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本との距離

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現状、本を「好きでも嫌い」でもないけど、「本を売ること」をしはじめた、地方出身・中産階級以下で育ってきた人間が、どのように本と関わってきたのか。 年齢とともに本との距離感が移ろ… もっと読む
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本との距離⑨(400字)

文字ばかりの本に慣れつつも、漫画から興味を広げることも覚えた頃、転校することになった。ちょうど3年になる手前だったような。 ついに親が別居することになり、4人姉弟みなで母に付いていく(そのだいぶ前から籍は外していたようで、子どものために一緒に住んでいたとか)。 学校が変わること、仲良い友達と会えなくなることに、いうほど不満があったわけではない。けど、環境の変化にうまく対応できなくて、転校後の学校の記憶はほとんどない。そう、登校拒否をしていた時期があった。 なので、ほとん

本との距離⑧(400字)

シリーズもの、推理もの、そして、文字中心の本に少しずつ慣れてきた小学低学年期。そういえば、転校する前の話として記録しておきたい本があった。 『学研まんが ひみつシリーズ』である。特に、トン子・チン平・カン太の3人組が登場する『トン・チン・カンの科学教室』はよく覚えている。「なぜお風呂だと歌が上手く聞こえるのか」などの日常の不思議に応えてくれる嬉しさがあったし、すぐに試してみたくなる実験の紹介も多かった。 恐竜に宇宙(UFO)と首ったけの頃、化学/科学としての「なぜ」を紐解

本との距離⑦(1226字)

「給食早食いできるとすごい!」みたいな、低学年特有のなんでも競争としてはしゃいでしまう性質のせいで、小学校の図書室でちょっとしたバトルが勃発していた。 貸出カードをめぐる争いだ。 図書室の本の最後のページには、必ず小さな封筒が付いてて、カードが挟み込まれている。そこに過去に借りた人の名前がずらりと記されていた。知ってる名前もあれば、全く知らない名前もあったが、今思い出すと、facebookのように校内の人の情報をかじる媒体としてカードは存在していたんだなあ。 まずは、本

本との距離⑥(400字)

あの頃のぼくにとって、「図鑑」は、チョコボールの「おもちゃのカンヅメ」くらい期待に胸を膨らませてくれるものだった(しかし、金銀のエンゼルをすべて集め切ったことはない…...)。 時期は同じくして、小学低学年。ぼくは横浜は都筑区の小学校に通っていた。今と違って、まだまだこれから開発していくぞ、というエリア。母の意向か、家の近くに畑も借りていて、たまにその作業を手伝っていた記憶がある。 その頃は、まだまだ外で遊ぶのが楽しく、家に帰ったら、駄菓子屋に立ち寄り、公園に集まることの

本との距離⑤(400字)

小学生になる前、ビデオきっかけでゲゲゲに出くわし、妖怪を覚えた。その影響は、しばらく続く。 『妖怪大図鑑』にはじまり、地続きのページが展開していく『絵巻えほん 妖怪の森』にはどハマりし、暇さえあれば眺めていた。熱量と反復の掛け算とはすごいもので、知ってる妖怪の数がどんどん増えていった。 ここで書きながらの気づきがある。「図鑑」との出会いは、まさにここだったのだ。「いろんな種類のもの・ことを、分類しながら、まとめて確認できる本」ってお得だな、と幼いながらに感じていた。 ヒ

本との距離④(800字)

壮絶10代を過ごしてきた母が選んだ本に囲まれて、牛歩以下、かたつむりのようなブックライフがはじまった4~5才。まずは絵本から。 『じごくのそうべえ』以外にも記憶に残っている絵本はいくつかある。『どろぼうがっこう』に『グリーンマントのピーマンマン』は、共働きのなか、母が読み聞かせしてくれたのを覚えている。 泥棒だって勉強するんだなぁとなんとなく思ってたし、(クレヨン)しんちゃんに共感できるほどにピーマン嫌いだったのもあり、食べると嫌いなのに読むと好きになっちゃう絵本のキャラ

本との距離③(1191字)

大学生のとき図書館で雑誌ばかり貪っていた、という話から、さらに過去に遡ってみるとしよう。朧げにも記憶が残る4~5歳くらいから。 その頃は、横浜の鶴見に住んでいた。マンションだったかアパートだったか定かじゃないけど、父母姉兄ぼく弟の6人家族、2~3LDKくらいの広さでギュウっとして暮らしていたような気がする。その記憶の中にかすかに本棚があった。 そして、ぼくは絵本にそれなりに親しんでいたと思う。以前触れた『じごくのそうべえ』と出会ったのもこの頃だった。 父はさほど本を読む

本との距離②(400字)

恥ずかしながら、20代までを年間1万も本に使わない生活していた。と書いた。本離れはしてたけど、雑誌には、活字にはどうにかしがみついていた。 大学生になった18歳からは、暇あれば大学図書館にいた。手にするのは図書館の奥にある難解な本ではなく、図書館の外のエントランスにあった、表紙やレイアウトに惹かれる雑誌だった。 AERAの最後らへんにあった(今でもある)「はたらく夫婦カンケイ」というコラムを毎週楽しみにしていた。彼女なし童貞野郎だったくせに……と今思えば、なんとふざけた娯

本との距離(1097字)

「最近の人は本を読まない」 若者の読書離れを突かれるなか、あまり本を読まずにきた(30歳手前で少しずつ読むようになってきた)ぼくですら、「本を読んでる人のほうが珍しいんだなぁ(たしかにネットや動画で情報を拾えるけども…..)」と感じることが多くなった。 つまり、読書離れと指摘される中に自分も含まれるのだろうけど、その中でもさらに「ああ、全然読まないんだ」と下の世代に対して感じてしまうことがあるわけだ。 ちなみに、大学生の頃は、講義で使う以外の本に年間1万円も使わなかった