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AIは猫にとって理想の家族となり得るか?

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創作大賞2024参加中! SF?なのか、ファンタジーなのか……判断出来ないです!大好きな猫とAIを合体して楽しく書いてます!
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記事一覧

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第8話

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第8話

《悪夢の襲来》

 どうしよう。
 小さな体と心が押しつぶされるような不安の中で、真希は何時も部屋の片隅で小さく自分を折りたたんで固まっていた。
 どうしよう。また、百点を取れなかった。お母さんに怒られる。

『どうしてあの人と私の子なのに、こんなに出来が悪いのかしら』

 母は怒鳴ったり叩いたりしない。怒ると、静かにため息をついて、そのまま。背中を向け、真希など空気か何かのように見なくなる。ひょ

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AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第9話

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第9話

《チナツさんに緊急事態発生》

 真希の母が突然訪ねて来てから一ヶ月程、ゴローは常にセキュリティを強化して周辺の警戒を怠らなかった。

 ゴローは家庭用ロボなので警備ロボ程の性能では無いが、一人暮らしの女性に仕える為に必要な能力であると判断。一般に流通している家庭用ロボよりはセキュリティ面に強くなるようメンテナンス時にカスタマイズして貰っていたのだ。

 その緊張感がチナツにも伝わっているのか、チ

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AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第10話

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第10話

《天才という生き物》

 母の持論によると、この世には大きく二種類の人間がいる。

 天才と呼ばれる、一握りの人間。それに仕える、頭の悪い人間。貴方は選ばれた一握りの人間。その頭脳で人を導く存在なのよ、と。

 くだらない。咲希は、母が大嫌いだ。

 咲希にとっての親とは、世間的に保護が必要な年齢の間だけ存在するもの。咲希と母は確かに遺伝的には親子である。忌々しい事に。

 ただし、咲希は母とは別

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AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第7話

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第7話

《素敵なプレゼント》

 毎日の日課内に、午前中の家事を終えたらチナツとの特訓が加わった。猫として少々鈍い所のあるチナツに合わせて、ゴローは丹念にトレーニングコースを組んでいる。

「チナツさん。トレーニングを開始シマス」
「うる!」

 すでに臨戦態勢のチナツは姿勢を低くして長い尻尾を振りながらタイミングを計っている。

「トレーニングモード起動。初級、瀕死のげっ歯類」

 ふわふわの猫じゃらし

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AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第6話

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第6話

《天才達の日常》

 地球救済計画保護法(Earth Salvation Plan Protection Act)。それは、進退窮まった世界各国のトップが「このまま行くと全人類が滅びる」との計算を受けてようやく重い腰をあげ、国と言う柵を超えて手を取りあった証。

 一先ず、公式発表では、そう言う事になっている。

 保護法が守っているものとは、現在の定義では「人類を存亡の危機から救う力のあるもの」

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AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第4話

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第4話

《モノタリナイ?》

 診察時間の十分前、病院前に到着したゴローは、早速入り口から安全確認のスキャンを行った。

「入り口に異物発見。スキャンスタート、完了。カエルの置物、無害」
「るおーん!るおぉおおん!るぁああああん!」
「チナツさん、ここは安全デス。何があっても、ワタシがお守り致しマス」

 ここからの手順についても、完璧に予習してきた。ゴローは入り口を開いて、内部のスキャンを行い、受付の窓

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AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第3話

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第3話

《暗転、不思議な仕事》

 仕事をする上で重要なのは馴れ合いではない。会社は友達を作る場所ではないし、下手な馴れ合いなどして仕事の質が低下するのだけは我慢ならない。

 そして、仕事は結果が全てだ。数値として結果が伴わなければ、いくら過程で努力していても無駄だ。せいぜい、失敗用例の対策として資料になる程度。

 真希はひたすらそれだけを信念に仕事に打ち込んできた。

 実際に真希が率いるチームは好

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AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第2話

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第2話

《不可能な命令》

 報告が遅れてしまったが、ゴローは翌日寝不足状態の真希に母親の現状について伝えた。だが、真希の返事は簡素なものだった。

「そう。じゃあ、この猫は捨てて行かれたのね」
「ハイ。引き続き、ワタシがお世話致しマスか?」
「必要無いわ。捨ててきて」
「ハイ」

 何時も以上に言葉少なく、トーストすらも食べずにコーヒーだけを流しこんだ真希は仕事に出かけていった。

「捨てる……」

 

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AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第1話

AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第1話

《初めマシテ、ゴローデス》

 毎朝、午前七時に起床。時間外業務すら厭わない主人は直ぐにメールチェックを行い、緊急の案件が無いか確認する。

 朝食は軽く焼いたトーストにコーヒー。主人の健康の為にも少しでも野菜を食べて頂きたいが、その進言は「そんな時間無いわよ」の一言で却下される。

 しかし、主人の健康管理もワタシ……家事専門AI搭載ロボット、通称ゴローの役目。入念なシミュレーションを重ねた結果

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