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耳から高橋一生を摂取するということ

みなさん、オーディオブックというものをご存知ですか?
私は知りませんでした。いや、知っていました。しかし、こんなエグいものだとは知りませんでした。

ご存知、Amazonというこの世で1番便利なショッピングサイトでも配信されている。Amazonで私は年間何十冊も本を買っており超お世話になりまくっているが、今回初めて知っておったまげたのがこちらの商品。言わずと知れた村上春樹氏の『騎士団長殺し』。……の、オーディオブックだ。

オーディオブックってあれでしょ? 本を自分で読まなくても誰かが読んでくれるのを耳で聴く、的なやつでしょ? くらいの知識だった。

忙しい現代人は、通勤の合間や、ランニングや家事をしながら、同時に耳から本も聞いちゃおうなんていう発想かい。すごいねー。みんなそんなに忙しいんだねー。

ただね、わたしゃ本は自分で読みたいんだよ。誰かの声で聞いて、余計な風景を思い浮かべたくないんだよ。自分が本の中に入りたいんだよ。なんて思って敬遠していた。

ところが、見てくれ。

朗読:高橋一生

おいおい、待ちたまえ、そうなると話が全然違ってくるぞ。高橋一生が『騎士団長殺し』を読んでくれるの? 私のみみみみ耳元で!? 

ー買います!



以前、キリンの「旅する氷結」という缶チューハイのキャンペーンで「高橋一生の旅するコール」なる、神々の戯れのごときプロモーションがあった。

世界各地をイメージしたフレーバーの商品のプロモーションとして、特設サイトに書かれている番号にかけると、電話口から「その国を訪れている高橋一生さんからの生電話」という設定で彼の声が聞けるというものだった。

「ハワイ」「シチリア」「ヴェネチア」「バルセロナ」など数パターンあり、まるで世界各地を彼と一緒に訪れているかのよう……! もしくは、旅先の彼から、彼女(わたし)へ電話をくれているかのよう……! みたいな気分が味わえるというわけだ。考えるだけでハアハアするでしょ。

しかし肝心の内容はというと(もう2017年のキャンペーンなのでうろ覚えだが)「今日はヴェネチアからです。こちらは……」などという完全にレポート的な口調だったので、おいおいー、どうせならもっと恋人っぽく「今日はベネツィアで、〇〇ってのを飲んだんだ。きみも来れたら良かったのに……会いたいよ」 みたいにしてくれたらよかったのにー! アホかよー企画したヤツ!
 それを1缶に1つのシリアルコードで1回、って売り方だったら、わたし氷結なんて飲みはしないけど100ダースでも買いしめたのにー! ダメだねー。キリンの企画担当は。全然、高橋一生を生かしきれてない! なんて文句を垂れていたのを思い出す。(とかいってそれでも一日10回はかけた)
 
**

しかし、今度はなんたって『騎士団長殺し』だ。高橋一生の本領発揮だ! 
さあ、心して、聴くぞ! 決してやましい気持ちからなんかではなく、あの村上春樹独特の、人間の喪失感や虚無感を彼がどう読むか、それによってこの難解な村上春樹の世界への私の理解がどう深まるか、そこに期待し……

ふぉおおおおおおおお!!おおあおおあおおお!!こ、声がッ!!高橋一生さまの声がぁああああ!!!なんなんだこの頭の奥、胸の奥、腹の奥に響いて轟くこの声はぁぁぁっん!!

決して声を張っているわけではなく、なんならトーンをものすごく落として、そこに置いていくような話し方だ。なのにこの圧倒的な存在感。そして凄まじい色気。なんたる奥行き。深み。一体あの方の声帯はどうなっているんだ? 何ヘクタールくらいの広さなんですか? 深さも相当ありますよね? 黒部峡谷くらいですか? 

こんなもの昼間っから聞いていいんですか? 子どもに聞かせたらだめですよね? あぁ……気絶しそう。この地球上に、こんなにも女性の心を癒す周波数が他にあるだろうか。全人類を魅了する低音ボイスが子宮に響く。耳から妊娠してもおかしくない。

旅する氷結の電話の時と違って、今はイヤホンをノイズキャンセリングで聴いているからか、脳への直接感が半端ない!

あかーーーん!! 声に聞き入っちゃって、大脳が溶けちゃって、内容ぜんっぜん入ってきません! 

しっかり聴いちゃうと内容入ってこないので、3Dうちわを見る時にする目みたいな(若い子わかるのか?)薄目で見る感覚の耳バージョン、薄耳、散らし耳で聴いてなん…とか、入ってくる……か?? 

はぁ、、新潮社さん。オーディオブックに高橋一生を起用するなんて、大変な起用ミスでしたね。残念でしたが、本当に本当にありがとうございました。またよろしくお願いします。

おしまい




ほぼ冗談です。高橋一生さん、それぞれのキャラの演じ分けが本当に素晴らしかったです。とても自然なのにそれぞれのキャラの声にしか思えなかったし、本で読んでいましたが、朗読によってまた新しい捉え方や世界を見せてくれたこと、心から感服いたしました。
まだ体験したことがない方は、ぜひ!

その他、高橋一生さんシリーズもぜひ。


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