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「セリフはどうつくる?」「物語の終わらせ方は?」作家・丸戸史明さんと編集者がクリエイターのお悩みに答えました。──#創作相談RADIO レポート②

デビューを目指すクリエイターや物語をつくる作家からの悩みにお答えする「創作相談RADIO」を7月2日(日)にTwitterスペースで配信しました。

作家・シナリオライターの丸戸史明さん(代表作:『冴えない彼女の育てかた』『Engage Kiss』)と編集者でnoteディレクターの萩原猛さん(立ち上げ担当作:『冴えない彼女の育てかた』『紅霞後宮物語』)が答えた内容を、レポート形式でお届けします。

7月17日(月)に〆切が迫る投稿コンテスト「創作大賞」に応募をする方も、ぜひ参考にしてみてください。


Q.テンポのいい会話が得意ですが売りになりますか?

丸戸さん(以下、丸戸) 「会話」だけでじゅうぶん食べていけるので安心してください。ただ、会話だけで食べていきたいなら、小説よりも脚本や漫画原作にシフトしていくほうが自分の能力を活かせるかもしれません。

まず、「テンポのいい会話文」ってなんでしょうか?テンポのいい会話文っていうのは、読者がテンポよく読めること。たとえば、ずっと顔がにやけて読む手が止まらないとか、そういう状況をつくり出せる会話文のことなのか。それとも、一つ一つの語句が短いから喋ってみればテンポがいいというだけなのか。そこによってだいぶ違うと思います。

当然、求められるのは前者の会話文。それさえできていれば、じゅうぶん食べていけると思っています。

つまり、テンポのいい会話って速いとか短いだけじゃない。それもあってもいい。だけど、長くてもすごくリズミカルで読んでいて美しい、気持ちいいっていう会話が絶対にあるので。

内容を磨くのは当然として、文法に目を向けても、倒置法とか、韻とか、体言止め、七五調…いろんなものがあってそういうところのテクニックを詰め込んでいくと、会話に磨きがどんどんかかって、本当に食えるようになります。なので安心して磨きをかけていただけたらと思います。

ただ最近、海外展開が増えているので、日本語の文法を駆使してつくると、うまく伝わらなかったりするかもしれませんね。もし海外にも展開を考えるなら、汎用的な会話文を磨いていくのもいいのかもしれません。

萩原さん(以下、萩原) 海外の映画の字幕を見ると、現地の言葉に寄ったコメディや慣用的な言い回しとかはそのまま表現できないので、かなりアレンジされてしまっていますよね。まあ、あの独特の言い回しも、個人的には好きだったりします。

丸戸 僕が書いている脚本の会話って、外国語映画の翻訳っぽいかもしれません。映画の翻訳って無駄がなくて美しくて好きなんですよ。僕が外国の映画を翻訳で見るのが好きだからっていうのもあるかもしれないですけど。でもそれはひとつのテクニックなのかな。

萩原 自分にとってテンポのいい会話を探すとしたら、「自分が気持ちのいい文章」を見つけて、それをまずトレースするのがいいかなと思いますね。

Q. セリフに込めるべき要素は?

丸戸 僕は3つあればいいと思っています。状況説明、キャラクターの特徴、一発ネタ的なもの。3つの要素が入っていると濃くなってきて、30分アニメもつくれるようになります。

それらの要素がすべて入っているセリフは100点ですし、それはたぶん作品のキャッチコピーにもなり得るはず。それと同時に、セリフとしての脇役も重要。決めゼリフにつながるまでのやり取りの中で、いわゆる「バフ」──つまり強化技をいくつ積み重ねられるかによって、100点のセリフが200点にも300点にもなり得ると思います。

萩原 テクニック論になるかもしれませんが、キャラクターのセリフを充実させるためのアプローチは大きく2つ存在します。

まず、「セリフに魂がこもる」という現象について説明します。これはキャラクターが自発的に動き、独自の世界を生み出している状態を指します。いわばキャラクターに魂が宿っている状態です。これを達成するためには、まずキャラクターを自由に動ける状態にすることが重要です。

次に、この自由な状態をつくり上げた後で、読者の注意をそのキャラクターに引きつけるために「セリフに魂を込める」ことが必要です。これにより、キャラクターの存在感が増し、その言葉が読者により鮮明に伝わるのではないかと考えます。つまり、キャラクターが独自の生命力を持つことでセリフが活き活きとし、さらにそこにセリフを深く打ち込むことで、読者にとってそのキャラクターがより鮮やかに感じられるのかなと思いますね。

Q. 出版されたら担当編集者に挨拶に伺うべき?

萩原 会いに行けるなら、対面の打ち合わせを絶対したほうがいいです。自分が得意なことや、描きたいキャラクターについても伝えられますし。逆に担当編集者がどういう人で、どんなターゲットにどういうパッケージで売りたいのかとか、いろいろな話ができるので。

そういうのって、メールやリモート会議だけのやり取りになっちゃうんですけど、用件じゃないやりとりのほうがはるかに重要なので。用件じゃないやりとりをするために、ぜひ会いに行きましょう。

