[0円小説] ぼく、恋愛小説家になります。あるいは、白紙へと戻り鎮まれ恋しんぼ
またもや指令が来た。指令と言ってもただ一言、恋愛小説家というだけ。
恋愛小説家になれ、ということか。
ジロウはそう考えて、ソフトスーツケースの上に載せた電子石板に向かって青歯鍵盤を叩き始めた。
* * *
恋愛は一生の一大事である。
……と言った作家がいてもよさそうなものだが、ぱっと電脳網で検索した限りでは、それらしいものは見当たらなかった。
青空文庫にある坂口安吾の「恋愛論」が出てきて、ちょっと読んでみたくも思ったが、そういう寄り道はとりあえずやめておい