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金やビットコインなどのコモディティ相場の特性とインフレの特徴を解説する

この金価格は近年上昇傾向にあり、これはある事象の警告を象徴しています。

現状の日本や世界経済を「金」というフィルターを通してみた時に見える状況について解説してみようと思います。

金を知れば、日経平均株価などの他の商品の事も分かってくると思いますし、今非常に大きな分岐点に来ていると感じます。

今回は「金価格の上昇の背景」と「今後」というテーマで書いていきます。

現状の金価格

現状の金/円は最高値を更新しています。金/ドルに関しても強い上昇をしている事から金が優先的に買われていることがわかります。

金/ドル

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金/円

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金と通貨の歴史

物事を考えるには、まず歴史から知るというのは一つの方法論だと思うので軽く金と通貨の歴史を書いておきます。

※本題ではないので、要約程度にしておきますが詳しく知りたい方は本や紹介する論文を読んでみても面白いかもしれません。

金の歴史は古くシュメール文明、トラキア文明、エジプト文明など紀元前3000年以上前から金を装飾品として重宝していました。

ちなみに、金の延べ棒というものがあるのですが、これが初登場したのは、古代エジプトとされています。その頃の金の延べ棒はドナー型で保存されていたという壁画が残っているそうです。

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引用先:https://55096962.at.webry.info/201105/article_36.html

しかし、この頃は「金」を「お金(通貨)」として扱う習慣はありませんでした。それまでの金の用途は、装飾品や資産保存(物々交換用途)としての価値はあったのですが、通貨としては扱われていませんでした。

「金」を通貨として扱い始めたのはいつ頃だったのか

「金」を通貨として扱い始めたのはいつ頃だったのでしょうか?

それは、「貨幣制度」を作りあげてからになります。それ以前の金は、配合率を変えることが容易のため適正な価値で取引をすることが困難なケースがありました。

そのため、資産としての用途はあったものの、それは価値基準が人によって違う物々交換の世界では使えたものの、同一価値を担保しなければいけない通貨の用途としては使いにくく、物々交換するためには毎回天秤等で測らなくてはいけない不便なものでした。

そこで生み出されたのが、貨幣制度です。

貨幣制度の意味は、国が金の価値を保証するという意味になります。

そもそも、通貨と貨幣は違うのか?という問題ですが、通貨は流通貨幣の略称です。国の信用により保証した貨幣(資産)を通貨といいます。

引用先:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E8%B2%A8

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それまでの金は配合率を容易に変えることが出来てしまうので、お金(通貨)として用いることには限界がありました(天秤で計るだけでは正確に金の保有量を計るのは困難)が、国が金の配合率を保証することで、同一価値のあるものとして、金(貨幣)を通貨として流通させる事が出来ました。

これにより、金が通貨になります。

これを貨幣制度といいます。

少し話がずれますが、金の配合比率を落とすような改鋳をすると膨大なインフレが歴史上何度も繰り返されましたが、これは国の信用を落とす事に直結しているため(国が配合率を保証することが出来なかった)インフレが極度に起きたとする説があります(通貨として認知されなくなり「金(貨幣)」として認知されてしまう)

現在、金本位制ではなくなったが、円やドルが通貨として機能しているのは、国の信用を落とすような事態になってないからです。

国の信用を落とすような行動や前兆現象というのは、「インフレを止められない時」です。

「インフレを止める事が出来る」というのは、通貨として機能している≒通貨の価値変動をコントロールする事が出来るという意味になります。

通貨の価値変動をコントロールする事が出来ない状態を金貨に例えると、人々が勝手に改鋳して銅が混じってる金貨を作ってしまう状態と同じです。

そんなものは通貨として機能しません。

金属ならまだ金属の価値がありますが、紙幣の場合、これが紙の価値になるまで減価していくのだから恐ろしいのです。

現状、インフレには程遠いですが、インフレになった先に現状の通貨は通貨として存続できるんでしょうか?

インフレを止められるのでしょうか?

金利を上げた時、国債を大量に持っている日銀はどうなるのでしょうか?

最近、なぜ金と株価が同時に上がってるか知ってますか?

金と株価は通常、逆相関にありますよね。

それが株価と金が同時に上がる正相関の関係にあります。

これは、どういう時に出る現象かご存でしょうか?

今回は、そんな話を「金」と「インフレ」というフィルターを通して書いていこうと思います。

「金」と「インフレ」にまつわる大事件の歴史

まず、物事を知るには歴史からだという事で

「金」と「インフレ」にまつわる大事件の歴史を書いていきます。

舞台はフランスです。

ルイ14世~ルイ15世のフランスは多大な借金がありました。

その借金を返済するために国営企業に国債を全部買い取らせて、財政再建を果たしたという歴史的金融政策であるミシシッピ計画のお話です。

またの名をジョン・ロー・システムとも言います。

ミシシッピ計画の歴史と金融政策

ミシシッピ計画とは、フランスの財政破綻を防いだバブル計画のことです。

当時フランスの王様ルイ14世は金遣いが荒く、国家財政破綻の危機に陥っていました。

その金額は毎年1億4500万リーブルの税収に対して借金の残高は30億リーブルと歳入の20倍に達していました。(日本は税収が60兆円、借金1000兆円、約16.6倍)

