バットウ 第3話

第3話 山本海
 
翌日、抜刀とアッキーは前日に助けてくれた謎の少年を探すため、休み時間に入るたびに別のクラスの教室を覗きにいく。そして1年5組の教室でついに彼を発見するのだった。

「いた!」抜刀が興奮気味に囁き、アッキーも頷いた。授業が終わると、2人は教室の前で彼が出てくるのを待ち伏せた。廊下に出てきた少年を見つけると、二人は駆け寄り、
「昨日はありがとう!」抜刀が声をかけるが、少年は無言で軽くうなずくだけだった。
その後、抜刀とアッキーは同じ5組にいる小学校時代のクラスメイトに彼について尋ねてみた。
「あの子、名前は確か「山本海」っていってたかなー。無口でいつも一人でいるみたいだよ。」と教えてくれた。

「山本海か...」抜刀はその名前を反芻した。「彼に近づくのは怖いけど、感謝の気持ちだけは伝えたい。」
翌日の放課後、二人は再び海のもとへ。「海君、いや海さん、海様、こないだは本当にありがとう。君のおかげで助かったよ」と抜刀、海はまたもやただ無言でうなずくだけ。まわりのクラスメイトは何をやっているのか分からないといった雰囲気で特に興味もない様子。
それでも、抜刀とアッキーは諦めずに彼との距離を縮めようと努力する。帰り際にサッカーに誘ってみても、反応は薄くパスを出しても素通り。仕方なく二人でサッカーを始めた。
「俺のスーパーシュートを見せてやるよ!」と抜刀が叫び、アッキーのパスに思い切り足を振るが、豪快に空振りしてひっくり返ってボールの上に乗っかって頭から転んでしまう。その瞬間、海の口元がわずかに緩んだのを抜刀は見逃さなかった。
制服の汚れを掃いながら「やっぱり海様でも笑うんだね!おれはバットウ」と言うと、アッキーも「海君、いや海様、もっと面白いことやろうよ!おれはアッキー」と笑いながら言った。
海は照れくさそうに「おれ山本海。海でいいよ」

次の日の休み時間、抜刀とアッキーはどの部活に入るかを考えていた。
「強くなるなら空手かな」
「でも痛そうだし先輩怖そうだよな」
「じゃあ柔道?」
「練習きつそう」
「剣道?」
「夏暑そう」
なかなか意見がまとまらない。
「そうだ、海と同じ部活に入れば仲良くなれるし、怖い先輩からも守ってもらえるかも!」と抜刀が提案する。
二人は海にどの部活に入るのかを尋ねに行くことに。
「海、どの部活に入るの?」
「俺は部活には入らないよ」
「そうなんだ、てっきり柔道とか空手の達人なのかと思ってたから柔道部か空手部に入るのかと思ってたよ」
「柔道も空手もやってことないよ」
「え?じゃああの不良たちをやっつけたのは何なの?」バットウは勇気を出して尋ねる
海は、静かに「MMAだよ」と答えた。
「MMA?」二人は首をかしげる。
「そう。部活には入らず、MMA道場に通うんだ」
「えむえむえー??」
「って何?」
抜刀とアッキーは顔を見合わせた


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