藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しなが…

藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しながら生きています。 遠い昔、詩を書いていました。 書けなくなって何十年かの時が過ぎ、 私は年老いました。 今でしか書けない思いを言葉に乗せて 作品にしたいと思います。

マガジン

  • エッセイ

    なにげない日常の思いを書いてみました。

  • 2024年詩

  • 2023年詩

  • いけばな作品、合唱のための作詞

    生花作品、合唱のための作詞

  • 詩 作品  2022年11月から

    1995年に地方新聞社主催のコンクールで優秀賞を受賞して以来、2023年10月まで、長い間詩を書くことができないでいました。 また、とぼとぼと昔の道を歩き出した頃の作品たちです。

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そして今

中学生の頃でした。 ラジオから聞こえた 「降り積む闇の中で風をくらい」という詩のフレーズ。 辛いことの多かったあの頃、 その一言が、なぜか私に寄り添ってくれるようでした。 学生時代。毎日毎日言葉を紡いでは作品にし、詩誌に投稿していました。 たまにご褒美のように賞をいただくことが嬉しく励みでした。 あれから数十年が過ぎ、 私は詩作からは遠ざかったまま、 すっかり年をとりました。 人生の折り返し点を過ぎて今、 昔思い描いた夢がなんだったかと自分に問う日々です。 私なりに頑張

    • 一言だけの優しさ

      NHK朝ドラ「虎に翼」を見ています。 今朝のドラマでは寅子が法律事務所に辞表を出しました。家に戻りお母さん(石田ゆり子さん)に報告しました。報告を聞いてお母さんは、 少し間を置き「あっ、そう。着替えていらっしゃい。」と一言だけ。 「あっ、同じようなこと昔あった。」と咄嗟に思い出しました。 大学を受験した時のことです。 私は東京の大学を選びましたので、栃木から受験会場に行くのは難しく都内のどこかに泊まらないといけませんでした。 私が悩んでいると、当時栃木の主任司祭だったエル

      • 44「詩」真夜中の出来事

        今日から明日に変わる隙間に ひっそりと膝を抱えて俯いている少女がいる 今日やり残したことを指を折りながら 数えている ひとつ ふたつ みっつめを数えた時に 柱時計が零時の時を刻み始める 最後の音の響きが小さくなって消える前に 少女は姿を消してしまう 「また同じ隙間で待っています」 少女の声を聞いたような気がした そうして明日が今日になった 毎日はうんざりするくらい 同じことの繰り返しだ 繰り返す時間の中で 気づかないくらい小さなところから 年老いていく 残された隙間が

        • 43「詩?愚痴」傘が買えない

          傘を買えないでいます 買おうと決めてお店に行って 売り場で何度も傘を眺めては やっぱり買わずに帰ってきます 安い傘でいいのです 雨さえしのげれば その何倍かするパソコンは 子どもにポイと買ってあげたのに 買ってしまえば 後ろめたい気持ちになるのが 分かっているのです 自分で働いたお金で買うというのに 自分のために使うことが 後めたいのです くじで自分だけが大当たりした時 ハズレをひいた人のがっかりする顔を見るような 自分だけいい思いをするようで 後ろめたくなるのです

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          95本
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          18本
        • 詩 作品  2022年11月から
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        記事

          繋がっていくもの

          人との繋がりの不思議に鳥肌がたつことがあります。カトリックには「神さまのお計らい」とか「神さまの御旨」という言葉がありますが、もしかしたら、神さまの考えたストーリーがひとりひとりにあって、最初から決まっていたストーリーで繋がっていくのだ、と思えるようなことがあります。 毎朝NHKFM放送で古楽の楽しみという番組を聴いています。この番組は昔「バロック音楽の楽しみ」という番組でパーソナリティを皆川達夫先生がなさっていました。 中学生の頃からこの番組を聞き始めました。バロック音楽

          繋がっていくもの

          42「詩」雨の季節の少し前

          吹いてくる風の境目を見たのは 目の見えない少女です 風の音を訳したのは 耳の聞こえない少年です 生まれたばかりの真っさらな風を 知っていたのは みすぼらしい老人でした 季節がなくなったと人々が言います 春の後で冬 いきなり夏 草花だけが刻まれたリズムの中で 蕾をつけ花を咲かせ 散っていきます 誰にも分かってもらえない ひとりで長い間抱えてきた気持ちなのに 見ず知らずの会ったこともない人が 一瞬で読み取ることもあるのです 遠い昔から刻まれた誰かのリズムが 風に伝わり

          42「詩」雨の季節の少し前

          生花の違い

          たまたま縁あって10年ほど前から草月流の生花を学んでいます。 Facebookでは草月流の世界中の作品がアップされています。よく観察してみると、ヨーロッパの人たちの作品と日本人の作品の違いがあるように感じます。どちらも美しく、優劣つけられるものではありません。優劣を超えて特徴的な違いに気づくのです。 生花は引き算の美学、フラワーアレンジメントは足し算の美学だと私の先生に伺いました。長く生活に溶け込んだ美学はDNAに乗り受け継がれていくのではないでしょうか。 ヨーロッパの方

          生花の違い

          お元気で

          Mさんご夫妻がお嬢さんの住む神戸にお引越しなさるとのこと。 寂しくなります。 Mさんご夫妻は教会のミサにほぼ毎週いらしてました。私はあまり教会に行かないのですが、行けば必ずお会いすることができました。 小学校2年から聖歌隊に混じって歌っていた息子をことのほか可愛がってくださいました。社会人になり息子はほとんど教会に行かなくなりました。それでも、ミサでお会いするとMさんは、 「坊やちゃんはお元気? あのボーイソプラノの素晴らしい声が忘れられないよ。」と必ず仰いました。 Mさ

