「宇宙律俳人とは旅に出ないことにした」#シロクマ文芸部
梅の花を探しに出た。妻と二人で。長い長い入院生活が終わって自宅に帰ってきた私は、弱った足腰を鍛えるために、妻を散歩に誘ったのだ。咲き始めた梅の花を探しに行こうと、連れ立って歩いた。
「あれが梅かな」
「それは桜ですよ」
「梅って黄色だったっけ」
「それはたんぽぽ」
「これこそ梅の花だろう」
「それは公園で遊び疲れてベンチでうとうとしている孫のウーネ゙ですよ」
私が入院している間にこの季節に咲く花の種類も、人々の顔も、すっかり変わってしまった。
「おばあちゃん、おはよ」