ルイ14世の死後にルイ15世は、このままでは財政破綻してしまう。国民からは税金を絞って絞って絞りきってこれ以上増税はできないと考えてました。

この財政危機を脱出するために思いついたのが、金と銀の成分を25%削って薄めた状態の「新しい硬貨(改鋳)」を発行する事を思いつき実行に移します。

この改鋳は国民を激怒させました。度重なる重税と改鋳により国民は餓死する始末に国王の像が叩き壊されたり、国民が街で暴れたりしました。

この状況のときに現れたのが、ジョン・ローという人物でした。

ジョン・ローはお父さんが金融業を営んでおり、14歳の頃からお父さんの会社で働いていました。

17歳に母国のスコットランドを出て、ヨーロッパを中心に各国をプロのギャンブラーとして放浪しながら、貨幣(かへい)や銀行制度のあり方に関する論文を発表していました。

そのジョン・ローはフランスに立ち寄った際に、酷い状態を見て宮廷に乗り込み「硬貨だけで紙幣を使わない国は商業国として極めて不適切である」と進言しました。

当時は金や銀の貨幣を使うのが当たり前で、紙幣を使うようになったのはジョン・ローのアイディアだったそうです。

このアイディアを採用したルイ15世は「ロー・アンド・カンパニー」という政府認定の王立銀行を作りました。

この王立銀行は、今で言う中央銀行のようなものです。王立銀行は紙幣発行券があるので、フランスは王立銀行券という紙幣を通貨として使うことになりました。

当時の紙幣発行の仕組みは、金貨と銀貨などを王立銀行に預けると、その金貨や銀貨を預かりましたよ〜という証明書として、王立銀行券という証券を発行して渡すという仕組みになっていました。

これにより、財政難だったフランス王国の元には、大量の金が集まりました

当時、ただの紙である王立銀行券が金貨と同等の価値を保証できた背景として、銀行券持参人に対し金銀実質分量(重量)で支払いを約束していたためです。

当時の金貨は頻繁に改鋳されていたため、金貨や銀貨は価値が減っていき信用力がありませんでした。

そこで、ジョン・ローは銀行券持参人に対し金銀実質分量(重量)で支払いを約束し紙幣に価値をもたせることに成功します。

この紙幣発行で金を集める事に成功します。

王立銀行券と金は等価で交換できますが、一度にすべて交換されることはないので、金を多少流出させても財政破綻になることはありません。

要するに、国中の金を集めて国債の支払いに使えるお金を生み出す信用創造により財政を回復させたのです。

この成功で、王宮はジョン・ローに絶大な信頼を寄せます。

そして、ジョン・ローは、ある金融政策を実行する事にします。

それが、ミシシッピ計画です。

フランス経済は立ち直ったと言っても、国はまだ多額な借金は抱えたままでした。これを解消するための秘策がミシシッピ計画です。

ジョン・ローはミシシッピ会社という「アメリカのルイジアナ州との独占貿易権」を有する会社設立を提案します。

フランスの植民地であった今のアメリカのミシシッピという場所に、大量の金銀財宝が埋まっており、異国と貿易することで莫大な利益が見込めるとジョン・ローは宮廷に熱く語る事により、ミシシッピとの貿易権を独占するミシシッピ会社を作ることに成功します。

この当時、ジョン・ローが作った中央銀行ロー・アンド・カンパニーは王立銀行に改組されており金銀と紙幣は等価交換ではなくなっていました。ルイ15世の圧力により、紙幣が大量発行されており、金や銀の交換が一斉に来たら受付できない状態にまで悪化していました。

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さらに、国の借金も、より膨れ上がっており、これも返さなければいけないという窮地に陥っていました。

この状態を打開するために考え出したのが、ミシシッピ計画です。

このミシシッピ計画は、ミシシッピに金銀財宝がある、他の国との貿易により、すごいお金が儲かると熱弁したことで実現しましたが。実は、何の根拠もありませんでした。

ジョン・ローが計画していたのは、ミシシッピ会社の株券をフランス国債で販売し、事実上の国債の破棄をするという計画です。国にお金を貸しているという証明書の国債を、お金を返す義務も何もない「ミシシッピ株」と交換するというのが狙いです。

これを、ミシシッピスキームといいます。

この会社の資本金は、 1 億リーブルもの巨額であり、1 株500リーブルの株式 を20万株発行して調達するというものです。

当時のフランス政府の財政規模が 2 億リー ブル前後であったから、この会社の資本金はその半分に相当する莫大なものでした。

日本の財政規模は100兆円ですが、これに当てはめれば,、資本金が50兆円の巨大会社ということになります。

日本のメガバンクでも資本金は 一社でせいぜい2兆円から3兆円ほどであるから、この会社は超々巨大会社なのです。

 これだけ巨額の発行株式が売れるものかと心配になるが、そこには仕掛けが ありました。

 株式払い込みに公債を用いても構わないというのです。

しかも額面500 リーブルでありながら、利子の支払いが悪くて市場価格が160ないし170リーブ ルに減価している不人気公債、いわゆる「くず公債」を使ってもいいのです。

