『黒骨の騎士と運命の子Ⅰ カリバーンの乙女』−1
世界観
プロローグ 黒い鎧の騎士は走っていた。その懐に小さな乳飲み子を抱えて。鍛えられた太い手足を振り抜いて。雨のような矢を潜り、蛇のように走る炎を越えて、黒い騎士は走った。
走って、走って、黒い騎士は勢いのまま塀を駆け上がる。大砲の轟音とたくさんの悲鳴から小さな姫を守るために、彼は堀に張られた水に飛び込んだ。
1.黒骨の騎士と薬屋のクロエ 今は亡きテリドア帝国の西、ヴォナキア王国の内陸、森に囲まれた小さな町ワスマにその酒場はあった。傭兵たちがギルドを組み、ヴォナキアの中