短歌10首⑤

・猫がする昔話「あれはまだスポイトでミルクを吸うとった頃」

・乳頭をガラスの壁に押し付けて犯される私を冷やす扇風機の強

・図書館を二人で出ていく土曜日の夜に手を握れその先に散れ

・贋作を描く必要がなくなった画家が最初に描いた絵とかも

・草原の虫の世界でカマキリの形のセイキンがしてる共食い

・目が死んでいるサラリーマンよりも目が生きている方が先に死ぬよな

・「新宿は豪雨」の椎名林檎ぐらい濡れている梨を剥かない東京

・鈴の香りの鈴香 私は鈴の香りを知らないから鈴を作るね

・モノクロをカラー写真にする技術の過去がぐっと迫るのが怖い

・風の不在を伝える風車、風車。風車。風車は群れしかみたことないな。




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