OHO KANAKO

写真が好きな人。 https://www.ohokanako.com/

OHO KANAKO

写真が好きな人。 https://www.ohokanako.com/

最近の記事

暗室に行ったはなし。

夜勤明け、長男と約束して暗室に行く。 昼食を食べたら意識が飛んで「あんまり気持ち良さそうに寝てるから起こさなかったよ」「なんで起こしてくれなかったの」と喧嘩になる。 3時間の予約が2時間になった。 一年前のネガをRCにプリントする。 過去の自分の目線が現像液の中から浮かび上がる。毎日毎日、光を追いながら撮りたいと張り付いた朝顔の蔓が、1秒1秒光の強さを濃くしていく。なぜ暗室が必要なんだろう。 この、過去の自分が注視していた瞬間に価値があるのだと思った。浮き出ていく。閉じ込め

    • あなたは何が好きですか?

      鳩の羽根が放射状に地面に散らばっている。ビニールハウスの中のシクラメンはまだ葉も小さい。もうすぐ6月。今年は遅いのか、田んぼも水を張る準備を始めている。光が強すぎてカメラが持てない。 頭の中を仕事中心、恋愛中心、家族中心に動かしていたら、なんだか限界が来た。 「帰りが遅い」「会えるの?会えないの?」「辞めるらしいよ」 自分がどこにいるのか分からなくなる。 ずっと散歩をしていたい。道端のカモミールの香り、草に当たる光、そんな中にだけ自分が見える気がする。小さい頃そういう風に過

      • 叶わない

        彼に会えるとき、彼のためにメイクして、彼のために服を選んで、彼のためにハンドクリームを塗って、そういう自分を作る。 でも口約束は叶わなくて、会えなかったときすごく自分自身が虚しくなる。 彼に会った。服可愛いね、て言ってくれて、髪も肌もきれいだねって言ってくれて、いい匂いだねって、彼のために作った自分にぜんぶ気付いてくれる。そばにいると満たされて、幸せで、心地良くてたまらない。多幸感。 先の見えない幸せ。ずっと好きでいたい、好きでいられたい。 叶わないからこんなに好きなのだろ

        • やっと一区切り

          おととしの10月から今の職場で働いているが、介護・福祉未経験のゼロからのスタート、右も左も全く分からずただ障害のある利用者さんたちの温かい眼差しに導かれて仕事を続けられてきた。 知識も経験も何もなかったから、分からないところをどうにか学ばねばと介護士の初任者研修から学び始めた。それが一年前。 写真のことならスルスル頭に入るけれど、朝から夕方まで机に座って授業を聴いたり、数少ない休みの日に一日中人と議論を交わしたりするのは結構しんどかった。 今日も連勤からの疲れが出て、授業中立

        暗室に行ったはなし。

          幸せだった。

          昨日は実務者研修の医療的ケアの授業で、経管栄養と胃ろうの実習だった。前日夜中まで勉強して、朝も自信なくて動画見ながら学校向かって。でも福岡弁の講師の先生が面白おかしかったからあっという間に試験もパスできた。 「おほさんは、なんでそんなにメール打っとんの」 「職場の同僚の相談乗ってるんです」 「じゃあ生活相談員としてなんぼか取らなあかんね」 授業にはベトナム人の若者も参加していて、たどたどしい発音で、日本人でも難しい医療用語や漢字を読んでいた。 「大事なのは姿勢なんや」先生

          幸せだった。

          祭りのあと

          京都から家に帰ると、キッチンには元夫が作ったハヤシライス、味噌汁、五平餅、フレンチトーストが並んでいた。電子レンジの上にはわたしの好きなブランドのハンドクリームがラッピングして置いてある。朝、冷蔵庫を開けると元夫が買ってきた物が目に入る。胃が痛む。何も食べられず仕事に向かう。 日帰りで長男と京都に行った。 去年、次男三男と大阪・京都に弾丸旅行に行きったとき、清水寺の大舞台から見た夕陽を長男に見せたいと思った。今年はそのリベンジである二人旅。ガイドブックも持たず、写真仲間の展

          祭りのあと

          不真面目になろう。

          夜のうちに這い出たミミズが高く上がった日差しに灼かれていく。伸び切った植物たちは所在なさげにこうべを垂れる。蝶や蜂が花から花へ精を出して働いている。春の中弛み。 今日は夜勤だ。朝の散歩を終えて、昼食と夕食を作り午後には家を出る。日差しが強くなってきたので、散歩の時間を夕方に変えようか。 世間はゴールデンウィーク。近所の神社に飾られた色とりどりの鯉のぼりが壮観だった。 退院してからも喉の炎症が完全に治らない。医者は扁桃腺の除去手術を勧めるが、完全に人手不足に陥っている職場でま

          不真面目になろう。

          揺れる。

          久しぶりに長男のサッカーの試合を観に行った。そのあとはピラティス行ったり買い物に行ったり、長男と1日を過ごした。ストレスになってる過密スケジュールといったん離れて、ゆっくり休日を過ごした。朝は私が疲れてコタツで寝てしまって、ユニフォームの洗濯終わってなくて長男と大げんかしたんだけどね。 喉はずっと治ったり戻ったりを繰り返す。 抗生剤飲むとすっと良くなった気になるけど胃腸をやられてしまうから飲んだり飲まなかったり。まだしばらくの付き合いになりそう。 続くようなら手術をしなけれ

