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【追加記事あり】緊急提言「楽器演奏のエアロゾル飛散検証実験、実は管楽器演奏はコロナ感染の危険は少ない?」

【緊急提言】「楽器演奏のエアロゾル飛散検証実験、実は管楽器演奏はコロナ感染の危険は少ない?」

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12595131707.html


以下、追加します

以下、補足追加記事

6月6日のNHKニュースで、本稿に紹介した関西フィルのソーシャルディスタンス実験と演奏会予告が報じられていた。同時に、ウィーンフィルの演奏会再開の様子も、映像付きで報じられた。

写真
※ウィーンフィル本拠地のムジークフェライン。見たところ、ステージの椅子の配置は普段通りだ。

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※バレンボイムの指揮、ベートーヴェンの交響曲第5番。演奏者の配置も、指揮者との位置関係も、普段通りに見える。

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※一方、客席は前後左右に間隔を開けてある。100人限定。

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ウィーンフィルの演奏会では、客席の間隔を開けていたが、ステージ上は「密」なように見える。もちろん、ウィーンフィルは、ドイツを中心に行われたコロナウィルスの飛沫実験の結果を取り入れて、その上で通常に近い配置でも大丈夫だと判断したのだろう。
ならば、日本のオケも、ステージ配置は通常どうりで大丈夫なのではないのか?という疑問がわく。コロナ感染のリスクが、楽器演奏でどのくらいあるものか、もっと科学的な検証と追試が必要なのではなかろうか?機械的に日本政府や自治体が定めた基準を適用する必要は、実はないのかもしれないからだ。


※関西フィルブログより引用

https://kansaiphil.jp/kansaiphil_news/12890/

《舞台上につきましても、奏者間のソーシャルディスタンスを確保するため、小編成で演奏可能なプログラムに変更させていただきました。
当楽団としても初の試みとなりますので、先日演奏の検証を行いました。
練習場であるチェリーホールに集まったのは、約2ヶ月ぶりの事です。
これだけの長期間アンサンブルをしなかったのは、恐らく楽器を手にしてから初めての事でしょう…。
写真のように、管楽器以外の奏者はマスクを着用し、奏者間の距離を十分に空けた上で検証を行いました。
小編成…6型の弦楽器編成です。
これだけの距離を取って演奏する事は、恐らく多くの奏者にとっては初めての事だと思われます。
演奏者同士、意見交換を交えながら検証が進みました。
短時間の検証でしたが、有意義なものとなりました。
フルオーケストラと同じ響きを得る事は難しいものの、演奏可能であると判断いたしました。
限られた条件で最良の演奏をお届けするため、
お客様に再び「生の音楽」を感じていただくための今回の決断…どうかご理解いただければ幸いです。》

関西フィルは検証の結果、楽器同士の感覚をこのように取ることに
※ソーシャルディスタンス状態のオケ配置。とても間隔が広い。

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このように、関西フィルは演奏実験の結果、楽器相互に距離を置いて演奏会を実施することになった。しかし、一見してわかるように、これだけ間隔を開けると、大編成の曲はまず不可能だ。客席の人数も、前後左右に間隔を開けるため絞り込まれる。演奏会の収益は大赤字になるだろう。



※日本の他のオケでも、公演再開へ向けて様々な試みを行っている。

日本センチュリー交響楽団の場合

https://www.century-orchestra.jp/topics/haydn-kaisai/

《2020年5月30日お知らせ
「ハイドンマラソンHM.19」6月20日(土)公演開催のお知らせ(延期日程)
この度の新型コロナウイルス感染症の影響による度重なる公演中止や延期のお知らせではお客様に大変ご迷惑、ご心配をおかけしましたこと改めてお詫び申し上げます。
さて、日本センチュリー交響楽団は、5月25日の政府の緊急事態宣言解除を受け、「ハイドンマラソンHM.19」の公演開催の可能性を探ってまいりましたが、大阪府が発表するイベント参加人数の上限(6月18日まで屋内100人以下)の基準を超えてしまうため6月12日の公演開催が困難となりました。
しかしながら、一日でも早くお客様に生の音楽をお届けしたい、との想いから参加人数の基準内で行える6月20日に日程を変更し公演を開催することにいたしました。
6月12日(金)19:00開演

