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広告振り返り:~10月総括編~


・10月の広告のあらすじ

・広告の中でのAI利用が活発化

 著作権問題だの、商用利用の問題だの、オタクたちが様々なAIに関する四方山話をXで交わしている間に、AIを活用した広告、また商品はぐっと増えた。生成AIを使用した広告は10月だけでも12タイトルもありました。これは明確にAIを使っているらしいものだけを個人調べでカウントした物なので、もしも裏で使ってましたみたいなパターンも含めればもっと多い可能性があります。
 伊藤園やライフルホームと言った大手企業も広告にAIを活用し始めており、もう倫理的問題や著作権などの問題を議論するフェイズは終わったのかもしれない。新技術は使ってナンボだし、色々使われる内にルールの整備もついてくるだろうから、今後も腰を据えてAI活用の例を見ていくべきでしょう。

 ちなみに2022年10月に生成AIを活用した樋口円香のイラストが大きな話題になったので、ちょうど生成AI一周年のタイミングでこのAI広告大量発生が起こったと見て良いでしょう。
 画期的な新技術が登場した場合は大体一年以内に何らかのチャレンジをすれば先行者利益のチャンスがぐっと高まる、というのも覚えておくと今後の役に立つかも。オタ恋はちょうど半年後くらいから生成AIを活用した広告を始めて、今あの高いクオリティが出ています。

・Youtube広告の表記が変化し始めている

 youtube広告上での「広告」の表現が変わりつつある。「広告」は「スポンサー提供」から「スポンサー」になり、「広告をスキップ」は「もうしばらくで終わります」あるいは「スキップ」などと表記されるようになった。
 やっぱり「広告」と表現すると皆アレルギーが出てすぐに飛ばしちゃうから、なるべく広告という表現を無くしたかったんでしょう。これは視聴者がナメられてますよ。広告じゃなくて「AD」とか「提供」「案件」とかって書けば、視聴者は広告を素直に見るんだって思われている。
 それは広告の内容を熟慮、検証しないで表現さえ変えればなんでも良いんだって話だから、すぐにやめた方が良いと思います。大体詐欺みたいなサイトに繋がる広告を「スポンサー」と表現するのはサイトのイメージが悪くなるからちゃんと検査しないとなあ、と思わないのか?
 
この表現の変化はかなり気に入っていません。

・ルーキー級の注目タイトル

・時計物語:リセット

 時計物語:リセットは先月に引き続き偽MMOや生成AIの活用などを目玉にしていたが、プレゼント広告のiphone推しが異常に激しかったのは面白いポイントだと言える。
 そりゃ皆ゲームの内容よりもプレゼントの方が気になるでしょ、というのはあるだろうが、だからと言ってiphoneの広告と見まごうほどにiphoneを前面にプッシュするのはもう何の広告だか分からないじゃないの。
 10月はドット勇者も似たようなiphoneの紹介広告をやっていたけども、こんなにiphoneの性能ばっかり書いているのは時計物語だけです。加熱したプレゼントつき広告の末路を感じさせる広告。

・ミドル級の注目タイトル

・PictureThis

 PictureThisは植物の手入れのやり方を紹介するアプリだったが、ここに来て雑草処理の広告に変貌。そして雑草処理のやり方として塩を撒くと言う多くの人に分かりそうな誤答を紹介することで、これまでよりも注目度を高めていた。
 これはもう失敗系広告と言うよりもやっちゃダメな事を良いように紹介しているだけだし、過去の根拠不明な成長を紹介する広告よりも悪質だと思うんだよなあ。そんな広告でもここまで堂々とやるのはもはや尊敬しちゃうよ。雑草の排除に塩を使うのはやめようね。

・マネットカードローン

 マネットカードローンはX広告の機能改修によってリンク先のテキストが出なくなったことに乗じて、分割サムネ風の画像広告をリリース。画面を拡大しようとするとリンク先に飛ばされるのは未だにXをTwitter呼びしてそうな人間に突き刺さる強烈な技だ。
 もちろんよく見れば回避できるだろうけども、複数社借入中でどうしても金を借りたいような人はこの画像をよく見てやめるなんて事は出来ないでしょう。何なら広告を見たいだけの人も勘違いして開きかねないよ。
 でもこの広告の投稿は9月29日で、Xの仕様変更があったのは10月5日頃。これを見るに偶然の産物っぽくはあるが、その偶然からでもクリック誘導テクニックが開発されるのは大したもんである。ちなみにこれ以外にもかなり悪い画像広告がリリースされており、画像広告の研究が進んでいるように思う。

