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映画配給会社で、ポスターや広告のコピーを考えたり、予告篇やCMを作ったりしています。南…

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映画配給会社で、ポスターや広告のコピーを考えたり、予告篇やCMを作ったりしています。南の島が大好き。

最近の記事

映画「異人たち」のこと。

【昨年の秋、映画祭で観たときの感想】 誰にも言えない喪失感を抱えながら、ひとりで生きることの寂しさに苛まれ、圧倒的な孤独感に押し潰されそうなとき、この映画がひとつの救いになるかもしれない。 主人公が抱えている心痛のひとつひとつを、美しく幻想的な映像とともに、丁寧に解きほぐしていくところがとても映画的で素晴らしかった。この先の人生で、もう一度観たくなる日が必ず来ると思う。 【劇場にて、2回目鑑賞後の追記】 ひとりぼっちは寂しいけど、他人と関わるのは怖い。誰もがこの2つの

    • 「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」のこと。

      大長編ドラえもんの原点であり、大きな魅力のひとつは、“こんなこといいな できたらいいな”という夢のような“もしもの世界”が観られることだと思う。本作は“もしも音楽がなかったら…?”という夢というよりはディストピア的なテーマが置かれているのが新鮮であり、また同時にとてもチャレンジングな作品だと思った。「ドラえもん」というよりも、藤子・F・不二雄先生のSF短編的なテーマに近いかも。 また、本作のモチーフである音楽については、漫画では表現できない動画ならではの音の演出(「スラムダ

      • 2023年映画ベスト10

        2023年の映画マイベスト10。例年どおり順位不同(鑑賞順)で、新作として劇場公開&新作配信された長編映画から選びました。2023年に映画館&配信サービスで観た新作映画は、いまのところ130本です。 【2023年マイ映画ベスト10】 「コンパートメント No.6」 フィンランドの留学生による、モスクワから最北端への寝台列車の一人旅。旅とは思いがけず誰かと時間を共にすることであり、何が起こるか分からないという点で、まさしく映画の醍醐味とも重なって来る。目的地に着くよりも

        • 映画「MY (K)NIGHT マイ・ナイト」のこと。

          三組の男女の“ある一夜”を描いた群像劇なんですが、それらがすべて男女の恋愛関係ではなく、あくまでも他人同士のつながりをロマンチックに描いているところがとても良かった。映画を観終わって、こんなに幸せな気持ちになったのは久しぶりかも。とりあえず今年の邦画実写ベストです。大好き! 主役の男性3人はステレオタイプなキャラクターなのかと思いきや、それぞれに過酷な現実を必死に生き抜こうとしている女性たちと出会うことによって、思いもよらぬ素顔が明らかになってくるところも良かった。 90

        映画「異人たち」のこと。

          コメディ映画「クイズ・レディー」のこと。

          アメリカで“アジア人女性”として生きることにストレスを抱えていた姉妹(サンドラ・オー&オークワフィナ)が、テレビのクイズ番組に出演をして人生の大逆転に挑む。今年観たコメディ映画の中でも断トツに笑えて、さらにハートウォーミングなところも大好きな作品でした。とにかく笑えて元気になる作品が観たい人にオススメです! 地味なクイズオタクのオークワフィナと、派手で自由奔放なサンドラ・オーという何もかも正反対の姉妹が、ボケとツッコミの役割を変幻自在に入れ替えながら会話をドライブさせるとこ

          コメディ映画「クイズ・レディー」のこと。

          「くるりのえいが」と、くるりのこと。

          これまでのバンドの歴史を懐古的に振り返るのではなく、新しいアルバムが生み出されるまでのドキュメンタリーという形で、“あの頃のくるり”と“いまのくるり”で変わらないもの、進化したもの、そして失ってしまったものまでをも感じさせてくれる作品だった。 そして、その中から次々と生み出される新曲は、まさに“あの頃”と“いま”のくるりが共演しているような、懐かしいけれども新しい、まさにくるりっぽい“感覚”にあふれているんです。 ぼくは彼らと完全に同世代で、下北沢の小さなライブハウスから

          「くるりのえいが」と、くるりのこと。

          「まなみ100パーセント」と、あの頃。

          もう二度と戻ることのできない“あの頃”を振り返る青春映画はたくさんあるけど、本作は“あの頃”として振り返ることを拒絶するような、青春の生々しさと痛々しさにあふれているところがとても良かった。そして、まさに青春の道標のとしての“まなみちゃん”と“瀬尾先輩”の存在感が素晴らしかった。 いわゆる青春の“あるある”や強烈なエピソードだけを寄せ集めて物語を作るのではなく、久しぶりに再会した先輩と夜の公園で飲むみたいな、たわいのないシーンが印象的でした。そして、そういうたわいのない思い

