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ゼロ・ウェイストアクションホテルから何を学ぶことが出来るか(前編)

いつも、記事をご覧いただき、ありがとうございます。一般社団法人REIONE(以下、「REIONE」と表記)の河西です。
今日は、徳島県の上勝町にあるゼロ・ウェイストアクションホテルに滞在した際に感じた事を記事にまとめております。こちらのホテル、実はちょっと特殊なホテルで、多くの示唆を頂きましたので、二回に分けて記事に記載したいと思います。

このホテルの何が特殊なのか

上空から空撮写真で見える形は一風変わった形をしており、「?」の形をしています。しかし、今回は、この形について取り上げたいということではありません。このホテルは、町のゴミ捨て場の敷地内にあるということ。さらに、この町はごみの分別について実に45種類に分けるルールになっているのです。「ゼロ・ウェイストアクション=ゴミをゼロにする」を目指す象徴的な施設なのです。

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焼却炉を2年で廃炉にした過去

宿泊初日に、施設の方からお話を伺う機会を頂きました。それによると、1998年にこの上勝町では、町の投資として焼却炉を購入した経緯があるとのことでした。それまで、ゴミの処理は各家庭における”野焼き”が一般的でしたが、それを止めて町で共用の焼却炉を購入したそうです。

その際の焼却炉は、私と同じアラフォー世代の方は、ご記憶にあるかもしれませんが、昔小学校の敷地で見かけたような小さなサイズのものだったそうです。私の小学校にも、ゴミ袋一つが入るくらいの投入口のものがありました。業務用として使うには、かなり小さいサイズのものと言えると思います。そして、その小さい焼却炉の利用効率を高める為に、22種類の分別を始められたとのことでした。(この時点でかなり細かく分別をしていることは驚きです!)

しかし、その2年後「ダイオキシン類特別処置法」が制定され、町の焼却炉は使用しないことを決めたそうです。人口集中地区であれば、高性能なゴミ処理施設の建設を行い、「処理」のプロセスを高度化する事も考えられたかもしれません。しかし当時で約2100人、現在では約1300人の人口の上勝町では、「処理」ではなく、「ゴミそのものを減らす」という選択を迫られ、その結果、2003年にゼロ・ウェイスト宣言を可決されたそうです。

ここからは、「ゴミの分別を通して見える町のあり方(前編)」「宿泊施設としての体験(後編)」の2つの側面から、現地で感じた事をお伝えしていきます。

双方向性を取り入れたゴミの分別

まず、施設の半分はゴミの集積所としての機能でした。これまで私の知る限りにおいて、ゴミの集積所のイメージはやはり特有の臭いがあるというものでした。しかし、現地に来てみて、それを全く感じないのです。

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各家庭では、町の補助をうけて生ごみをたい肥に変える機械を有しています。そのため、生ごみ以外のものがゼロ・ウェイストセンターに集まる仕組みになっています。次に、食品包装のビニールなどは、原則、家庭で洗い、乾いたものを自ら持ち込むという仕組みになっていました。これによって、このセンターでは、従来のイメージにあった臭いの問題がないのです。

次に、45種類の分別を行っている場所を見てみると、持ち込んだものを入れるカゴの上に案内用の掲示物があります。内容はといいますと、そのカゴに入れて良いものが書かれていて、よく見ると「出」「入」の文字があります。その脇には何かの数字が書かれています。資源として収入になるものは「入」、処理に費用がかかる物は「出」、その際に1kgの処理に発生する収支の金額が表記されています。また、下部にはそれらがどこで、どのようなものに変わって活用されていくかが記載されています。例えば、プラスチックのリサイクルマークがあるものと、ないものでは金額が大きく異なります。こうしたものを日々の分別の際に目にする仕組みになっているのです。

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施設の方に、「ズルをする人っじゃ居ないんでしょうか?」と思わず聞いてしまったのですが、実際に日々顔を合わせている間柄で、時々は施設の方が指導をされる事もあるようですが、現在の人口規模においては”顔が見える”という事で「互助の関係」が成り立つという事でした。

使えるものは最大限使う

ここまで分別についてフォーカスをあててきましたが、何も資源としての再循環が全てではありません。食器や衣類、使わなかった文具に棚…そのままもう一度使えるものは「くるくるショップ」というエリアに展示されています。必要なものは、置かれているノートに名前と、隣にある計量器で測った重さを記入すると持ち帰る事が出来ます。飲食店や宿泊施設で使われていたような、プロ仕様の食器類なども混じっていました。

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こちらがそのノートと計量器。

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また、施設の床材のモザイク模様のものも、過去に集まったガラス類などを活用されています。

