりにします。

チ・スンワンはこの後通報された教師に逆恨みをされ海賊DJをしていることを知られ、学校の品位を陥れたと退学勧告をされます。
退学したくなかったら生徒の前で自分のしたことを謝罪しろと教師に要求されますが、彼女は自分の正義を守るために自ら退学します。
正しいのはチ・スンワンのはずなのに、彼女が不利益を被る不条理な世の中に私も怒りを覚えましたが、自分の正義を突き通してクールに学校を去るシーンは本当にかっこいいなと痺れました。
この後紹介するペク・イジンがテレビ局に勤めていることから、彼が学校の腐敗をメディアが糾弾してチ・スンワンの行動が世間的にも認められる件を作っても面白かったのかなと思います。

メインキャラ唯一の大人ペク・イジン

ペク・イジンは親の会社の倒産によって輝かしいキャリアが待っていただろう人生が打ちのめされます。
しかし、ナ・ヒドと出会い、転校してまでフェンシングを続ける生き方に感銘を受けて失ったものを考えるのではなく、これから自分が何を得られるかと考えテレビ局のスポーツ記者の仕事を手に入れます。

フェンシング部担当としてナ・ヒドやコン・ユリムをサポートしながら物語が進むにつれてテヤン高校4人の輪に自然と入り、一緒に旅行をするうちにナ・ヒドに恋をしてしまいますが、客観性が必要とされる記者の使命との間で揺れ動きます。

ペク・イジンの一番の名場面は個人的には最終回のとあるセリフです。
それは彼は物語の終盤でスポーツ部の記者からニュースキャスターへと輝かしい出世を遂げるのですが、初回放送の所信表明で「正確な情報を伝えながら寄り添って痛みを伝えられる番組を作っていきます」と言うのです。

これは彼がナ・ヒドが誤審問題で叩かれているところや、コン・ユリムがロシアに帰化して韓国国民から売国奴と叩かれているところを身近な立場で見ていたからこその考えだと思います。
また、彼は9.11テロが起きた時にニューヨークに緊急派遣され、混乱する現場の状況や、悲しみに打ちのめされている被害者やその関係者の言葉に出来ない思いをなんとか記者として伝えようとしました。
ペク・イジンは会社の上司に問題に入れ込み過ぎるなと言われていましたが、それが彼の長所でもあり、悩みながらも上司の言葉をすべて受け入れるのではなくニュースで伝えられている情報、世間が感じること、報道の的になっている当人の思いなどすべてを汲み取って自分の番組で伝えようという覚悟になったのです。

まとめ

最終回では日記が終わり、40代になったナ・ヒドが「すべてが試行錯誤の日々、永遠だと言い張った瞬間、私はその錯覚が好きだった」とドラマで語られている19歳から21歳の日々を振り返るのです。
出会いや別れ、楽しいことや辛いこと、すべてが凝縮された青春の甘酸っぱさを表現した素晴らしいセリフだと思います。
私はそんな青春らしいことはしてなかったですが、自分の過去のあるはずのない青春を懐かしく思いました。
なので、青春を謳歌した人、そうじゃない人すべての人が楽しめる作品だと思います!





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