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noteは小説より奇なり

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時々、思いついたら書いている小説集です。 連続短編小説「短い時間の長い瞬間」「Stairway to Heaven」「不幸中にしか幸せはないのか...」など
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記事一覧

[ショート・ショート] ある日のマシーン日記

「何とか言えよ」 地方のサラリーマンだろうか、少し薄くなった後頭部に何かを塗りつけて、か…

イトカズ
1年前
70

短編小説 「八月の呻吟」3

3−3 最終話 高東綾乃は1週間前の昼下がり、娘の美佳を市民プールに連れて行く途中で、橋…

イトカズ
1年前
68

短編小説 「八月の呻吟」2

3−2  妙子は上がり框にスーパーのビニール袋を置き、サンダルのストラップのホックを外し…

イトカズ
1年前
63

短編小説 「八月の呻吟」 1

3-1 八月十二日 薄い黄色のワンピースを着て左手に白いレースの日傘をさし、右手にスーパー…

イトカズ
1年前
62

掃除婦のための手引き書

ルシア・ベルリンの文章を読むのは初めてだった。 ビリビリと痺れた。 それは忘れかけてた神経…

イトカズ
2年前
73

短い時間の長い瞬間 (最終話)

短い時間の長い瞬間 27[短い時間の長い瞬間(最終話)] ツツジの枝の隙間から相変わらず青…

イトカズ
2年前
37

否応なしに動き出す3人の時間

短い時間の長い瞬間 26[否応なしに動き出す3人の時間] 美涼は、居酒屋の店長のところから飛び出してきて、しばらく勢いに任せて歩いていたが商店街の中程にあるベンチに座ったまま動けなくなった。 どこが痛いとか苦しいとかではなく、頭から動けと指示を出すのだがその指示に体が従ってくれない。頭と体がまったく違う人間になったような感じだった。背もたれにもたれ掛かり空を見る。東京の空ってたいした空じゃないなと思う。 動こう。こんなところでくたばってる場合じゃない。動かないと何も始まらな

ひとときのありふれた日常、愛おしく輝き

短い時間の長い瞬間 25[ひとときのありふれた日常、愛おしく輝き] 朝食の準備は剣志と綾乃…

イトカズ
2年前
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覚悟の眼に映るハナミズキ

短い時間の長い瞬間 24[覚悟の眼に映るハナミズキ] 菜津は、病室の窓から少し離れたところ…

イトカズ
2年前
36

日常の片隅にある、迷いの世界で

短い時間の長い瞬間 23[日常の片隅にある、迷いの世界で] 朝食には手をつけないまま、菜津…

イトカズ
2年前
37

さまよう手、春の終わりに。

短い時間の長い瞬間 22話[さまよう手、春の終わりに。] 美涼はバッグの中に手を突っ込み、…

イトカズ
2年前
39

進む時間と停滞する時間の交差点

短い時間の長い瞬間 21話[進む時間と停滞する時間の交差点] 剣志は美佳と綾乃との生活をし…

イトカズ
2年前
40

うわべだけのパラドクス

短い時間の長い瞬間 20話[うわべだけのパラドクス] 7階の窓から見る東京の街は、高いビル…

イトカズ
2年前
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愛のかけらもない、逃避行

短い時間の長い瞬間 19話[愛のかけらもない、逃避行] 美涼は東京行きの新幹線に乗っていた。 あの男がシャワーを浴びている間に、男の財布からあるだけのお金と、カバンの奥底に隠してあった覚醒剤を盗んできた。 少し体が震えるが大丈夫だろう。マスクを着けてこうやって下を向いて眠ったふりをしていれば誰も気づきはしない。東京までは5時間ほどかかる。その間に体にこれ以上の異変が現れたらその時はその時だ。 * 今朝、同居している男から、 「おまえさ、しばらく店には出るな。店の周辺で警