見出し画像

やってることは同じでもウケるようになる――ダイヤモンドが肌で感じた「知られる」強さ

昨年末に野澤が右足を3箇所骨折するアクシデントに見舞われたダイヤモンド。だが療養期間は野澤の等身大パネルが各種ライブで活躍し、本人が戻ってきたら戻ってきたで松葉杖で笑いを取り、まさに「転んでもただでは起きない」を地で行った格好だ。そしてそれが可能になったのは、本人たちが言う「追い風が吹いてる」状況と無関係ではないだろう。この1年で2人が実感した「知られる」ことの強さと、お笑い界の変化とは――。

画像11

野澤不在により“理想のお笑い”が完成した「ダイヤモンドno寄席」

――やっと松葉杖が外れておめでとうございます。骨折の顛末は「月刊芸人」に寄稿いただいた野澤さんのコラム を読んでいただくとして、1月は小野さんが野澤さんのパネルと一緒にライブに出まくってましたね。

小野:そうですね。バラせる仕事はバラしてもらったんですけど、僕らがメインの「ダイヤモンドno寄席」(1月2日開催)はゲストもいつものメンバーで決まっていたし(令和ロマン、Aマッソ、真空ジェシカ、ママタルト)、主催がネタやらないのもどうかなと思ったんですよね。最悪、野澤の音声があれば漫才はできると思ったんですけど、パネルもあったほうが面白いから社員さんに相談したら、翌日劇場に来たときにはもう出来上がってました。∞ホールは仕事が早い。


――結果、パネルも音声も「ダイヤモンドno寄席」で大活躍でした。

小野:もう、大ハネも大ハネで。今までやったダイヤモンドの漫才で一番ウケました。「こんなウケるんだ」って気持ちよかったです。

野澤:病室で見ました。良かったですね。同じメンバーで「お笑い大喜利」やって4年くらいになりますけど、ずっとやりたかった理想のお笑いが、僕がいないことで完成した感じがありました。

小野:「俺がいなくてもできるんだ」って思ったらしいです。

野澤:みんなが自由にやってて、それが良かった。まったく正月らしくないし、寄席でもない。

小野:寄席っていってるのに本当に一見さんを無視してた。みんなのネタも、お笑い知らないとわかんないボケとかやってたし。

野澤:結局、自分だけが知ってることが面白いわけじゃないですか。専門用語でしゃべってるときが面白いというか。

小野:秘密を共有してる感じね。それがあった。やってて楽しかったですね。野澤いないほうが完成するんで、来年ももしやらせてもらえるならまた病室で見ててもらいます。

野澤:俺が出るより絶対面白くなってましたからね。

画像11


――なぜそうなったんでしょう?

野澤:「いない」っていう面白さがまずあるんで。究極、出演者ゼロだったら面白いじゃないですか。「面白い」を突き詰めたらそうなる。

小野:極論ね。お客さんが来て、1時間過ごしてそこで帰るのが一番面白い。どっかで爆笑起きると思うんですよ。

野澤:「開演しました」って感じだけ出して、誰も何もなくてそのまま終演したときが一番面白いですよね。

小野:10年後くらいの「ダイヤモンドno寄席」でやりたいっすね。逆パターンは今回も考えてたんですよ。正月のあのライブはみんないろんな人呼ぶから、俺らだけコンビで10本くらいネタやろうかなって。寄席やるにしても普通じゃないことをやりたかったんですよね。


「やっと面白い人がちゃんと評価されだした」

――4月25日には「野澤輸出のお笑いコーナーライブ」「おもしろ漫才おもしろライブ」「ダイヤモンドの60分ラッキー○○漫才」と、∞ドーム ステージⅠで1日3公演行う「ダイヤモンドフェス」が開催されます。これは自分たち発案の企画なんですか?