          「まなみ100パーセント」と、あの頃。

          「一流シェフのファミリーレストラン」のこと。

          ついにシーズン2を観終わってしまったのですが、今年観た映画やドラマの中でダントツに面白かっただけでなく、物語、撮影、美術、音楽、そして登場人物の全てが愛おしくなる、まさにベストofベスト級に大好きな作品でした。まさか、シーズン1の驚きと感動をシーズン2で軽々と超えてくるとは! 数々の賞を受賞し大ヒットしたシーズン1を受けて、シーズン2では同じことを繰り返すのではなく、エピソードごとに登場人物ひとりひとりに焦点を当てることで、最終話にはレストランの新開店とともに、全員主役の群

          「一流シェフのファミリーレストラン」のこと。

          「エドワード・ヤンの恋愛時代」について。

          4Kリストアされた「エドワード・ヤンの恋愛時代」は、10代の頃に初めて観たときよりも、びっくりするほど切実で、痛々しいほど切なくて、そしてどこまでも登場人物たちが愛おしくなる作品だった。 さらに、ちょうど本作が公開された1995年頃、小沢健二が「いつだって可笑しいほど誰もが誰か 愛し愛されて生きるのさ」と歌っていたことを思い出したりもしました。 4Kリストアされたということよりも、作品のテーマやメッセージ的に全く古びてないどころか、むしろ今の時代を生き抜ために“自由恋愛”

          「エドワード・ヤンの恋愛時代」について。

          映画「バービー」のこと。

          完璧な世界など存在しないと気づいたとき、すべてのバービー&ケンたち、すなわち映画を観ている全観客に、この過酷すぎる現実の世界で“君たちはどう生きるか”と問いかけてくるような作品だった。 また、“バーベンハイマー”のような形で、あらゆることをネタ的に消費することの恐ろしさが描かれているという点においても、2023年を象徴する映画であることは間違いないし、本作が全米で歴代興行収入20位にランクインするほど大ヒットしているのは、とても意味のあることだと思う。それだけ多くの人が、こ

          映画「バービー」のこと。

          小浜島 はいむるぶし

          小浜島で宿泊した、はいむるぶし。 海が美しいのはもちろんのこと… とにかく敷地が広大なので、あちこち歩き回ってもほとんど人に会うことがないし、 自然がそのままの形で残されているところも多いので、時間帯や天候によって様々な植物の姿を見られるのも嬉しかった。 とくに、朝方にスコールのような雨が降ることが多いので、散歩をしているだけで南国の植物の生き生きとした生命感に包まれて癒されました。 広大な敷地の中には水牛や山羊の姿も。 そして、夜になると絶句するほどの星空が広が

          小浜島 はいむるぶし

          【2021年マイ映画ベスト10】

          #2021年映画ベスト10 例年どおり順位不同(鑑賞順)で、自社作品は入れていませんが、この年から新作として配信された長編映画も入れました。2021年に劇場&配信で観た新作映画は、117本です。 「花束みたいな恋をした」 他人にはつまらないものが宝物に見えたり、ちょっとした偶然が奇跡に思えたり、何でもない日常が愛おしくてたまらなかったり、そんな魔法のような日々がかつて自分にもあったのだと、甘酸っぱさとほろ苦さが何度も同時に押し寄せてくる。邦画を観てこんな気分になったのは

          【2021年マイ映画ベスト10】

          【2022年に劇場&配信で観た映画】

          〈2022年に劇場&配信で観た映画〉 1. 「ハミルトン」(ディズニープラス)★★★★ 2. 「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」(TOHOシネマズ新宿)★★★★ 3. 「偶然と想像」(文化村ル・シネマ)★★★★☆ 4. 「ハウス・オブ・グッチ」(T・ジョイSEIBU大泉)★★★☆ 5. 「劇場版 呪術廻戦 0」(T・ジョイSEIBU大泉)★★★☆ 6. 「クライ・マッチョ」(TOHOシネマズ新宿)★★★ 7. 「僕を育ててくれたテンダー・バー」(Amazon pr

          【2022年に劇場&配信で観た映画】

          【2022年マイ映画ベスト10】

          2022年の映画マイベスト10。例年どおり順位不同(鑑賞順)で、新作として公開された劇場映画&(劇場未公開で)配信された長編作品から選びました。 2022年に劇場&配信で観た新作映画は、いまのところ127本です。 「スティルウォーター」 マット・デイモン演じる無骨な父親が、殺人罪で捕まった娘のために異国で奔走するというプロットから浮かぶイメージを、良い意味で覆す重厚な人間ドラマ。偏見や思い込みから生じる人間の弱さや愚かさが突きつけられ、「人生は冷酷だ」というセリフに続く余

          【2022年マイ映画ベスト10】