研究遂行経費申請しないと損! その2 何が計上できるのか

この記事は「研究遂行経費申請しないと損!は間違っている その1 節税効果を徹底比較」に連動しています。
冒頭は同じ内容ですが、有料部分からは異なる内容になっています。


ことはじめ

日本学術振興会研究者養成課より2022年1月13日(木)13時にメールが届きました。
タイトル: 令和4年度(2022年度)採用分特別研究員の採用手続について
誓約書などについて【電子申請システム】を通じて手続きをするようにという内容の通達です。
その中には研究遂行経費を申請するかどうかのフォームもあります。
今回はそんな採用手続きの中でも研究遂行経費に焦点を当てたあれこれの記録です。
締切: 2022年3月31日

日本学術振興会特別研究員遵守事項および諸手続の手引(令和5年度版)」を読んでみると、使いきれなかったら「追徴課税」が発生しますと書かれていたので、結構ビビりました。
それであれこれ経験者たちのブログや記事を参考にしたのですが、どうやら2020年度採用あたりから報告書などが変わったようで、それらが参考にならないことがわかりました。
さらに、「研究遂行経費は申請しないと絶対損!!」という言葉を鵜呑みにして申請した結果損をした私から、同じ轍を踏まないでほしいという思いも込めて書きます。

もしすでに申請手続きを行なった人も、3月31日までは変更できますので、これを読んでもう一度考えてみてください。

研究遂行経費とは

学振特別研究員にはお給料である研究奨励金と研究費である特別研究員奨励費のほかに研究遂行経費というものがあります。
研究遂行経費は研究奨励金 (DC: 20万円、PD: 36万2千円)のうち3割を上限として、生活に係わる経費ではなく「日本学術振興会特別研究員申請書」に記載された研究課題及び研究計画を遂行するために要する経費として使用することができます。
一応「日本学術振興会特別研究員遵守事項および諸手続の手引(令和5年度版)」の文言を引用しておきます。

特別研究員からの申告により、研究奨励金のうち生活に係る経費ではなく「日本学術振興会特別研究員申請書」に記載された研究課題及び研究計画を遂行するために要する経費を、研究奨励金の3割相当額を上限に「研究遂行経費」として所得税・住民税の課税対象より除外することができます。なお、「研究遂行経費」の取扱い は、年度単位 (4月~翌年3月まで)となります。

日本学術振興会特別研究員遵守事項および諸手続の手引(令和5年度版)

つまり、DCであれば60,000円、PDであれば108,600円を月々の自腹研究費として使用していいですよ、という制度です。
年額にするとDCであれば720,000円、PDであれば1,303,200円ですから、なかなかな額ですよね。
身銭を切って研究する予定はないと思われるかもしれません。
しかし、この72万円について所得税・住民税がかからない非課税状態になるわけですから、差額はそれなりに大きくなるという話です。

実態がよくわからないので、私も当時調べました。
そして「1、2年目は絶対お得」という共通したアドバイスを目にすることになります。
ですが、ほとんどのブログなどの情報で申請しなければ損と言われるのはこの非課税分の差額で得をするという極めて単純な計算結果に基づく言説であり、厳密ではありません
実際ブログの情報を鵜呑みにして1年目から申請していた私は損をしました

1、2年目は絶対お得、3年目は注意が必要
1、2年目に余った研究遂行経費は賞与だから通常税率、3年目だけ追徴課税
それ本当ですか??

悔し涙を流して後から丁寧に計算をして導いた結果、これから研究遂行経費を申請する人にとって上記の「申請しなければ損」の認識を改めなければいけないということを声を大にして言いたい。
まずは結論から。

読者の方からの度重なるご指摘と懇切丁寧な説明によってようやく以下の結論を得ました。

1年目から3年目までの全てで申請した方がいい

ポイントは2つ

  • 所得税・住民税・国民健康保険料を年度ごとに算出

  • 研究遂行経費に計上できる費目からラインを見極める

書いていたら長くなったので分けています。
今回は2つ目のポイントについてです。

研究遂行経費に計上できる費目・できない費目

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