小野:そうですね。僕が前からずっと、劇場を1日ジャックする企画をやりたいと思ってたんです。それで年末くらいに社員さんに相談したんですけど、その直後にZAZYがジャックしてました。先にやられましたね〜。結局その後いろいろ調整して、このタイミングでドームでやることになりました。


――主催ライブが増えてきてますよね。「ダイヤモンドフェス」もそうですし、「お笑い大喜利」系やツーマンライブシリーズもあって。

小野:ダイヤモンドの企画力を芸人がパクりだしてるっていう、これは問題なんですよ。特許は俺らにあるのに……。俺らがやるまでは、2組でライブやっても「ツーマン」とはいってなかったんですよ、多分。今、大喜利ライブもめちゃくちゃ増えてます。

野澤:∞で大喜利ライブやってた人なんて本当にいなかったですからね。俺がドームⅡで「お笑い大喜利」始めて、途中で配信が導入されてチケット500枚とか売れるようになってから風向きがだいぶ変わりました。

画像11


――約1年前に「月刊芸人」で取材させてもらったときは「人気がない」「野澤は理解されなくて死んでいくんだと思うんで、(自分は)良き理解者でいる」と話していました 。それが今では主催ライブが即完したり1日興行を打てるようになったわけで、この1年で状況は結構変わったんじゃないでしょうか。

小野:ムゲンダイレギュラーになったのはマジでデカかったと思います。月に数本しか劇場のライブがなかったのが去年は∞、大宮、幕張も出させてもらって、いろんな人と絡めるようになったのが大きかった。ネタ出番以外が増えると人となりもわかってくるじゃないですか。それまではお客さんが僕らのことを単純に知らなかったんでしょうね。今はだいぶ理解してくれる人が増えた気はしてます

野澤:知らないやつがただ変なことやってるのを見ても「おぉ……」で終わっちゃうからね。Twitterで【おもしろ〇〇】をずっとつぶやいてるんですけど 、2〜3年前のを見返すと「いいね」がひとつもないんですよ。はっきり言ってその頃とクオリティは変わってないのに、今はあげたら100はいく。「お笑い大喜利」だって今はめっちゃウケるけど、全然笑いが起きてなかった最初の3回とやってることは一緒なんです。周りの同じような感覚のやつらが売れてきて、時代が結構変わってきたかなというのはあります。

小野:やっぱマヂラブさんの『M-1』優勝やと思います。あれはだいぶ僕らには追い風になりました。多分、真空とかAマッソ、ママタルトもそうだし、ランジャタイさんやモグライダーさんもそうだったと思います。

野澤:本当に良かったですよ。一時期、お笑い界がつまらないほうにいきそうだったけど、やっと面白い人がちゃんと評価されだした。僕が芸人になってからだから、10年くらいかかりましたね。「こんなつまんないやつが売れてて……」って思ってた。

小野:たとえば?

野澤:俺の10年の芸歴の間に売れてたやつ全員よ。

小野:あぁ。僕はそうは思わないです、みんな面白いです(笑顔)。

野澤:やっと変わってきた。やり続けるもんですね。でもこの流れもまた何年かで変わるから。

小野:だから僕らはこの1〜2年がチャンスだと思ってます。

画像11

「今年の『M-1』1回戦終わりでまた骨折してもらうのが理想」

――ただ、追い風が吹く中、去年の『M-1』は2回戦で一度落ちるという出来事がありました。

小野:あのときはマジで絶望しました。でも今となっては良かったかなと思います。いろんな人が連絡くれたり、あんまり絡んだことない先輩からも声かけられたりしたんです。お客さんも「なんで落ちたの?」って感じだったのが追い風になってたから、あれで準々決勝を乗り越えられてたらもしかしたらその先もあったのかなと思いますけど。

野澤:その前の年も1回戦で一度落ちてますからね。しょうがないところはあります。僕らがやってることは点数高くも低くもつけられちゃうんで、審査員が少ないと……でも僕らもそれをわかってて出てますしね。


――そこはさきほど話していたような、以前より知られてきたことはあんまり関係ないものですか?

小野:でも予選もウケるようにはなりましたね。去年の2回戦も、今までの2回戦の中では一番ウケたんですよ。お客さんが知ってくれるようになって徐々に『M-1』もやりやすくなってる感じはします。

野澤:そうですね。同じネタでも3〜4年前とはウケが変わってきてると思います。


――やっぱり知られることは強いんですね。

野澤:根本はそこですよね。学校だったら先生のモノマネがウケるわけじゃないですか。それをもっと広くした、デカい内輪をやってるだけなんで。

小野:どれだけ“身内”をつくれるか。究極の身内ウケですよね。

画像11

野澤:そうそう。それだけの話って気はします。売れるって、ただ知名度が上がってウケやすくなってるだけというか。


――それは、実力が伸びるとかネタが洗練されることとはまた別のベクトルなんですか?

