忘れもの

空白の中で生きていたいよ
どこかの小さな隧道 子猫が先を知らないまま
ただ眠っている 真っ暗闇のなかで
黒猫が幸せを願って
かなしく音を鳴らした 昔きいた歌のリズムで
優しくて暖かくて ずっと遠くにあった
でも、あまり思い出せなかった

涙が何色なのか分からないまま
夜の色の温もりに
吐いた息の冷たさに 全てに触れていたいけれど
全て透明になるものだったから
心みたいな 分からないもので

誰かがブランコに乗っていた
月明かり 雲から顔を出しても
出さなくても めをつぶって
夜露 アスファルトが少し濡れた
流れ星は、まるでこわれてしまったみたいに
私たちを通り過ぎて そして儚く散った
水道管に水が流れる音がする
もう少し冬が続いているのなら
僕達は死んでいったのだろうか

どうして黒猫は 抱きしめて
どうしてなのか 赤い月が見つめている
夜が囁いて 初めて色をくれた

案山子の鳴るおと
猫の目 僕はまた堕ちゆくだけの
桜の木の下
春になったのだろうか

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