【振替公演】 6月20日(土) 14:00開演

なお諸状況を鑑み、当初予定していた「ホルスト:吹奏楽のための第1組曲」の演奏は行わないことにいたしました。何卒ご了承くださいませ。
振替公演ではお客様同士の距離を確保するため、新たに座席の左右隣を1席ずつ空けて配席いたします。すでにチケットをご購入いただいているお客様には新たなお席に振替させていただきます。(ご購入済みのお客様には別途ご案内をお送りしております。)
これにより、一時的に当該公演のチケット販売を停止しております。再販売の開始は6月2日(火)10時を予定しております。何卒ご了承くださいませ。
皆様に安心して公演を楽しんでいただけますよう、実施における感染防止対策につきましては会場のザ・シンフォニーホール様と検討・調整を進めております。決まり次第、ホームページで発表させていただきます。》


※ベルリンフィルの試み

サイトより引用

https://www.digitalconcerthall.com/ja/concert/53365

《新型コロナウィルスの蔓延により、ヨーロッパ・コンサートの開催は非現実的と予想されていましたが、内容を変更して急遽実現。会場は本来のテル・アヴィヴではなく、ベルリン・フィルハーモニー で無観客で行われました。キリル・ペトレンコの指揮のもと、ベルリン・フィルは最大15人の室内アンサンブル編成で演奏しています。プログラム前半は、「兄弟」を意味するペルトの《フラトレス》、死者への哀悼に満ちたバーバーの「弦楽のためのアダージョ」など、ヨーロッパ諸国への連帯を表明する内容です。また後半は、エルヴィン・シュタインによるマーラー「交響曲第4番」の室内アンサンブル版が演奏されています。
2020年5月1日
ヨーロッパ・コンサート (ベルリン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
キリル・ペトレンコ
クリスティアーネ・カルク
ご挨拶 (2分)
スタンリー・ドッズ
アルヴォ・ペルト
《フラトレス》 (11分)
ジェルジ・リゲティ
弦楽合奏のための《ラミフィカシオン》 (8分)
サミュエル・バーバー
弦楽のためのアダージョ Op. 11 (8分)
無料映像
キリル・ペトレンコ(聞き手:オラフ・マニンガー) (7分)
グスタフ・マーラー
交響曲第4番ト長調 (エルヴィン・シュタインによる室内アンサンブル版) (54分)

クリスティアーネ・カルク(ソプラノ)》

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この時の、マーラーの交響曲第4番を小編成で演奏した試みは、これからのオーケストラ音楽の1つの可能性に光を当てた、と言えるだろう。
ここまで極端なソーシャルディスタンスではないとはいえ、今回の関西フィルの楽器配置も、これまでとは違うオーケストラの響きを生み出すことだろう。

(以上、追加記事ここまで)




以下の独記事、楽器演奏のエアロゾル飛散検証実験、日本政府や自治体、民間もぜひ参加してほしい。オーケストラや学校の吹奏楽の活動再開の目安にぜひ科学的根拠を。各楽団や音楽団体、音楽大学なども実験に参加を。根拠なしに自粛を強要されたりこっそり練習したり、などではなく検証の上で再開を。

※記事引用

https://www.br.de/nachrichten/bayern/bamberger-symphoniker-wissenschaftler-messen-aerosolausstoss,Ry6T6OU

06.05.2020, 00:51 Uhr
Bamberger Symphoniker: Wissenschaftler messen Aerosolausstoß

