小説【博物少女 ヒロメリエ!】#1-11
第1話 SCENE 4-③
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どうして?
どうして“それ”を知っている?
Xの一言に私は体温が急に冷えたような感覚を憶えた。
Xのいう通りだった。
私は今日、会社を辞めてきた。
しかし。
私が会社を辞めたのは、当然社内の一部の人間しか知らないはずなのに。
「勤務先の人事の担当者が情報提供してくれた、ワケでは決してないわ。
詳しくは言えないけれど、これはボクたち独自の情報網から」
Xがまた私の思考を読む。
「同じことですよ、どちらにしろ情報が漏洩してるんですから」
「……そんなにシリアスに考えないで頂戴。
キミが会社を辞めたことなんて別に情報漏洩でもなんでもないわよ。
人事の人がキミに最適な再就職先を探してきてくれたのかもしれないし」
「………」
「いずれにせよ、こちらとしては好都合。
それに、館長よ館長? 最初からトップ。もう同僚に蹴落とされることも
上司から圧力かけられることも、後輩に出し抜かれる事もない。
まさに夢のようなポジションじゃない?」
「……だからといって、私がここで働く理由にはならない」
ボォン…… ボォン……
突然踊り場壁面の時計からけたたましい音の時報が鳴り響いた。
時刻はちょうど0時をさしていた。
ボォン……ボォン……
「……あら大変、残業は11時までのつもりだったのに」
<④に続く>
<前回>
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