レコードコレクター野田君

1988年!?
まだ自分が確か18歳位の頃か…
地元三重でBLOOD FEASTと言うHCバンドをやってた頃、後にボーカルとなるM君は2歳年上で、毎日の様に遊んでて、「俺の中学の時の同級生でめちゃくちゃPUNKのレコードを持っている奴が居るから、そいつの家に遊びに行こう」と誘われた。

当時、"PUNKのレコードを沢山持ってる先輩の家に遊びに行く"って行為が割と命懸けで、実際、1個上の先輩ん家に行った時に確かに沢山レコードは持ってるけど、家庭内暴力が凄過ぎて、その先輩を残し一家は夜逃げしてて、シンナーやら〇〇やら勧められた挙げ句、金の無心をされると言う事も有ったので、嫌な予感しかしなかったけど、まぁM君も居るから変な事にはならないかなと判断し、チャリを2ケツし、そのレコードコレクターの家に向かった。

で、到着した"コレクター野田君"の家と言うのが、凄い豪邸で内心えっ!
って感じ。大きい門からピンポンして、玄関へ。もう事前に自分等が行く事は伝わってた様で、お母さんが
「友達が少ないので中々遊びに来てくれる人が居ないのよ、よく遊びに来てくれました〜」と言われ中へ。
初対面の野田君は、想像とは大きく違い、色白でボサボサ頭、銀ブチメガネで顔をくしゃくしゃにして笑顔を携えており、所謂"オタク"って感じの見た目。鼻毛めっちゃ出てた(笑)
挨拶もそこそこにコレクタールームへ。
いやマジで、ちょっとしたレコード屋より凄かった。UK PUNK HCと日本のインディーズと呼ばれる物は全てラインナップしてたと思う。まだ、US PUNKは日本に入ってきたばっかりだからこれから揃えるとは言ってた。GAUZEも入ってたCITY ROCKERとかINUが入ってたドッキリレコードとかSTALINのTRASH、電動コケシとか現物を初めて見る物が目白押しだった。UK PUNKも7inchのUK盤、同国内盤も殆ど有った。
AMEBIXとかANTI-SYSTEMの7inchもそこで初めて聴いたかなぁ…
野田君はaggressive wheelsがお気に入りらしく、何だか熱弁してた(笑)

そうこうしてたらお母さんが、
ケーキと紅茶を持ってきてくれた。
ケーキを食べながら爆音視聴(笑)

書籍のラインナップも凄まじく、
初期DOLL、初期news wave、その他
色んな手書きzineも有った。
レコードはダメだけど、書籍は良いよと言う事で、何冊か借りて帰路についた。

で、その後はなんやかんやで18歳の
自分はまぁ、バンドや受験やらで忙しく、野田君の事もすっかり忘れてて、結局、名古屋の専門学校に行き始め、BLOOD FEASTも一回脱退してた頃に、M君から野田君が亡くなった事を聞いた。白血病だった。

野田君のご両親は野田君が不治の病で余命が少ない事を知っていて、
せめて生きている間に好きな物を何でも買ってやろうと言う事で、学校にも余り行かず、ひたすら全国のレコードショップからレコードをかき集めた結果があのコレクターズルームだった様。

当時は20歳で「あっそう、」位にしか思って無かったけど、借りた書籍は結局自分の手元に有って、
今思えば申し訳無かったなと…

でも、結局あの部屋どうなったんだろうなぁと時々思い出すけど、
まぁ向こうでくしゃくしゃの顔して
レコード聴いてるんでしょうね…