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また施設の壁の至る所にある、様々なデザインの窓も、空き家となった御家庭から寄付されたものが活用されています。実際に寄付された方も、愛着ある窓がまたこうして活用されたら嬉しいですよね。

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周囲のお店の営業時間

ここまで、施設についてお話をしてきましたが、少し上勝町の立地についても触れたいと思います。徳島県の県庁がある中心地である徳島市は、阿波踊りの季節になればメディアでもよく見る街並みで、県庁、大手企業の支社、学術機関などが立ち並びます。そこから車で走ること20分程で、ロードサイドの街並みが広がり、住宅やスーパーマーケット等の生活圏が広がっています。そして更に40分程、山の風景が続く中、車を走らせた先にあるのが上勝町となります。つまり、一部の商店はあるものの、スーパーマーケットで買い物をしようと思うと40分程車で山を下りなくてはなりません。

ホテルに着いて、いざ夕食の為に出かけようとすると、近隣で開いている食事の場がありません。例えばあるお店は、週に3日しか営業をしていません。あるお店はお昼までしか営業していません。結果として、私は40分、車を走らせスーパーで食料を調達することとなりました。

さて、ここで考えたいことがあります。週3日しか営業していないお店の方は一体、残りの4日は何をされているのでしょうか。ここからは推測になりますが、街の中で1人が2役以上を担っているのではないかという事が考えられます。私のような、大手企業で働いた経験がある人は、朝9時に始業して、17時又は18時頃まで、一つの勤め先で働くという働き方が当たり前だ!という価値観を持っているのではないでしょうか。

しかし、一つの地域の中で顔が見えていて共に支える事に意識が向くと、共創体の一員として、それぞれが得意な事を担う形になっていくのかもしれないということが推察できます。このことは前回、寄稿しましたリンダ・グラットン先生の講演で触れられていた、街とコミュニティの関係が体現されている形に通じるかもしれないと感じました。

何を学ぶことができたか。適切な規模と見合った選択

ここまでの体験で、私が学ばせて頂いたことを整理します。

・コミュニティの規模

昨今、様々なところでコミュニティの大切さが説かれて久しいかと思います。私たちREIONEもコミュニティの一つですし、何もビジネスに限ったコミュニティでなくても良いと思います。また、活動が必ずしも地域だけに限らず、オンライン上でのコミュニティも増えていると思います。

何より規模が大きいだけが正しい訳でもないという事を、上勝町の事例から学ぶことも出来ると思います。規模を追いかけたコミュニティは、その中で起きる理想のマッチングが起きる可能性が高まる事を目的としています。その場合、マッチングが起きた人にのみ便益がもたらされます。

しかし、地域のコミュニティにおいては、「全ての人」が主語であり、包摂された形態であり、コミュニティ全体の便益の為に共に行動するのです。その点で、相互に頼る、頼られる関係が築きやすい規模もあるという考え方もでき得るように思えました。


私なりに、コミュニティ運営において、大切にすべきポイントを整理しました。

1、顔が見えている事
2、それぞれの「個」が、自分の持っているものを、相互に見せあえる事
3、それぞれの良さを組み合わせる。重ね合わせる。任せ合える。

といった要素は少なからずあるはずだと感じます。

・お互いの顔が見える

コミュニティは、目的や規模、集まった方の顔ぶれによってその形は様々です。よく様々なセミナーで「コミュニティはこうあるべきだ」というお話を耳にする事がありますが、今回のように特色あるコミュニティと触れ合う中で、一辺倒の”べき論”に基づいた主張は非常に危険な議論に聞こえます。

例えば焼却炉がない状態で、お互いに顔がみえる範囲において実現できるオペレーションは、別の地区のコミュニティで同じように模倣しても上手く行かないかもしれません。
この「顔が見えている」という状態を維持できる事は、最もコミュニティが活性化した状態を維持できる事に繋がっているのでは?という一つの気づきを得た気がします。「共助」という作用を引き出す事ができる重要な要素なのかもしれません。

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こうした前提にたちますと、コミュニティ作りをする方々にとって「リテラシー」のようなものがあると言えると思います。上図は、私見に基づく概念図ではありますが、規模と運営の秩序に求めるもののバランスをどこに落ち着けていき、運用をしていくか、それはまさに運営者の「リテラシー」と言えるのではないでしょうか。単純な事例を、横にずらして移植するのではなく、より深く事例の背景を捉えて、自分たちがどのように活かせるかを考える事が大切だと感じる事ができた、非常に学びが多い旅になりました。

後半は、実際にゴミの分別を含む宿泊体験から得られた示唆について、記事にしたいと思います。宜しければ、是非そちらの記事もご覧ください。

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