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『フラン犬スーツケース』
博士は長年の研究の末、犬のDNAをスーツケースに移植し、生きたスーツケースを完成させた。見た目はごく普通のスーツケースだが、タイヤのような足は本人の意思で動くため、持ち主が引いたり持ち上げたりする必要は無い。そして、犬らしい忠誠心があり持ち主に懐くものの、スーツケースなので吠えることも無い。そして、もちろん中に荷物を詰めることが可能だ。
スーツケースと犬の良いとこ取り。そんなこの世に一匹しかい
『ホワイトデーは倍返し』
「ホワイトデーは倍返しだよ。意味、分かってるよね?」
バレンタインデーの夜、彼女が言った一言が俺を突き動かした。たった一ヶ月で準備できるのか。できるかできないかじゃない。やるんだ。
あの時、俺は文字通りボロボロだった。肉体的にも、精神的にも。
不甲斐なさからか、それとも緊張の糸が切れて体の痛みを感じたからか、家に帰ってソファに座るなり、涙がこぼれた。
「イカついコワモテの男が、なにめそ
『美人すぎる歴史学者』
歴史学者である私が、先日発見された平安時代の文書に食いつかないわけが無かった。
私は歴史学者として本を出版したりテレビに出たりしたことが無く、周りからは「大学の歴史の先生」としか思われていないだろう。私は歴史学者として有名になりたかった。そして、新たに発見された文書が私にチャンスを与えてくれた。
それは、当時の「美人になれる薬」のレシピだった。材料は自然に生えているものばかり。現在は食用とな
『ガラスの靴試着会』
「ねえ、アレット、聞いた? 王子様がガラスの靴の試着会をやってて、足のサイズがピッタリの女性が現れたら、王子様はその人と結婚するんですって。庶民の私たちにとって、王子様と結婚できるチャンスなんてそうそう無いわ。ダメ元で行ってみない?」
ジゼルは幼馴染のアレットに言った。それを聞いたアレットは、怪訝な顔をした。
「王子様はどうしてそんな妙な企画をやってるの? 結婚相手をそんないい加減な方法で決め