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エッセイ410.らんまにすとな人々(5) らんまんよ さようなら

毎朝必ず見るようにしていて、見られないときは再放送を、それでも足りずに「NHKプラス」でも見ていた「らんまん」が、今日終わってしまいました。

9月に入ってから、何かあるとすぐ、
「こんなことで9月末に収められるのだろうか」
と、余計なお世話で気を揉んできました。

Xー Twitterやそのほかに上がってくる記事や投稿を、そういうのを見つけるのが上手な友人が送ってくれるので、ドラマへの理解も深まり、らんまん熱は日を追って上がるばかりでした。
ありがとうMさん、一緒に半年見られて嬉しかったです。

ああ、始まったものは必ず終わる。
当たり前のことですが、らんまんとの別れは辛かったです。

本当によく出来たドラマでした。

今日、終わってしまってから、同好の士Mさんととオンラインで1時間しゃべっていたのですが、口をついて出てくるのは、

「うまい」
「うまいね」

という、唸るような感想でした。

ドラマ作りが上手い。
丁寧。
日本全国の素朴な視聴者の我々が、たくさんの登場人物が出てきても混乱しない、丁寧な作りでありました。

ドラマに暗雲が垂れ込めても、救いの手が、1週間以内ぐらいには現れるので、
あまりどきどきしないで見ていられる。

ちょっとしたわかりやすい伏線。
伏線受けもきちんと、こっちが忘れてしまう前には行われていました。

いい人かと思えば悪い人。
でもそういう人は少なかったし(田辺教授とか)、
それもちゃんと、後味が悪くならないような丁寧な処理がなされていました。

坂本龍馬の時代から始まったのに、日清日露戦争から大震災。
第二次世界大戦後まで生きた、万太郎のモデルの牧野富太郎博士の一生は、
そのまま幕末から、明治大正昭和の歴史なんですね。
平成さえ遠く思われてくるこの頃を思うと、感無量。

関東大震災に、あからさまには出さないが、日本の恥部であるところの
民族差別による虐殺。
アジア侵略。
ちゃんと、どぎつくならない形で織り込んでありましたね。

坂本龍馬。
ちょびっとしか出てこなかったし、
「このあと池田屋だよ〜」と思うと悲しくなったけど、
本当に爽やかだったディーン・フジオカ。

タキさん。
タキさんのあの啖呵。
あとでちょろっと出てきたと思ったら、
おっとりとした別人演技を見せてくれた松坂慶子さん。

分家の叔父さんと伸治。
いい人だったんじゃん! と、カタルシス。
名前はないけど、あたたかい人物そうだった、他の分家の叔父さん。

なんか、散々な目に遭ったけど憎めない高藤さん。
女性たちに総スカンを食い、関係なさそうな外国人の奥様たちにも「ふん!」とやられて気の毒でした。(公開処刑、と呼ぶ人もいるあの名場面)

早く綾に告白しなよ! とじりじりしたけれど、
万太郎を十分に支え、自分の初恋も貫いて幸せになった竹雄。
最初の数ヶ月は、バディモノでしたね。

鈍いんだかなんだかよくわからなくなるけど、
竹雄に護られて、好きなことも諦めなかった芯のある綾。

最初は万太郎から距離を置いて冷たかったけど、
次々に、人たらし万太郎にズキュンとなって、生涯の友になってしまう波多野、藤丸、長屋の人たち。
そう言えば故郷の雄一郎くん・・永代橋も清洲橋も修復だか、建造だか、してくれたのよね?
次に屋形船で橋をくぐるときは、雄一郎さん、あなたを思います。

グッドなバディになっちゃった野宮と波多野。
名誉は得られなかったけど、引き際も素晴らしかった野宮。
野宮は、神社の森を護れと万太郎に手紙を出して託し、
そのあたりは、このごろの神宮の森を守れ運動と重なりましたな。

すごい悪役だったけど、海難に遭う直前には、
奥様と仲良くなれたらしい田邊教授。
万太郎はあれだけ田邊教授に憂き目を見せられたのに、
教授については、一言の文句も悪口も言わなかったっけ。
そういうところで、男をあげるのよね、万太郎は。

長いものに巻かれながらも、万太郎をちゃんと尊重してくれた徳永教授。
理学博士に万太郎がなれたのも、教授と波多野の推しがあったからこそ。

そういえば、理学博士推薦を辞退する万太郎に
「傲慢だよ」
と切り出して説得する波多野、素晴らしかったですね。

思い返せばまだまだ、まだまだあるのですが・・・
切りがないですね。

さて、よく「主役を食ってしまった寿恵子」と言われてきましたが、
食ってしまうのなら、万太郎は存在感が薄くなったはず。
主人公二人いて、とっちらからなかった稀有なドラマ、
私はそういうふうに思っています。f

タイトルロールで途中から、それまで一人だった万太郎のイラストに、
寿恵子のイラストが加わって空を飛んでいきましたよね?
そのころは、まだまだお茶目でおきゃん、可愛い一方の寿恵子だったので、
なんでここに寿恵子が?  要らなくない?
と、最初は思っていたのですが、あの辺から寿恵子は、人間としての強さをぐんぐん出してきて、その魅力は否応なく高まっていくばかりなのでした。

寿恵子が万太郎と食った?  
いえいえ、そういうことは全くなくて、夫婦が同じぐらい、
ますます輝いていくドラマとなって、しみじみと終わりましたね。
私なんか、見終わって嗚咽しながら、

これからはもっとダンナを(もうちょっとは)大事にしよう

って、思っちゃいましたもの。


うまい、本当にうまかった。

そのうまさの一つはそうだな、今週の月曜日はちょっとファンにはショックでしたよね?

いきなり松坂慶子さんが出てきて、もう、1958年だという。
万太郎の娘千鶴の老年になったところという役で、
亡き父の植物標本を整理したいのだということでした。

家の中に入ると、万太郎一家の写真、
あの有名な、大笑いしている万太郎の写真と、
よく見れば印刷所のみんなの写真が並べてあります。

視聴者が、もう今は、みんなが去ってしまったのだと一瞬でわかる、
という場面でした。

この週は、カウントダウンが近づき、まもなくやってくるロスの波を予測して、
戦々恐々としていた私たち。

それに対してドラマの方から、

そう、一緒にずっと見てきましたね。
でも、そうです、これは過去のこと。
過去に一生懸命生きて働いた人のこと。
その人たちは去り、写真に遺るのみ。
植物標本も、後の世の人が頑張ればこそ残っていく。
でも、物語はそろそろ終わっていきますよ。
最後まで一緒に見てくださいね。

と、言ってくれていたんですよね。
(という、私の勝手な解釈)

これで、なんとなく落ち着いて、最後までじっくり見ることができた。
そんなふうに今感じています。

大袈裟ですが、ここまで入り込めたドラマは初めてです。
神木隆之介くんと、浜辺美波さんに感謝です。
もちろん、このドラマに関わったすべての人に感謝いたします。

ああ本当に、面白かった。

らんまん、ありがとう!



以下は、「日本の植物分類学の父」牧野富太郎の遺したもの展  
で撮らせていただいてきた写真です。


ムジナモの本当に生きているやつです




以下2枚はドラマで何回も使われていました。



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