(以下の引用は、グーグル翻訳による)
《バンベルク交響楽団の科学者は、気流を使用して、トロンボーン、クラリネット、またはホルンから放出するエアロゾルの数を測定します。 浮遊物質は、特にコロナの時期に特に危険であると考えられています。
(中略)
現在のところ、金管のプレーヤーは、感染からの保護を維持するために3〜12メートル離してプレイすることを推奨しています。
(中略)
「しかし、クラリネットやホルンを演奏しても、エアロゾルがほとんど放出されないと考えられます。
(中略)
この実験は、フライブルク音楽医学研究所の2人の科学者によって観察されました。彼らはこれまで、管楽器に3〜5メートルの距離を推奨しています。
(中略)
初期の調査では、木管楽器と金管の奏者による測定可能な呼吸の空気の動きはほとんど明らかになりませんでした。 バスーンのオープニングフラップやトランペットのベルには、人工霧の乱気流はありませんでした。 一方、楽器を使わずに直接吹き飛ばされたり咳が出たりした場合は、激しい乱気流がありました。
(中略)
バンベルクのコンサートホールでの測定後、実験室でさらにテストが行われます。 その結果はその後、ベルリンとミュンヘンのウイルス学者に提示され、監督はマーカスアックスの計画に従って、行動のための政策提言を策定します。
バンベルク交響楽団とドイツの他の約130のプロのオーケストラの目的は、ミュージシャンと一般市民の健康を危険にさらすことなく、できるだけ早くコンサートを再び演奏できるようにすることです。》

例えば、NHK交響楽団が、この実験を日本でもやってほしい。日本でこんな実験をきちんと実施して大学と連携し、全国放送に載せられるのはN響だけだ。オケで実験しその過程を大学が検証し、その一部始終をNHKスペシャルか何かで密着取材、放映する。そうすればオケや楽団演奏、吹奏楽部の再開にお墨付きになるはず

同じようにスポーツや趣味のあれこれもどの程度エアロゾル拡散するか実験して検証すればいいのに。自治体や大学や民間も日本政府の自粛要請に大人しく従うだけではなく、検証作業を重ねて政府方針に反論してほしい。ただひたすら我慢させるのはもう限界だ。感染の可能性が少ないなら再開してもいいはず


※追記
前回、第1章の記事中に紹介した、ドイツにおける楽器演奏者のコロナ感染可能性の検証、公式声明文が出ていたので、以下、引用掲載する。

https://note.com/fukudayosuke/n/nd9be5dd9812a

全訳転記
「新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック期間中のオーケストラ演奏業務に対する共同声明」
〔翻訳:西南学院大学神学部教授 須藤伊知郎〕

本文
https://epidemiologie.charite.de/fileadmin/user_upload/microsites/m_cc01/epidemiologie/downloads/Stellungnahme_Spielbetrieb_Orchester.pdf


※福田洋介氏のノート記事から引用しました
https://note.com/fukudayosuke
作編曲・指揮/東邦音楽大学特任准教授/http://fukudayosuke.jimdo.com

※全訳より引用
《声明発表者による注意事項■
この共同声明はオーケストラ演奏と楽団員たちの安全に関するものであり、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック期間中のオーケストラ演奏業務を可能とするためのものである。
聴衆に関する規則と推奨は別の場所で続けられねばならない。
我々の推奨措置を実施する際には、場合によって今後の疫学的展開ならびに新たな研究結果が考慮されるべきである。》

《目標設定■
最新の科学的な知見および評価と楽団員および楽器専門家の経験に基づいて、我々はドイツにおけるオーケストラ興行の再開を可能とする、一般的な衛生・行動措置、オーケストラの配置そして楽器固有の観点に対する推奨を策定した。
楽器固有の推奨は特に木管および金管吹奏者の楽団員グループに焦点を当てている。
なぜならその者たちの場合にエーロゾル産出と飛沫の形成が演奏活動と結びついており、通常の社会的接触を超えて潜在的に高められた感染リスクが考慮されなければならないからである。》


《吹奏楽器によって危険に陥る特別な可能性◆
吹奏楽器の場合、演奏の際にエーロゾル、外気温に依存して結露、また唾による飛沫形成が生じる可能性がある。
これらの液体は、楽団員が症状を示していないとしても、新型コロナウイルス陽性である場合、潜在的に感染力を持っている可能性がある。
そこで、演奏の最中そしてその後の結果として、場合によってはどれくらい高まった感染リスクが生じるのか、そしてどのような措置が適切にこのリスクを軽減させることができるのか、が評価されなければならない。》