小野:でも俺、実力ってもう変わらないんかなと思ってて。別にみんなずっと面白いし、やってることの根本は変わらないと思うんですよね。だから自分とうまくマッチする見せ方を見つけられた人が『M-1』の決勝にいくイメージがあります。

野澤:うん。1回決勝行った人がいきやすくなってるということは、審査員の中でも知名度は関係してるはずなんですよ。だから最初に準決勝いくのが一番難しいんだと思う。去年の決勝で錦鯉さんがあれだけウケたのは、人柄が知られてるからというのもあるじゃないですか。マヂラブさんも、2017年の決勝に出て最下位で「変なことをやるコンビだ」ってなって……ってストーリーがありましたよね。

小野:特に『M-1』はストーリーがあったほうがドラマチックじゃないですか。だからストーリー欲しいっすよね。今年は1回戦終わりでハケるときにまた野澤に転んでもらって骨折して、2回戦松葉杖で、準々でようやく松葉杖がとれて、っていうのが理想ですかね。

画像11


初の90分単独ライブ「本物」では何かが起きる!?

――5月5日には単独ライブ「本物」がありますが、その頃には完治している予定なんでしょうか。

小野:そのつもりでやることにしたんですけど、どうやら治りが遅いです。

野澤:「こんなに歩けないかー」と思ってます。

小野:ちょっと困ってはいますね。どれくらいの感じでネタつくっていいのかわかんないんですよ。最悪、飛ぶ可能性もあります(笑)。


――10年待たずに不在ライブが実現してしまう。

小野:フライヤーもパネルの写真だからそういう雰囲気はあります。タイトルに関しては野澤くんの意志なんで、どういう理由でつけたのか僕はわからないですけど。

野澤:うーん、さっきの話でもありますけど、お笑い界に偽物ばっかいるから。

小野:面白くない人たちがいるってこと?

野澤:「自分は本物ですよ」みたいな感じのやつらですよ。

小野:具体的にどういうこと?

野澤:具体的に……?だからもう、なんか見たことあるようなことばっかやってさ、それを「自分が考えました」みたいなふりしてるやつら。

小野:『M-1』の決勝にもいるってこと?

野澤:いるでしょ、いっぱい。本物か本物じゃないか、みんなで見極めていこうぜってことですよ。別に俺らが本物って言ってるわけじゃないですけど。

画像11


――見る目を養っていこうぜ、と。そういう単独だということですか?

小野:俺たちが本物じゃないんだったら、単独見ても見極められないんじゃない?

野澤:「あ、こいつらは偽物だ!」ってなるじゃん。「本物ぶってる偽物だったな」って(笑)。

小野:嫌やな、そんなんだったら観に来てほしくないな。今回初めての90分公演なんですけど、野澤くんがやっぱり動けなかったらダイヤモンドじゃない人が90分やるかもしれないです。


――「本物」の意味が変わってきますね。

小野:僕らが最後に出てきて「君たちが本物のダイヤモンドだ!ありがとうございました〜」って言って終わる可能性もあります。

野澤:(宝石の)ダイヤモンドなんて偽物多いですからね。いや、知らないですけど……。


画像11


画像11

画像11


■ダイヤモンドINFO

ダイヤモンドの人気主催ライブを3つお届けする
『ダイヤモンドフェス』

日程:2022年4月25日(月)
会場:東京・ヨシモト∞ドーム ステージⅠ
①「野澤輸出のお笑いコーナーライブ」 
 時間:開場15:45 開演16:00 終演17:00
 出演者:ダイヤモンド/令和ロマン/Aマッソ(ワタナベ)/真空ジェシカ(人力舎)/ママタルト(サンミュージック)

②「おもしろ漫才おもしろライブ」 
 時間:開場17:45 開演18:00 終演19:00
 出演者:ダイヤモンド/令和ロマン/キュウ(タイタン)/カナメストーン(マセキ)/忘れる。(フリー)

③「ダイヤモンドの60分ラッキー○○漫才」 
 時間:開場19:45 開演20:00 終演21:00
 出演者:ダイヤモンド

また、ヨシモト∞ドーム ステージⅡをお客様の休憩所、ダイヤモンドパネルと写真が撮れるフォトスポットも予定!


『ダイヤモンド第3回単独ライブ「本物」』

画像7

日程 :2022年5月5日(木・祝)19:10開場 19:30開演 21:00終演
会場:東京・ヨシモト∞ホール
料金:前売¥2,000/当日¥2,500/有料配信:¥1,200



====
ライター/斎藤岬 撮影/越川麻希(CUBISM)
企画・編集/かわべり





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?