160ないし170リーブルの値打ちしかないくず公債の所有者は、それを使っ て500リーブルの株を購入することができるという、ありがたい話です。

このような経緯からミシシッピ会社の株は人気に火が付き

1720年には政府の全負債はこの会社に移り、事実上の債務免除されたような状況になりました。

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さらに、国債でミシシッピ株を買うというスキームだったので、フランスは事実上無限に国債を発行できる状態になっており、無からお金を生み出す錬金術のような状態だったそうです。

その結果、フランス国内は好景気に湧き首都のパリでは、かつてないほど豪華なオブジェがあふれていて、彫刻や絵画、タペストリーが海外から輸入され、あっという間に完売していました。

豪華な家具屋装飾品も、代々お金持ちの貴族だけではなく、普通の商人や中流階級の家でも普通に見られるようになるほど凄まじい景気でした。

しかし、この状況は長くは続きませんでした。

不自然な株価の高騰で証券の仲買人が不審に思い王立銀行券やミシシッピ株を金貨や銀貨に変えて海外に持ち出すようになり、ジョン・ローは慌てて硬貨の価値を5%落とす施策をします。

これは、金貨よりも紙幣の方が価値がある事にし交換する人を減らそうする政策ですが、収まる気配がなく、さらに10%硬貨の価値を切り下げる政策を実施しました。

最終的には、金貨銀貨の交換を制約することで事態の収集を図ろうとしたが、金貨と銀貨を自由に交換できない事で不満の声が上がるようになりました。

さらに、金貨や銀貨の使用を完全に禁止するという法律を作った結果、土地・家屋や動産などの現物の買いに人々が走り、一気に2~3倍の価格になりました。

※ちなみに、ドイツのハイパーインフレの時も同じような経緯を辿っています。今度書くかもしれません。

その後、お店が王立銀行券を受け取らないという事態に発展し、誰も買い物ができないという状況に陥ります。

この時の状況は詩によって書き残されています。

 「紙券の全機構は瓦解してしまった。翌 5 月22日には,人はポケットに 1 億 リーブルの紙券をもったまま餓死しかねなかった。」
 「これは硬貨に何が起ころうとも,銀行券の価値は変わらず,全額が支払わ れるとなした王の約束を破棄するものである。その結果,銀行券の信用は全 く失われ,誰もこれを受け取ろうとはしなくなった。正に100万リーブルをポ ケットに持っていても餓死するかもしれぬ事態となったのである。この時パリ に暴動が起こった。暴徒の鎮圧のために,軍隊が要所に配置されるという事態 であった。」 「  夫は首を吊り,妻と 3 人の子どもは絞め殺されていた。部屋の中には 6スーの銅貨と20万リーブルの銀行券があった。」

これが世界で初めてのインフレーションであり、ジョン・ローはインフレーションの父と呼ばれています。

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信用を失った王立銀行は、フランス政府がジョン・ローから経営権を奪い取り、銀貨、金貨は王立銀行券の半分の価値で交換出来るようにした事で、事態が収拾します。

この事件の責任はジョン・ローにすべて押し付け、ジョン・ローは首になりフランスから去ります。

諸説色々あるものの、その後のジョン・ローの消息は不明となっています。一説によるとジョン・ローの最後は浮浪者のような姿で路上で亡くなっていたと言われています。

金貨は実質的に半分没収になり、ミシシッピ株も暴落し、ミシシッピ株式会社は破綻したのちインド会社に改組し王立銀行と合併したそうです(国債と株券を交換していた国民は価値のないミシシッピ株を借金して(当時ローンでミシシッピ株が買えた)買った人も多くいたため全財産を失うばかりか、借金だけ残る人も沢山出てきてしまいました。

ちなみに、王立銀行フランス銀行になりECBになってます。

フランス王国は無茶苦茶だなと感じると思いますが、これらの事から民衆が王族に対して不信感と怒りが蓄積し将来のフランス革命に繋がっていきます。

これが、ミシシッピスキームとミシシッピバブルの歴史です。

このミシシッピ計画、何かに似てると感じませんか?

勘のいい人は気付いたでしょう。

そうです。日本です。

今後、このような事が起きる可能性を留意しておく必要があるのが

今の日本の現状です。

必ずこうなるというものではないですが、留意しておくべきことなのです。

今回はこのような現象を金というフィルターを通して考えていきましょうというnoteになります。

ちなみに、ジョン・ローはヘリコプターマネーの元祖とか管理通貨の先駆者などと言われています。

ジョン・ローやミシシッピバブルの事をもっと知りたいという方は、高知大学の紀国正典氏の論文、ジョン・ローの国家破産・金融破産論を読んでみると良いと思います。

無料でダウンロード出来ますし、面白いので読んでみてください。

金の価格が上昇している背景

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