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アメリカン・ミュージック・ヒストリー第6章(1950年代全般・・・その1)


6. ロカビリー&ロックン・ロールの時代へ(1950年代全般)


 前項で、戦後から1950年代にかけての様々なルーツ系音楽の大きな変化について話してきましたが、ここからは、いよいよ20世紀アメリカ音楽史上最大の出来事について、お話していきたいと思います。


 (1) ロックン・ロール誕生と短い黄金時代

 以前触れた、大瀧詠一の「アメリカン・ポップス伝」では、1951年から1956年のエルヴィスのハートブレイク・ホテルを挟んで1959年までの全米総合チャートのNO.1ヒット曲全曲を数秒だけ時系列に紹介すると共に、カントリーチャートとR&Bチャートにも触れながら説明していましたが、そうなると、この章だけで膨大な量になってしまいます。       

 ですので、ここではロックン・ロール誕生前(エルヴィス登場前)までと誕生後の短い黄金期に欠かすことが出来ないと思われる代表的な曲を選んで紹介していきたいと考えています。それでも50年代は激動の時代なので、かなり多くの曲が登場することになると思います。


*はじめてのロックン・ロール


 「最初のロックン・ロールのヒットレコードは何だったか?」については、いろいろな候補曲があるものの一般的には、何曲かに絞られてくるようです。
 このガイドブックの最初の章の「エルヴィスからはじめよう」で「ザッツ・オールライト・ママ」と「ブルームーン・オブ・ケンタッキー」が最初のロカビリー(リズム&ブルース+ヒルビリー)レコードだと話しましたが、同時に最初のロックン・ロールだとも言われていますし、もう1曲一般的に言われているのは、ご存じビル・ヘイリーの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」ですね。

 そうなってくるとロカビリーとロックン・ロールの違いは何かということになってきますが、両者の違いを語る上で押さえておきたいポイントに、そもそもロックン・ロールという言葉を最初に使ったのは、誰だったかということで、そしてその答えは、「アラン・フリード」という白人ディスクジョッキーだといわれています。

 戦後から50年代に入り黒人リズム&ブルースは黒人のみならず白人の若者たちにも人気が高くなってきましたが、白人向けのラジオ番組で黒人リズム&ブルースを堂々とかけることに躊躇していた白人ディスクジョッキーのアラン・フリードは、1952年、自分の番組タイトルを「ザ・ムーンドッグ・ロックン・ロール・ハウス・パーティ」に変更しリズム&ブルースのことを、ロックン・ロールという新語にして使ったわけです。

 そうすると、当初はリズム&ブルースそのものだったロックン・ロールは、白人の若者の間で独り歩きし、いつの間にか(エルヴィスの登場が決定的で、この時代のアメリカ映画ではエルヴィスが、黒人音楽を盗んで白人音楽に変えたというセリフをよく耳にしますね)ロカビリーも含め「リズム&ブルースが白人化」した音楽のことを指す言葉になっていったのだと思います。
     

 初めてのロックン・ロールの話しに戻すと、黒人リズム&ブルースのような曲を白人が歌って初めて全米(全英も含め)総合チャート1位になったという意味では、「ロック・アラウンド・ザ・クロック」、ですが、より黒人に近い歌い方をしたエルヴィスのメジャーデビュー曲の「ハートブレイク・ホテル」や「ハウンド・ドッグ」だという意見もあるようです。


 少し長くなりますが、一方で1954年に当時としては珍しい現象でしたが、黒人リズム&ブルースチャートでの大ヒット曲が、白人ポピュラー、ダンス音楽中心の全米ポップチャートでも大流行となった曲が2曲ありました。黒人ヴォーカルグループのザ・クロウズが、歌った「ジー」と同じく黒人ヴォーカルグループのザ・コーズが歌った「シュ・ブーム」です。

  
 時期的に早いのは「ジー」でしたが、インパクトとしては白人コーラスグループのクルー・カッツによるカバーがポップチャートの1位になった上に、カントリー歌手のカバーもカントリーチャートで流行し、ポップ、R&B、カントリーの3大チャートを席捲した最初のヒットということから「シュ・ブーム」だとの説も強いようです。もう1曲、かなり強引ですが、同じく1954年にヒットしたレイ・チャールズの「アイ・ガット・ザ・ウーマン」説というのもあるそうですが。


 そしてもっと前に遡るとエルヴィスを見出したサン・レコードのサム・フィリップスが取り上げて、1951年に黒人歌手ジャッキー・ブレンストンが歌いR&Bチャート1位になった「ロケット88」説(同年にビル・ヘイリーが、初めてカバーしたR&B曲でローカルヒットしたこともあり)も根強いようです。


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1956年私が生まれた年の、エルヴィスのメジャーデビューアルバム。と、言っても今と違ってこの時代は、シングル盤メインの時代ですね

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セカンドアルバム。アルバムとしては飛躍的にクオリティが高くなっていると思います

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50年代エルヴィスのコンプリートBOX盤。萩原健太氏は、アメリカ大衆音楽の過去と未来までもが詰まっていると言っています。同感

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映画との相乗効果で大ヒット。一般的には、1955年にこの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」のヒットチャート上での大ヒットを契機として、ロックンロールブームがスタートしたと位置づけるのが一番わかりやすいですね

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オリジナルは、黒人ドゥーアップの、ザ・コーズの曲だが、白人グループのカバーが1位になった

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1951年の、このRocket88を聴くと、やっぱり音楽的にはR&Bからロックン・ロールが、生まれたんだなと実感します

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