見出し画像

春はあけぼの。そしてタケノコ。

昨日、夜7時を過ぎたころ、玄関のチャイムが鳴りました。

こんな時間に人が来るのは珍しい。誰だろうと思って出ると、お隣の奥さんがにこにこ顔で立っていました。

これ、おすそ分けしようと思って。」

と言って、持っていた紙袋をぐいと差し出しました。ずしりと重みのあるその袋の中には、タケノコが入っていました。たくさん。ざっと見積もって、20本くらいはあるかという量です。

「あ、ありがとう!でも、これはさすがに多すぎるわ」

わたしはタケノコが好きです。それに、アジア系スーパーに行かない限り手に入らないタケノコをいただけて、とても嬉しかったのですが、これは明らかに多すぎます。夫が食べないことはわかっているし、子どもたちも恐らく食べない。半分はいただいて、半分はお返ししようとしたら、

「大丈夫、大丈夫。わたしたちの分もいっぱいあるのよ。それに、皮を剥いたら、それほど量はないから」

と押し返されてしまいました。ちなみに、この奥さんからは、立派な白菜を一度に3玉もらったこともあります。仕入れる量がすごいのです。

言い忘れましたが、この奥さんは中国出身です。中国生まれ、中国育ち。もう人生の半分以上をアメリカで過ごしている、移民としての大先輩でもあります。同じアジア系ということで、お互いに親近感をもっていて、仲良くしています。

どうやって調理するか、知ってる?

わたしは、ぶんぶんと頭を横に振ります。かつて母がやっているのを横目で見たことがありますが、いざこの20本の筍を前に、皮を剥く以外になにをすればいいのか見当がつきません。

「説明するより、やって見せた方がわかりやすいわ」

奥さんは、玄関で靴を脱ぎ、台所に入ってきて、包丁とまな板を要求しました。そして、手際よく、筍をスパンと縦に真っ二つに切りました

細長いタケノコ

「中の柔らかい部分の先に親指を入れて、身を押し出すように指を滑らせていくの。そうすれば、身がキレイにとれるから」

本当に、キレイに皮が剥がれて、黄色から黄緑へのグラデーションのついた、見るからに新鮮なのタケノコの身が現れました。確かに、一本のタケノコからとれる身は、さほど多くありません。

なんだか面白そうな気配を感じた子どもたちが、僕にもわたしにもやらせろと寄ってきたので、それぞれ数本ずつ手渡しました。一枚ずつ皮を剥いてみたり、縦半分に切ったところから、言われたとおりに身を取り出そうと試したりしています。母であるわたしが初めて調理するくらいなので、息子と娘にとっては、初めて触るタケノコです。

「中身を出したら、熱湯で3分から4分煮て灰汁を出せば、下処理は完了よ。冷蔵庫に入れておいて、料理に使えばいいわ。」

わたしは、奥さんにおススメのタケノコ料理を聞いてみました。

一つは、お肉と一緒に炒める料理(炒肉)

たとえば、豚肉、筍、ニラの炒め物
(https://fun-chinese-cooking.blogspot.com/2012/04/stir-fried-bean-curd-with-chinese-leek.html)

もう一つは、甘辛醤油の煮込み(紅焼)。特に、ポークリブの煮汁で一緒に煮込んだら味が沁みて美味しいわよー、とのこと。

八角を入れるのがポイントだそうです。
(https://omnivorescookbook.com/hong-shao-rou/)

めちゃくちゃ美味しそうです。中華料理の世界は底が知れません

わたしが、「日本ではタケノコごはんにしたりするのよ」と言うと、タケノコチャーハンを思い浮かべたようだったので、タケノコとごはんを一緒に炊くのだと説明しました。奥さんは、うーん、と微妙な表情を浮かべて言いました。

「タケノコそのものに味がないから、それって淡泊すぎないかしら」

どんな些細な話題でも、愛想笑いで済ませない彼女の率直さがわたしは好きです。「日本人にとっては、春の味なのよ」と言っておきました。

奥さんが帰っていった後、わたしと子どもたちとで、タケノコ皮むき大作戦が始まりました。わたしがタケノコを縦に割り、子どもたちが中の身を取り出すという流れ作業です。まるで家族経営の工場のようです。タケノコになんの思い入れもない夫は、少し離れたところで本を読んでいました。

茹でる作業を経て、下処理の済んだタケノコがこちら。茹でたてをポン酢で食べてみたら、淡い香りがなんとも春らしい。

これは半分で、ボールもう一杯分あります。

お隣さんのお陰で、今年は、タケノコ食べ放題という特典つきの春を満喫できそうです。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
Xもやっています。繋がってくださると嬉しいです。https://twitter.com/Matsumura_us

27日目。書くのが少しラクになってきたような。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?