丸戸 編集者と会いに行って、それで自分と合うかどうかを判断するといいかもしれませんね。そういうところを会話して見つけていくのがいいと思いますね。

Q. 応募作は誰かに見てもらうほうがいい?

丸戸 見てもらったほうがいいと思いますね。とくに、信頼できる読み手を見つけておいたほうがいいです。

萩原 基本的には、自分のおもしろいと思うことをおもしろいと思ってくれる人が周りにいるのが一番いい状況だと思っています。その人が「これはちょっと…」と言うってことは、何かあるんだなってことになるだろうし。その人が「これはおもしろい!」って言ってくれたら自信を持てるし。そういう人を周りに見つけておくのはいいことかなと思います。

Q. 直近で見た作品に引きずられるのが怖くて、執筆中にインプットができません。

丸戸 引っ張られるのが楽しいのでは。引っ張られすぎて同じものや劣化コピーを書いたら駄目ですけど、自分独自のキャラクターや自分の思い描いた物語が、他作品の影響を受けてますます輝くなら堂々と胸を張るべきだと思います。

読者から「この作品に影響を受けてるだろ」と言われたら、「大好きです!」と言えばいいだけ。創作に完全オリジナルは存在しないので。インプットしているときに漫然と見るのではなく、「自分だったらこうする」という意見を持ちながら咀嚼するといいかもしれません。

Q. 書きたい作品があるが、調べると似たような作品があり、パクリと思われるのではないかと心配です。

丸戸 先ほどの質問に続きますが、自分のものに昇華できていて、自分で判断できればいいと思います。

Q. 昔と今で書きたいテーマは変わりますか?

丸戸 書きたいものは、変わるのではなくふえるもの。書きたかったものが書きたくなくなるということはないけど、書きたいものはどんどんふえていくもの。

ふえていくと、前と同じものよりも新しいものをやってみたくなってしまうから、ジャンルが変わっていくかもしれない。前にやっていたジャンルを書きたくないかというとそうでもなくて。ずっと奥底でくすぶっていて、あるとき書きたくなることもあります。

Q. 最初のプロットから外れてしまい、うまく終わらせられるか心配です。

丸戸 まずは終わらせること(完成させる)。そこから推敲して、どうしてもダメだったら捨てるしかないと思います。途中でズレたとしても、そこで手を止めずに書ききる。

萩原 僕も同じ意見です。人によって賛否あると思うんですけど、書いてるときの経験値は、書き終わってはじめて全部スキルに変換されると思っていて。逆に、途中で書くのを止めてしまうとスキルに変換されない。まずは、書ききることが重要だなと思っています。書ききったあとで変だなと思っても直すことはできますし、自分で評価ができないなら他人に見せればいいですし。ただ、どうやっても終わらせることができない物語であれば、捨ててしまったほうがいいかもしれませんけどね。

Q.「キャラクターの個性を出せ」と言われる。どういう状態のことを指す?

萩原 それを言った人に、もっと真意を聞いたほうがいいと思います。「個性がない」というのは曖昧な定義。キャラクターが独り歩きしていない状態のことを指しているのか、キャラクターに分かりやすいテンプレがないことを指しているのかで全然違う。どこに物足りなさを感じたのかを聞いたほうがいいと思いますね。

丸戸 その通りですね。今質問しているということは、腹落ちがしていないはず。だとしたら、どういうことなのかを突き詰めないと。そうしないと、第二稿を持っていったとしても直っていないと言われてしまうはず。「なんか違うんだよな」は、何が違うのか聞いて、疑問を持ったまま終わらせないほうがいいと思います。

Q. 作品において、現実と嘘の整合性の基準はどう考えるべき?

丸戸 とある作家さんのインタビューを読んだのですが、その方は、整合性をすべて調べ上げた上で、嘘を混ぜると仰っていました。分かっていれば、嘘を混ぜたとしても、読者は引っかかってくれると。とはいえ僕はそれが無理で。フィクションとノンフィクションの境界がよくわからなくなるので、監修者や世界設定をつくる人たちに頼っていますね。設定を固めることも重要なことですが、それができないのであればできる人にお願いするのもひとつの手かなと思いますね。

萩原 嘘か嘘じゃないかどうかはあまり重要ではなくて、「読んだ人が気になるか気にならないか」が一番重要です。たとえば、読んだ人の中で、すごいマニアックな人が何人か「これはあり得ない」って言ったとしても、その人じゃない人がターゲットの作品であれば、気にする必要はないんですよ。

読んでほしい人の顔を思い浮かべながら「この人たちだったらこれはOK」というラインを知るために調べ上げること。知識があることは全然悪いことではないですし、調べた結果、新しいネタが生まれることもありえます。その上で、「正しいけどつまらない話」になるよりも「間違ってても楽しい話」を自分で選択できるようになるといいかなと思います。


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noteでは日本最大級の投稿コンテスト「創作大賞」を開催中です。15の編集部と1つのテレビ局に協賛いただき、受賞作は書籍化や映像化などを目指します。

締め切りは7月17日(月)。応募はプロ・アマ問いません。詳細は特設ページをご覧ください。たくさんのご応募をお待ちしております!


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