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英国収容施設に学ぶ 常勤医は必要か?

2023年5月30日、読売新聞が、大阪入管の常勤医が酩酊し、ふらつきながら歩いていると以前から指摘されていたと報じました。

この方は、入管の2023年4月作成「改善策の取組状況」によれば、2022年7月に大阪入管に採用された方のようです(同4枚目)。

今国会に提出されている入管法案では、常勤医確保のための方策として、

常勤医師を確保するため、その支障となっている国家公務員法の規定について特例を設け、兼業要件などを緩和します。

https://www.moj.go.jp/isa/laws/bill/05_00007.html#midashi03

との方策をとろうとしています。
ですが、私が仲間達と2012年に訪れた、英国のハモンズワース入管収容センターでは、常勤医はいませんでした。
その理由について、同センターの所長は、次のとおり述べていました。

Henney 氏によれば、1 人の医師を専属に雇うということになると、その医 師の都合(オフや医師自身の病気等)で、施設内医療が滞るリスクもあり得る
し、その医師にとっても負担が大きい。その点、チーム 医療で対処してもらう メリットは大きい(リスクと負担の分散の重要性)。また、医師不足の問題も全 く生じていない。

2013年12月 英国視察報告書36頁
https://www.jlf.or.jp/assets/work/pdf/201312_eikokushisatsu_houkoku.pdf

日本の収容施設内では、根治治療をしてはならないというルールがあるようです。

ある医師と話をしていたら、私たち医師は、患者を治療し、根治することが目的なのに、それができない職場であれば、いくらお金を積まれても行きたくないと言われました。全くごもっともだと思います。そういう環境なので、常勤医はなかなか続かないし、根治しなくてもよい環境に疑問を持たない方ではないと、なかなか続かないという話も聴きます。

常勤医の存在を前提に兼業禁止の緩和をするだけではなく、海外の優れた実例に学ぶ姿勢も必要なのではないでしょうか。

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