《新型コロナウイルス感染の検査■
演奏興行再開前にすべての無症状のオーケストラ団員に新型コロナウイルス感染〔COVID-19〕検査を規則として順番に受けさせることは、必要ない。
現状の実験室の検査は、症状のない人の場合、その感染のしやすさ(感受性Sensitivität)に関してウイルス陽性の人を見分けること、そしてその正確さ(真陰性率Spezifität)に関して新型コロナウイルス感染〔COVID-19〕の人を他のウイルスを粘膜に持っている人から区別することが、未だ完全に確実で完成したものにはなっておらず、その結果人口において全体として感染の頻度が低い場合、検査を受けた人の一定数が感染しているにもかかわらず陰性となり、そして同じように、検査を受けた人の一定数が健康でウイルスに感染していないにもかかわらず陽性となってしまう。
諸々の検査はこれまでのところ、結果が正しい100%の確実さにはなっておらず、確実さのためには複数回の検査が必要である。》


以上




※この件について、サークルで自由にご意見を交換しましょう!


作家・土居豊と音楽&文学&教育を語ろう

 https://note.com/doiyutaka/circle

IMG_3704のコピー



サークル記事 本日のトピック


楽器演奏のエアロゾル飛散検証実験、実は管楽器演奏はコロナ感染の危険は少ない?

https://note.com/doiyutaka/circle/boards/05a7fb3f76a8/posts/b7e57dc5f6a3

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12595131707.html

この楽器演奏のエアロゾル飛散検証実験、日本政府や自治体、民間もぜひ参加してほしい。オーケストラや学校の吹奏楽の活動再開の目安にぜひ科学的根拠を。各楽団や音楽団体、音楽大学なども実験に参加を。根拠なしに自粛を強要されたりこっそり練習したり、などではなく検証の上で再開を。

※記事引用

https://www.br.de/nachrichten/bayern/bamberger-symphoniker-wissenschaftler-messen-aerosolausstoss,Ry6T6OU

06.05.2020, 00:51 Uhr
Bamberger Symphoniker: Wissenschaftler messen Aerosolausstoß




※参考記事

新型コロナ危機の最中、オーケストラ演奏を無観客で配信した動画の感想

センチュリー豊中名曲シリーズVol.13 / ニコ生配信 飯森範親指揮の「ベト7」!
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12585427551.html

センチュリー豊中名曲シリーズVol.13 / ニコ生配信

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地元・豊中の自宅で、近所の豊中市立文化芸術センター大ホールからのニコ生配信を見る。新型コロナ危機ゆえ偶然発生した面白いシチュエーションだ。

プログラム
(変更前)
指揮&クラリネット:ヴァレンティン・ウリューピン
クラリネット:持丸秀一郎
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
曲目
ヴィトマン:オーケストラのための演奏会用序曲「コン・ブリオ」
以下、
変更後と同じ

(変更後)
指揮:飯森範親
クラリネット
磯部周平、持丸秀一郎

曲目
メンデルスゾーン
序曲「フィンガルの洞窟」
2本のクラリネットのための協奏的小品 第1番

同第2番

ベートーヴェン
交響曲第7番イ長調

この日、プレステージは見逃したが、プレパフォーマンス&トークに大田智美(アコーディオン)、野村誠(作曲家・ピアノ)が出ていた。
ベートーヴェン・イヤーに関連して、ベートーヴェンの交響曲第7番をアレンジした、

《迷惑な反復コーキョー曲Beethoven 250 "Annoying Repetition Symphony"》
を演奏していた。

演奏会が始まる前、急遽代役で登場の同オケ首席指揮者の飯森範親さんがプレトーク。なんと4日前に代役が決まったとのこと。続いて、日本センチュリーの奏者の女性が対談相手に登場。「のだめカンタービレ」が好きなのだそうだ。この作品中で演奏されたベートーヴェンの交響曲第7番について飯森さんが語る。「のだめ」の演奏をチェコ・フィルで録音し直したことや、主役の玉木宏の指揮を指導したエピソードなど。
今回の新型コロナ危機で飯森さんは、なんと6月まで9公演がキャンセルという。クラシック界のダメージは大変な規模になるだろう。