・ライト級の注目タイトル

・伊藤園

 広告界隈どころかAIに驚く人たちも絶賛していたのがこのお~いお茶。AIタレントを起用した広告として話題になったが、AIタレントであるが故に広告中でタレントを若返らせるという人間では出来ない演出をやっているのが見どころ。
 もちろん実在の人物でもCGでやろうと思えばできるだろうけども、芸能人を若返らせたり老いさせたりというのは事務所NGが出てもおかしくないでしょう。単にAIタレントを使おうというだけでなく、ちゃんとAIタレントじゃないと出来ない表現をやっている所が気に入った。
 というか新技術の使用を褒めるのは良いけど、新技術がすごいってだけで注目を集めすぎるのは考え物だと思いますよ。普段は広告を見ない癖にこういう時だけあーだこーだ言ってよぉ。

・生成AI活用投資広告

 正直自分はやばい広告を見るのが好きなので、お~いお茶よりもこっちのAIを悪用した投資広告の方が気に入ってしまいました。
 自動音声の違和感が目立った瑕疵ではあるが、それ以外はニュース風映像に岸田文雄、孫正義のインタビューを切り抜く事によって信憑性を増させたり、そもそも実在の人物が喋っているような映像から繋げたりと、自動音声の改善と表現の研究が進んだら甚大な被害を起こしそうな広告。
 これもAI特有の既存の物を真似るのは早いという特性を活かしているんですよね。少し前からTiktokで見かけるHIKAKINのAIボイスを使った広告よりも凝っていて、さらに悪質な内容になっている。来年にはもう本当のテレビの切り抜きと大差なくなってる可能性まであるよなあ……

・MiniTV

 ショッピング広告は4月頃に爆増したnonnotoo族で終わりだと思っていたが、和製ショッピング広告としてMiniTVが登場した事はちゃんと注目しておくべきだと思いました。商品へのリンクは無く単に紹介するだけだが、だからこそ変なリンクに送られないという安心感はあったのかなと思います。
 もちろん通販サイトへの導線があっても良かったのかもしれないけど、インターネットの広告だからって絶対にリンクを貼らなきゃダメって法律は無い訳ですよ。美容メディアだから、各社の販売リンクに飛ばすような意図はそもそも無いのかもしれないけど。
 広告らしい広告って感じが好きなのかもしれない。現代の広告はすぐリンク先に飛ばすせいでどうにも押し売り感が強くって、イヤな気持ちになってくる時もある。チラシを郵便受けに入れられるか、街中でチラシを渡してくるか程度の差かもしれないけど。

・マスター級の注目タイトル

・Hero Wars

 Hero Warsはいつもの特殊性癖、茶番などはそのままにX広告への進出、日本向けのチュートリアル入り広告など、新しい芸風を開拓しようとしていたのが印象的。9月から日本の配信者に案件を依頼しているのを見るに、ちゃんと本編を遊んでもらいたいという意気ごみもありそう。
 特に日本への訴求に関してはかなり力を入れているようで、存在しないゲームの詳細な紹介までやってくれている。この親切心には寒暖差の激しい秋もホッカホカに温まるね。
 バナー広告も見どころある広告が多数あり、一番旬な季節だったなあと思います。石焼き芋みてえな紹介しちゃったな。

・ザ・アンツ

 引き続きアリを主役とした唯一無二の広告を作るアリ広告職人『ザ・アンツ』だが、2023年10月からは積極的に人間にちょっかいを出し始める新展開を見せ始めた。もちろんいつものアリ主体の広告も多数リリースしており、楽しさは二倍、面白さは二十倍だ。
 そもそもアリを主役にした広告をやっているだけで『立ち上がれ!アリ帝国』とアンツしかいないんだけど、アンツは本当に奔放なアリらしさ、そしてフィクションならではの大暴れぶりを毎月見せてくれる。Tiktokでは実写茶番をメインで、Xではアリを主体とした広告をメインにやっている辺りも多分戦略通りなんですよね。
 小さなアリがうごめいている映像がどうしても苦手、という場合は無理にオススメは出来ないけども、そうじゃないなら改めてアンツの広告を全部見て欲しいんですよね。広告は人間を登場させなければ面白い物が出来ない、みたいな固定観念がぶっ壊れると思います。

・2023年10月のMVP

 2023年10月のMVPは生成AI活用投資広告です。
 これに関してはMVPという表現はやや不適切なんだけども、生成AIをフルに活用した詐欺広告がついに来たか、という驚きとクオリティの高さに震えるばかり。合成音声に違和感があるというアラが無くなったら、いよいよ騙される人が多数出てくるだろうな、また既存メディアの信頼はさらに低下するだろうなという恐ろしさがある問題作。
 現状はYoutube,facebookで存在が確認されているが、今後はTiktokやXにも侵略しに来る可能性は充分にある。倫理観を放棄した技術の進化の方がよほど早い事を考えると、Xで驚かれているような生成AIの技術よりも遥か進んだ技術を詐欺にぶち込んでくる可能性も十二分にある訳です。
 AIタレントの起用や生成画像での広告利用のような良い例なんて皆が褒めるわけだから、このnoteではこっちの悪い広告の方をピックアップしました。出所の知れない広告には気を付けよう!


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