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『万国名勝尽競之内』仏蘭西把里須府

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
万国名勝尽競之内 仏蘭西把里須府

万国ばんこく 名勝めいしやう 尽競づくし之内のうち 仏蘭西ふらんす把里須ぱりすのふ

把里須ぱりす大府たいふ海面かいめん堅城けんじやうきづき、しろやぐらうへ開國かいきおく 祖王そわうぞうおけり。像體ぞうたい こと/\黄金わうごんにして、その ひかえいず。

※ 「把里須ぱりす」は、フランスのパリ。
※ 「大府たいふ」は、大きな街という意。

※ 「把里須の大府は 海面に堅城を築き、城の櫓の上に開國祖王の像を置り」とありますが、パリは内陸都市なので、これは地中海の港町マルセイユの説明と思われます。

また、「像體悉く黄金にして、其光り日に央ず」とあるのは、ノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バジリカ聖堂の塔に立つ聖母像のことではないかと思います。鐘楼の上から海と町を見守る黄金の聖母像は、マルセイユのシンボルとなっています。

城下じやうか市坊まちは、英国えいこく龍働ろんどんより せましと いへども も、家々いへ/\壮観さうくわん 美麗びれいにして、諸州しよしうくわんたり。

※ 「龍働ろんどん」は、イギリスのロンドン。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
万国名勝尽競之内 仏蘭西把里須府

国民こくみん みな智才ちさいたくましく、諸蓺しよげいにぬきんず。都下とかしよ学校がくかうまうけ、これ居集あつまる生徒せいと 万人まんにん他国たこく商人あきうど互市かうえきなすこと、墨英ぼくえいりやう 大府たいふおとらず。

※ 「墨英ぼくえいりやう 大府たいふ」は、メキシコ(墨西哥めきしこ)のアカプルコとイギリス(英吉利いぎりす)のロンドンのことと思われます。

港口みなとには 萬国ばんこくあきなひ ふね むれあつまりて、一歳いつさい一日いちにち 繁昌はんじやうならずといふことなし。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
万国名勝尽競之内 仏蘭西把里須府

中興ちうこうこのくにてい おんなる人、天下てんか 席巻せきくわん形勢いきおひをふるひたりしより、一雙いつさう国威こくゐましいまおいて、外寇ぐわいかううれひなしといへども海辺かいへんには しよ砲臺はうだいおいて、防御ぼうぎよそなへおごそかなり。これ まさ當国たうごく英国えいこくたいする あいだ わづかに 二十二三 便風よきかぜときは、一日にして 往還わうくわんするの ゆへなりとぞ。

萬國ばんこくばなしの作者
 假名垣魯文譯誌

※ 「おん」は、ナポレオン・ボナパルト。
※ 「外寇ぐわいかう」は、国外から敵が攻めてくること。
※ 「便風《よきかぜ》」は、風便ふうびん。風向きが都合よいこと。

< 同シリーズの作品 >
英吉利龍動海口(いぎりす ろんどんのみなと)
大清南京府市坊(だいしん なんきんふのしばう)


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