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アメリカン・ミュージック・ヒストリー第7章(1960年代全般・・・その1)


7. アメリカ音楽VSイギリス音楽(1960年代)
  
 1890年代から時代を下ってきたアメリカン・ミュージック・ヒストリー(20世紀ガイドブック)ですが、ターニングポイントである1950年代を経て、いよいよ本格的ロック時代である1960年代~70年代に突入していきます。
 この時代は、客観的に見ても20世紀アメリカ(そしてイギリス)大衆音楽が一番進化し、華やかだった時代だと思います。従って、いろいろな文献や音源もたくさんあり、私より遥かに造詣が深い方も多くいらっしゃいますが、自分なりにできるだけシンプルにアテンドしていきたいと思います。
 と言うことで、まずは1950年代後半から60年代にかけての時代背景を確認していきたいと思います。

 1950年代後半に世界中を席捲したロックン・ロールは、エルヴィスの徴兵、リトル・リチャードの引退(後に復活)チャック・ベリーやジェリー・リー・ルイスの女性問題による逮捕、ロックン・ロールという名前の生みの親でもある人気DJのアラン・フリードの追放、ツアー移動中の自動車事故によるエディ・コクランの死亡、同じくジーン・ヴィンセントが重傷、そして「ロックン・ロールが死んだ日」として知られる飛行機墜落事故によるバディ・ホリー、リッチー・ヴァレンス、デニス・ホッパーの死等で、すっかり骨抜きになってしまいます。

 そして1959年から1960年に入るころには、スウィートなアメリカン・ポップス花盛りになっていきます。これはこれで名曲も多く、個人的にも好きなのですが、こうした流れに物足りなさを感じていた当時の若者の心を見透かしたかのように、1964年、ついこの間まで、音楽後進国と言われていたイギリスからエルヴィス並みの衝撃が訪れます。言うまでもなくビートルズの登場を皮切りとした、イギリス出身のビートグループによるブリティッシュ・インヴェイジョンです。

 ビートルズに代表されるリバプールのマージービート系や、ローリング・ストーンズやアニマルズ等のロンドンや周辺都市のブルースロック系、そして少し後になるとロックとジャズやクラッシックが融合したプログレッシヴ・ロックやハード・ロック等、イギリスから洪水のように新しい音楽が押し寄せてきました。
 

 一方1960年代前半のアメリカは、アメリカン・グラフィティのような、とても明るく健康的なポップスが主流になっていくと同時に、都会の若者を中心として南部のアメリカン・ルーツ・ミュージックが見直されるフォーク・リバイバル運動が活発化し、ボブ・ディランを筆頭として多くのフォークシンガーが登場してきましたが、ビートルズの影響により急速にアメリカ産ロックが花開いていくことになります。
 又、60年代後半になるとベトナム戦争の泥沼化で反戦運動や徴兵拒否等によるヒッピー運動が活発になり、マリファナに象徴されるサイケデリック・ロック等、混沌とした時代が反映されたような音楽に変化していきました。

(1)1960年代初頭のアメリカ音楽


 50年代に爆発したロックン・ローラーは、初期のエルヴィスを初め、粗野で荒々しいイメージを振りまき、それによって若者の支持を得ていましたが(大人たちは、眉をひそめましたが)、50年代に活躍したアーティストが、さまざまな出来事で失速する中、レコード会社は商売になるとわかったロックン・ロールを10代の明るく清潔なイメージを持った白人男女を登場させ(言わばアイドルによるロックン・ロール風ポップス)ヒット曲を量産しました。

 又ティーン・エイジャー以外でもこの時期のポップスは、メロディアスで甘く、口あたりの良いポップスが多いので日本ではオールディーズと呼ばれとても人気が高いですね。また、大変なツイストブームでチャビー・チェッカーの「ザ・ツイスト」は、60年代をとおして一番売れたシングルレコードになりました。

 そうした中で、1958年のキングストン・トリオの「トム・ドゥーリー」の大ヒットを契機に、60年代前半にかけ都市部や東海岸の大学生やインテリ層による「モダン・フォーク」ブームが起こり、西海岸では、ロサンゼルス北部のベイカーズフィールド・サウンド(カントリー)の流行、ヴェンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」を皮切りとしたエレキ・インストブーム及びディック・デイル、ビーチボーイズ、ジャン&ディーン等によるサーフィン&ホットロッドサウンドが脚光を浴びました。

 次回以降は、各ジャンルについて、もう少し説明を加えていきたいと思います。


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兵役から帰ってきて、すっかりムービースターのイメージが付いてしまいましたが、60年代の映画音楽以外の録音をすべて網羅したBOX。やっぱりすごい

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60年にヒットしたウォーク・ドント・ランを皮切りに、特に日本では絶大な人気を誇りましたね

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言わずと知れたデビューアルバム

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ブレイク前の、ホワイトブルースシンガーとも言える、ファースト

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数あるモダンフォーク・グループの中でも、まずを先頭を切ったのはキングストン・トリオかと・・・

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デビューアルバム。60年代中期以降、ビートルズの好敵手と言われるようになりますが、個人的には、やっぱり初期の爽やかなサーフィン・サウンドが好き

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60年代で最も売れた曲「ザ・ツイスト」

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60年代ポップスのオムニバスは、たくさんありますね




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