          お元気で

          稲垣純也さんの写真

          稲垣純也さんの写真 稲垣純也さんの写真が好きです。 noteに書いた私の拙い作品にもたくさん使わせていただいています。 書いた作品のnoteの見出しに使う写真が見つからない時、稲垣純也と検索するとたいていぴったりの写真に出会えます。 逆に、 稲垣さんの写真から作品が生まれることもあります。 一枚一枚、じっと見ていると、物語が生まれてくる。ごくありふれた日常のなかの切り取りが、日常でない世界に繋がってくれるのです。

          稲垣純也さんの写真

          いけばな「花だけを生ける」

          花だけを生ける 花材を見て、色がバラバラなのでどうしたらよいか悩みました。同系色の花材だけ使う、反対色の花材だけ使う?あえて全ての花材を使うことにしました。 おおまかに左側に黄色🟡系、右側に🩷系でまとめ、グラデーションになるようにしてみました。 最初織部焼の花器を使っていたのですが、先生から花器が重すぎるとご指摘がありました。 先輩たちは40年以上草月を学んでいます。(私は過去に小原流を少し学びましたが草月はまだ10年足らず。) アトリエにあるたくさんの花器からどれを使

          いけばな「花だけを生ける」

          41「詩」星採集

          明け方蝋燭に火を灯して 何が採れたのか確認してみましょう 網にほつれがないか 入念に調べることも忘れずに 一睡もせずに 星を採集していたのです 昨日星になった生後1か月にもならない 小さな猫の星もあったはずです 生まれたばかりの小さな猫でした お母さん猫に 置き去りにされてしまった小さな猫は 身体の中の息をぜんぶ使って 出来るだけ大きな声で鳴きました 牛飼いのおじさんに見つけてもらい お腹いっぱいミルクをもらいました 会ったこともないたくさんの人たちがSNSで 毎日毎日

          41「詩」星採集

          叔母のウェディングドレス

          1965年ウェディングドレスの着用率が3パーセントだったそうです。 私の父方の叔母の話です。 私の父は長男です。母が父の元に嫁いだ頃まだ中学生だった叔母は嫁ぐまで同じ家に住んでいました。 叔母が高校生になり、毎朝セーラー服を着る光景を私は覚えています。叔母は私より16歳上ですから、おそらく、私が1、2歳くらいの記憶だと思います。 マンドリンクラブに入っていて、裸電球の下でマンドリンを弾いていたのも覚えています。 私の祖父は電電公社(後のNTT)の社員でした。お給料もそう多く

          叔母のウェディングドレス

          二十歳の頃の作品

          二十歳の頃堀辰雄の「風立ちぬ」を読みました。登場人物の節子が絵を描いている美しい風景が頭に残りました。「そうだ油絵を描こう!」 思いつくと絵に詳しい友人と一緒に大学近くの画材屋に行き、最低限の油絵の道具を選んでもらいました。 道具は揃いました。 週末栃木に帰省した折、小さな頃から通っていた教会のミサに行きました。神父様の肖像画を描いて誕生日に贈った青年がいました。絵が好きで学んだものの実家の家業を引き継ぎ、それでもこつこつと絵を描き続けていました。 咄嗟の思いつきで絵を教

          二十歳の頃の作品

          40「詩」朝に

          お友だちから山菜が届きました 蕨やタラの芽 こしあぶら サンショウ 山菜の香には雑木林の木漏れ日が入っていました お友だちから縮緬と柚子味噌が届きました 瀬戸内の波打ち際の 揺れる陽射しが入っていました お友だちから刺身こんにゃくが届きました 土を耕し芋を育てた人の汗が入っていました お友だちから老舗の牛タンが届きました 頑張ってとお友だちの心が入っていました ぜんぶ美味しくいただきました 遠くに住むお友だちの心が 私の身体になりました 遠く離れた木漏れ日や波打ち際

          40「詩」朝に

          上手宰さんの詩集

          上手宰さんの「香る日」を読みました。 定年後書き溜めた作品を65歳の時にお作りになった詩集だそうです。 宝石のような美しい世界が結晶になった作品でした。そうだね、そうだね、と頷きながら上手さんの世界の隣に立っている気がしました。 歳をとるということは悪くないです。 鏡を覗けば皺とシミだらけのお婆さんになった私。よくもこんな顔を人前にさらしているもんだと呆れたりします。 中身はちっとも変わってないのにと着ぐるみを着ているような気持ちになります。 確かにちょっとした作業で若い時

          上手宰さんの詩集

          39「詩」午後の光景

          はらはらと 落ちてくることばを 両手で捕まえようとする午後です 捕まえてしまえばあんなに光っていたのに 粉雪のように溶けてしまうのが わかっているのです 見えない音の響きが 柔らかな午後の光に包まれて ゆるゆると螺旋状に揺れています 粉雪のように四方に光を反射し その中に秘めたことばも ゆらゆらと揺れて いるのです しばらくすると あとからあとから 落ちてしまうことばたち 両手で捕まえたら ありったけの優しさで包んで 溶けないうちに大急ぎで 私をまっているひとに 渡すの

          39「詩」午後の光景