『ゆびきり』
「指切りげんまん、嘘ついたら、はりせんぼん飲ーます! 指切った!」
ある約束をした日、俺たちはまるで童心に戻ったかのように元気よく歌いながら指切りをした。すると、あいつはニヤニヤしながら、俺に子供のような質問をしてきた。
「『はりせんぼん』って、針を千本? それとも、魚のハリセンボン?」
「それ、使い古されたネタだから」
そう言っても、どっちなのかとしつこく聞いてくるので、面倒くさくなった俺は
「じゃあ、魚の方。もしお前が約束破ったら、魚の方のハリセンボン飲ますわ。」
と、適当に答えた。
すると、「魚の方な、オッケー」と言いながら、あいつは再び小指を立てた手を突き出してきた。
「指切りげんまん、嘘ついたらハリセンボン飲ーます! 指切った!」
俺たちは再び子供のように指切りをした。
そして、あいつは約束を破った、恐らく、わざと……。
俺は釣りの初心者だ。ネットで見た通りに道具を揃えてハリセンボン釣りに挑んでいるが、全く釣れる気配が無い。しかし、ハリセンボンを飲ませないと、俺も約束を破ることになってしまう。知らなかったんだ、あいつが釣りの上級者だったなんて……。
作:田中エイドリアン
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