さて、演奏会が始まる。客席は空だが、日本センチュリーのメンバーがステージに並んで、チューニングが行われる。ちょうど、レコーディング・セッションのようなものだろうか。和気藹々とした雰囲気だ。
1曲目、
メンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」。
この曲は有名曲だが、意外に生演奏で聴く機会は少ない。筆者も、生演奏で聴いたかどうか、記憶が定かでない。こんな形で、生配信で聴くことになるとは。
日本センチュリーのすっきりとした編成での演奏は、曲の見通しがとてもわかりやすい。メンデルスゾーンがスコットランドの最果ての孤島で見た、寂しくも荒涼たる風景を、くっきりと輪郭も鮮やかに描き出した。
続いて、
2人のクラリネット奏者、
磯部周平(元NHK交響楽団首席奏者・東邦音楽大学特任教授)
持丸秀一郎(日本センチュリー交響楽団首席奏者)
による、
メンデルスゾーン:2本のクラリネットのための協奏的小品 第1番と、同第2番。この曲は、全く初めてなので、先入観抜きに、落ち着いて聴く。穏やかな曲調で、柔らかなクラリネットの音色が、この数カ月の新型コロナ騒動で荒んだ心を癒してくれる。

休憩後、飯森さんが再び登場し、プレトーク第2弾。新型コロナ危機の大変な状況について切々と語る。この厳しい状況を乗り越えて、どうやって音楽を続けていけるか。
飯森さんの率直な問題提起は、音楽家だけでなく、私たち市民や、この社会全体の意志が問われている。

ベートーヴェンの交響曲第7番が始まる。

第1楽章、ベーレンライター新版のスコアによる演奏と思われる。鋭角的なリズムの強調、絶妙なテンポ感で演奏され、ホルンも絶好調。
続けて2楽章に入る。アレグレットの程よいテンポ。終結部に入る手前の絶妙なリタルダンドが泣かせる。過度なセンチメントに入り込まず、各声部を際立たせた。意志的な抒情というべき演奏だ。
3楽章、プレストのテンポのまま、快調に進み、トリオでもテンポをあまり落とさない。その分、フォルテへのダイナミクスの変化でスケール感が広がる。壮大さとテンポ感が見事に両立して、音楽の向こうに圧倒的な宇宙を垣間見せる。
4楽章、アレグロ・コン・ブリオの終楽章へ一気に突入するや、飯森さんのタクトはオケをぐんぐん煽る。ホルンの雄叫び的パッセージが凄まじく響く。弦楽合奏のリズムが前のめりになる寸前で、かろうじて踏みとどまりながら疾走する。要所で打ち込まれるティンパニーも、ものすごいアクセントだ。
怒涛のようなフィナーレの後、ホールの残響が静かに消えていく。本当なら、ここでブラボー!の声が飛び交うはずだ。
飯森さんは、主な奏者を順番に立たせて、演奏の労をねぎらう。オケのみんなは、配信用のカメラに向かって手を振る。そのままフェードアウトして配信が終わってしまう。
ネット視聴していた者としては、あまりに素晴らしい演奏に、アンコールの拍手を続けたい気持ちだった。

日本センチュリー交響楽団は、この2020年〜21年のシーズンで、31年目を迎える。新たに、ミュージック・アドバイザーとして指揮者・秋山和慶さんが就任した。首席指揮者の飯森さんが就任以来継続している「ハイドン・マラソン」という名の、ハイドンの交響曲全曲演奏のチクルスは、いよいよ折り返しに差し掛かる。今日の会場である豊中市の新しいホールの指定管財にも任じられたオーケストラは、ますます発展していこうと懸命の努力を重ねている。
今後、新型コロナ危機がいつ、収まるのか、演奏会の再開は可能なのか、何もかも不透明だが、創立以来の最大のピンチにある楽団を、これからもささやかながら応援していく。


https://www.century-orchestra.jp/topics/2020-21program/



※参考

吹奏楽コンクール延期に関する意見を織り込んだ筆者の小説『ウィ・ガット・サマータイム!』

ウィガット表紙用3


※KadokawaのBOOK⭐︎WALKERでも販売開始!

https://bookwalker.jp/de6c5f7f12-9f7d-4914-bd67-000c63cc50a8/?_ga=2.87758878.783377174.1586495988-1573749936.1586495988

※Kindle版
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※kobo版
https://books.rakuten.co.jp/rk/576dbfe4d03936f8bfb5bb3c0b7f7f7b/


※noteでは5章まで無料で読めます!


