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【Destination】第48話 世界統一王者


「ヒュドラ軍No.2 ナオキ」

年齢43歳 身長188cm 体重96kgと大柄な体格。元プロボクサーでヘビー級世界統一王者。1980年6月30日、ショウサカ府ワニナ地区に生まれる。

相手ボクサーをガードごと薙ぎ倒すケタ外れのパンチ力、ヘビー級では考えられないほどの軽快なフットワークと急所を正確に打ち抜く高度なオフェンステクニック。

そして、相手のパンチをガードのみに頼らず、ボディーワークで空を切らせ疲弊させるディフェンステクニックを武器とし、対戦したライバルたちを次々とキャンバスに沈めていった。

家族には母「ヤエ」と5歳年上の兄、2歳年上の姉がいたが、兄弟とは戦争が原因で死別、母はストレスからくる心臓発作で他界。

兄はジャポル軍に入隊後、戦地となった首都トウランに出兵し、ベルゴルド兵の銃弾を頭部にうけて死亡。姉もベルゴルド軍のタルタロス・ヴォンヴィス(陸海空全方位攻撃)に巻き込まれ、この世を去った。

父は酒癖が悪く、気に入らないことがあれば、すぐに暴力を振るう気性の荒い大男。職業は売春の斡旋。

当時10歳にも満たないナオキの兄を工場に、姉を風俗店に売り飛ばそうとし、妻にとがめられたことで、日常的に家庭内暴力を振るうようになる。妻子に対して愛情の欠片ももたない父親。

挙げ句の果てには、ナオキが2歳のころ家族を捨てて不倫相手と蒸発。行方知れずとなった。

結婚を反対され、駆け落ち同然で家を飛び出し、親子の縁を切られていたヤエは、ほかに頼る親類もおらず、夫の蒸発後、経済的な問題からジャポル各地を転々とする生活を送る。

「子どもたちに字の読み書きだけでも、少しでも教育を受けさせたい。将来は人を助ける仕事に就いてほしい」と考えたヤエは、ジャポルの中で最悪の治安と言われていた、ラハマ地区で激安狭小物件を買い定住。

住所を得たことで、わずかながらに希望を抱くが、彼女を待ち受けていたものは容赦ない過酷な現実。

中卒というハンデ、なんの資格ももたず表情の暗いヤエに用意された就職先は、体力仕事や日雇いのアルバイト、安月給で勤務時間が不規則なものばかりで選択肢は皆無。

何十社と面接を受けるがすべて不採用。一向にまともな仕事が見つからないヤエは、学歴や経歴不問、店のルールを守り働いてさえいれば、誰でも高収入を得られる風俗店で、やむを得ず体を売り生計を立てて3人の子を養う。

だが、コミュニケーション能力、愛嬌ももち合わせていない彼女にとって、客を選べないこの仕事は当然不向き。

横暴な男性、不潔な男性を相手にし、口コミ投稿サイトに書かれた容姿、態度への誹謗中傷で大きなストレスを受け、精神的に病んでいき、子供たちが寝静まったあと、膝を抱えひとり悔し涙を流す日々。

幼少期のナオキは内向的な性格と、大きな近眼鏡きんがんきょう(現在かけているものは、度が入ったサングラス)を着用しており、まわりから嘲笑、イジメのターゲットにされ小学校1年生、わずか7歳で不登校になってしまい、ヤエは心を痛めた。

自宅には連日借金取りが押し寄せ、勉強はおろか気を休めることもできない環境。居場所のないナオキは、行くアテもなく腹を空かせ、ただただ村をフラつく毎日を過ごす。

そんなナオキに目をつけたのは、村をしきる不良少年たち。

髪の毛を掴まれ、村の外れにある小さな公園に連行されたナオキは、激しい暴行を受けたあと、万引きや空き巣で金品を奪う「つかい走り」として強制的にグループに加入させられる。

それから約2年が経過したある日のこと、ナオキはペットとして大切に育てていた、野良犬の「ポチ」を不良少年に目の前で殺され、激しい怒りでわれを忘れ、人生初となったケンカで、その不良少年を一撃で殴り倒し、自身の異常なまでの強さに気づいた。

奪って得た金で空腹を満たしていたナオキは、歳を重ねるにつれ体も大きくなり、やがてグループをまとめるまでに成長。

「強ければなにをしても許される、どんな人間でも屈伏させられる」その歪んだ考え方は、このときから芽生え始めた。

物取りから徐々に強盗や麻薬の売人へと悪行がエスカレート、非行へと走りだし12歳までに50回以上逮捕され、最終的にジャポルでも最悪の少年を収容するワニナ少年院に収監。

そこで、更生プログラムの一環としておこなわれていたボクシングが、ナオキの運命を大きく変えることとなる。

ケンカ自慢のナオキは、余裕の表情でリングに上がり、担当教官に勝負を挑むが、完膚なきまで叩きのめされた。これがきっかけとなり教官に教えを請うようになる。

始めた当初の目的は『ボクシングがケンカでつかえるため』ただそれだけだったが、すぐに天才的な才能を開花させ、凄まじい上達ぶりを見せる。

父親ゆずりの体格と、100人にひとりであろう才能を見抜いた教官は、ナオキをプロボクサーに育てあげるため、カズトという男に彼を紹介。

カズトは3分間のスパーリングを一度見ただけで、ナオキの圧倒的な格闘センスに惚れ込んだ。

15歳となったナオキは少年院を仮退院。カズトが身元引受人兼トレーナーとなり、プロボクサーへの道を切り開くための共同生活が始まる。

母の猛反対を押し切り、厳しいトレーニングに耐えぬいたナオキは、アマチュアボクシングでキャリアをスタートさせ、16歳で初試合をおこない見事勝利。

その後も順調にキャリアを積んでいき、ジュニア・オリンピックのタイトルを獲得。アマチュアでの通算成績は52戦47勝5敗。

19歳でプロデビューを果たしたナオキは、世界チャンピオンヘの道を駆け登っていく。

デビューから破竹の11連勝を飾り通算27連勝。その直後、母のヤエが心臓発作で帰らぬ人となる。

悲しみを背負いながらも、王座を賭けた28戦目(21歳5ヶ月)に挑み勝利して世界ヘビー級王座を獲得。以後9度の防衛に成功。28歳で網膜剥離が判明し引退を余儀なくされる。

素行の悪さは改善されず、引退後はスカウトしてきた反社会的勢力に身を置き、世間を騒がせ、婦女暴行、器物損壊、大麻所持、数々の暴力・殺人事件を起こし、出所しては逮捕の繰り返しで、輝かしい栄光を自ら台無しにした。

裁判官から「更生の見込みなし」と判断され死刑を求刑。死を待つのみとなった待機期間中、世界大戦が勃発し投獄されていた刑務所は崩壊。

これによりナオキは同じ死刑囚であった「リュウ(本名テツヤ)」、「キジ」、「ケイジ」とともに脱獄。

ヒュドラ軍を立ち上げた彼は、亡き母の思いとは裏腹に、人を悲しませ尊い命を奪う殺人集団の幹部となり、極悪非道の限りを尽くしていく。



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