彼の素性

徐々に距離を縮めていった私たちは、テキストメッセージで会話するようになり、毎日のように会社で顔を合わせるようになった。

彼には知り合いがたくさんいて、女性の知り合いも多く、ランチタイムはよく楽しそうに誰かと盛り上がっているところを見かけた。

彼はそのような至って普通の明るく健康的な男性だった。

私の会社の同僚も彼のことを知っていて、彼はすごく素敵だねと言っていた。

私もその頃は独身だったが、私には彼氏がいた。
私が完全に悪いのだけど、事情がありなかなか彼氏と別れられずにいた。
彼にはそれは内緒にしていた。

このことで私は罪悪感を持ち、彼との上下関係が出来上がる大きな原因となる。

私は外国人とお付き合いをするのは初めてで、その頃はまだいつから正式にお付き合いが始まったのかはよくわからなかったし今もわからない。

そのような感じがしたからそうなのか？

結局私は彼氏と別れ、彼と二人で出かけたりするようになった。

彼は私をお姫様のように扱い、全て私の思い通りにしようとしてくれていた。
男性は皆最初はこんなふうに女性を扱うものだから、今だけだと思っていたし、彼は外国人ということもありこういうものなのかな？と思っていた。

私たちは色んなところに出かけた。

彼は色んな国で留学や仕事をしていた経験があり、話題も豊富で話も面白く何よりなんでも知っていたし、５ヶ国語を仕事で使えるレベルで話すようなとても賢い人だった。
私が聞いたことに答えられなかったことはないと思う。

それ故、彼は大変忙しく仕事をいくつも持っていて、会う時間はほとんどなかった。

後で知ったことだけど、彼は留学先の有名大学を飛び級で卒業する程の賢い人だった。
その彼の賢さが私の味方である時は良かった。
でも逆に敵に回すととんでもない恐ろしいことになるとは、その時は思いもしなかった。