小説『ウィ・ガット・サマータイム!』
土居豊 作


無料公開中(5章まで)


プロローグ〜メインテーマ
第1章 ユニゾン1〜謎の楽譜1
https://note.mu/doiyutaka/n/na42f2da287a0

第2章 ソロ1〜ジャズ喫茶と古本屋
https://note.mu/doiyutaka/n/n7db884b63b97#Yo2Xq

第3章 ユニゾン2〜謎の楽譜その2
https://note.mu/doiyutaka/n/n80179135076e

第4章 ソロ2〜チェと南蛮屋
https://note.mu/doiyutaka/n/n322cc89320b4

第5章 ユニゾン3〜吹奏楽コンクール
https://note.mu/doiyutaka/n/n8223681c5ff2


吹奏楽好きの方、ジャズ好きの方、80年代に学生時代を過ごした方、昭和の青春群像を懐かしみたい方、あるいは、これまでの吹奏楽もの小説に不満足な方、新しい吹奏楽ものを読みたい方、ぜひ!

(あとがきより)
学生たちの音楽演奏や音楽鑑賞のあり方として、吹奏楽とモダン・ジャズは、同じ管楽器を使うとはいえ、ありようが大きく異なるジャンルです。吹奏楽は元が軍楽隊、あるいは管弦楽の亜種でもあったからか、特に学生の吹奏楽演奏は非常に規律正しいものになりがちです。大人数の学生バンドを緻密なアンサンブルに仕上げるには、管弦楽以上に規律が必要なのかもしれません。一方で、同じ管楽器を使った音楽でも、ジャズはリズムとインプロビゼーション、グルーブといったノリを重視する音楽です。この両者を融合しようとする音楽づくりと、完全にジャンル分けしようとする演奏、こういう両極端の音楽のありようを本作で描こうと試みました。これは、実は作者自身の実体験が元になっています。吹奏楽を学生時代やっていたのですが、音楽づくりの方向性で仲間と意見が合わず、ずいぶんと悩んだものです。クラシック音楽を志向していた自分は、ジャズ好きの仲間と一緒に曲を選んだり演奏していく中で、ひそかに孤立感を味わったこともあります。
本作の登場人物たちも、それぞれの音楽づくりに悩みつつ、みんなで演奏する喜びを実現しようと苦闘していきます。

付け加えると、昨今の新型コロナ危機で、吹奏楽の活動を見直す空気が広がっていることも、本作を急遽、電子版で上梓しようと決めたきっかけです。
音楽・文化活動全般が、感染防止の「自粛要請」(これは字義矛盾の用語だと思います)によって危機に立たされています。特に吹奏楽はその特性上、感染防止のためには演奏しないことしか選択肢がないように思います。でも一方で、学生たちにとっては今しか仲間たちと演奏する機会はない、という切実な思いもあります。
また、2020年の全国吹奏楽コンクールをどうするのか? 学生吹奏楽におけるコンクール至上主義を、この感染危機をきっかけに考え直すべきなのではないでしょうか。
そんなあれこれを思いつつ、80年代の、まだのどかだった吹奏楽青春模様を、ひとときの間でも共有してください。

2020年4月
土居豊


DSCF2269 のコピー

※旧・フェスティバルホールお別れ演奏会に際して

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コロナ危機の最中に音楽文化がどうなっていくのか? 感染拡大の緊急事態の中、演奏会やライブが次々中止されていったパニック状況から、演奏会再開…

土居豊:作家・文芸ソムリエ。近刊 『司馬遼太郎『翔ぶが如く』読解 西郷隆盛という虚像』(関西学院大学出版会) https://www.amazon.co.jp/dp/4862832679/