          揺れる。

          自分のための夢、人のための夢。

          朝、散歩していると20代の頃、色んな国を歩いていたときを思い出す。サハラ砂漠でオレンジ色の夕陽が沈むのを、ガンジス河の夜明けに小舟の上から小さなキャンドルとマリーゴールドの花が揺れて流れていくのを。インドネシアの朝市で、バイクの後ろに乗ってコーヒーを買いに行く。チェンライの夜の祭りで皆で笑ってビールを飲んだ。バルト海を見にサンドイッチを持って電車に乗った。ただただ色んな街や村を歩いた。 人々がどんな生活をしてどんな思いを持って、どんな景色を見ているのか知りたかった。ただただ

          自分のための夢、人のための夢。

          生き方を変える

          夕暮れ時、満開の色とりどりのつつじの花が美しい。久しぶりに落ち着く時間を持てている。雑草が伸び切った田畑の中のレンゲが風に揺れている。暑くもなく、寒くもなく、中庸。地面を覆う椿の花、用水路を流れる水の音。すべてがあっても何も自分を圧迫するもののないゼロ地点。 たとえば登山の時、登れば登るほど、酸素は薄くなって息は苦しくなる。波打ち際にいれば海の底に水中の世界を感じる。そんな上も下もない平らな場所。わたしはだからそこに住んでいる。自分が自分をいちばん保てる環境。 きっと誰しも自

          生き方を変える

          ただ手が繋ぎたかった。

          一週間。夜はくたくたになるまで笑って喋って働いて、朝、目が覚めると涙が出てくる。自分が何に泣いているのか分からないけど、何かを失っているという喪失感だけが続く。 駅の改札口を見ていると、たくさんの人が流れ出てくる。待ち合わせの相手を探していても、わたしはこの中の誰とも恋に落ちないなと思う。 17歳の冬。 ほんの少しの間だけ付き合った恋人がわたしは大好きだった。高校の文化祭の日、祖母が亡くなった知らせを聞いて教室の出し物の舞台裏で隠れて泣いていたわたしのとなりに静かに座ってい

          ただ手が繋ぎたかった。

          乗り越えられない。

          元夫と最後に旅行に行ってからひと月以上が経つ。今朝、月々の養育費が振り込まれていた。何時間も話し合いをして、ちゃんと考えてほしいと言った甲斐虚しく彼からの返事はなかった。子どもたちと会うことをしないのであれば、養育費だけ一括で払って、縁を切ってほしい。「分かりました」そう言って頭を下げていた彼は、こちらの要求を飲むことをしないだろう。 心の支えがない。忙しくすることでしか埋められないが、忙しくすることで何の余裕もない。とりあえず、毎日歩く。どうにか食べる。泣くのを我慢する。

          乗り越えられない。

          写真のセレクト

          「写真をどうやって選んでいますか?」 デジカメはシャッターが無限に押せて、まぁ押す手を止めなければ何枚でも撮れます。 そして、ストレージやHDDをしっかり用意すればこれまた無限に保存できます。 失敗した写真を消したり、おっ、コレは良いなという写真を選んだりして枚数を削ったりしてる人もいるんでしょうか。 最近は暗室に入る機会が年に3回くらいになってしまったのでフィルムやってますと威張れないのですが、フィルム作品のときの作品のセレクト方法をご紹介します。 ①コンタクトシート

          写真のセレクト

          味方って何?

          「世界中が敵になったとしても、俺はかなちゃんの味方でいるからね」 18歳、大学生のとき、住んでたアパートの近くのスナックでバイトをしていた。自衛隊の基地があったため金曜の夜はよく自衛隊員が飲みに来ていた。その中には熱心に口説いてくる男もいて、そんなセリフを言っていた。どういう意味だろうと思考を巡らせたからか、相手の名前も思い出せないのに言葉だけハッキリと覚えている。 昨日から入院している。 急性扁桃炎と扁桃腺周囲膿疱で、窒息の恐れがあるため緊急入院。新学期で子どもたちの予

          味方って何?

          写真と私の存在証明。

          見たい過去写真を探していて、スマホのカメラロールをスクロールしていると殆どが子どもたちの写真だらけで。たまに私の寝てる姿を子どもが撮った写真が出てくる。いつも私の周りには子どもたちが纏わりついていて、私は一人でいることなんてなかった。写真をやりに暗室行ってるときくらいだったかな。もう一人にして、と叫びたくなるくらい寝ても覚めても子どもたちがいた。 今は私が仕事から帰ってきても、子どもたちはすぐ寝る時間になってしまう。今日は長男が「寝るときママいるからギューしてもらえる」と髪

          写真と私の存在証明。

          ひとりにしないで。

          3月9日 駅で待ち合わせをした。自分が先に着くの分かってたから、わざと少しホームで時間を潰してから改札前の花屋さんに行った。わたしがいなくて慌てて探していた彼を見つける。 黄色い花がたくさんあった。 魚貝類系のパスタが食べたいとのリクエストに、線路沿いのスペイン料理のお店に案内してくれた。昔、付き合い始めの時に一度だけ来たよね。本日のおすすめランチをふたつ頼んで、ふたりで分けて食べる。添えてあったパンが美味しかった。 外に出るとすかさず彼は手を繋いでくれる。まだまだ日中でも

          ひとりにしないで。