令和5年度の公立高校前期選抜国語解答速報

本職ではないですが、毎年趣味で更新している解答速報です。よろしくお願いします。

●総評


令和5年度の公立高校前期選抜は例年通り、現代文2題、古文1題の出題でした。出典はそれぞれ『両義の表現』(李禹煥)、『言語存在論』(野間秀樹)、『沙石集』で、古文に関しては例年通りの難易度である一方、現代文は昨年に続き難解な出典となった。現代文に関して、文章量は大問1,2ともに2000字前後で例年どおり、またジャンルも芸術論、言語論と前期入試では比較的よく出るものではあるが、それぞれ抽象的な語句が多用されていたため、日ごろから一文一文を丁寧に読み取り、本文内容をかみ砕いて理解する習慣がついているかどうかで差がついた印象。古文に関しては前半2行で阿闍梨の特徴がしっかり踏まえた上で読み進めたい。

令和と設問ごとの分析【第一問】


(1)空欄補充
「そしてようやく現代美術になって」とあることから、空欄の内容は前段落にあると見当がつく。空欄直後に「はずれた」とあるところから、中世から近世にかけて生まれたものと考え、それに合致する語句を探せば該当箇所にたどり着けるため、ここはスムーズに解答したい。ただし、機械的な解法と先入観から「四字の漢字」を探すような解き方をした場合、思わぬところで時間がとられたかもしれない。この問題で「存在様式」や「独立空間」など、抽象的な四字の言葉を選んでしまった受験生は中期選抜までに、意味内容を意識した読解の練習を重ねたい。
(2)漢字の読み
「素材」はそれぞれ小学5年生、4年生で習う漢字である。ここは確実に得点したい。
(3)語句の知識
過去十年の前期選抜・中期選抜ともに頻出の分野である。いずれも難しい言葉ではないが、選択肢を文脈当てはめて解けるようには作られていないため、言葉の意味をしっかりと押さえておく必要がある。
(4)内容説明
「古い時代の絵」が前段落の何を指しているかを明確化することがポイントになるような問題ではあるが、設問中に「原始時代から農耕時代の絵の特徴」とあることから、難易度はそれほど高くない。中期選抜に向けては、ア、イを選んだ人は設問要求を正確に把握する練習を、ウを選んだ人は選択肢を要素に分けて比較する練習が効果的だろう。
(5)内容説明
「両義性」という言葉から、あらかじめキャンパスに関する2つの要素を明確にできたかがポイント。本文によればキャンパスは➀れっきとした物体であると同時に、②こちらの精神や感覚を刺激する不思議な非物質性を帯びると書かれている。選択肢がいずれも「~持ちつつ」とあることから、上記の要素で各選択肢を吟味すればよい。中期を見据えればイ、エを選んだ人は選択問題において設問要求に基づき本文から要素を拾う訓練を、二択に絞ってウを選んだ人は、要素中の語義を正確に踏まえる訓練を積むことが効果的といえる。
(6)動詞の活用
前期選抜において、過去5年出題されている頻出分野なので確実におさえたい。
(7)助動詞「う・よう」の識別
こちらも基本的な内容であるため、確実に得点したい。
(8)漢字の書き取り
「層」は6年生で習う漢字である。ここも得点したい。
(9)➀内容説明(記述)
設問の意図を理解し、要素を的確に広い集める必要があるため難しい問題であるが、受験生の読解力を試すことができる良問である。まず、会話文の書き出しから、最終段落の内容であることを特定する。次に空欄直前に「キャンバスの『在りよう』と『用い方』はそれぞれ」と書いてあることから、キャンバスに関する二つの要素を記述に含まねばならないことをおさえる。「キャンバスの在り方と用いかた」とは「➀どのようなキャンバスを②どのように使うか」であるため、それぞれ「有形無形のキャンバス」「意識的無意識的に用いる」という内容を押さえて解答にすればよい。
(9)②抜き出し
「人間がそうであるように」という会話文表現から本文の人間と比較して語られている部分にたどりつくことができれば、スムーズに解答できたはずだ。

●設問ごとの分析【第二問】



(1)内容説明
傍線部の指示内容「それ」が指す内容を明らかにすることがポイントである。「それ」=「自らの言語の起源」であることを押さえられれば、「自分は言語をいつどのように習得したか」と書いてあるアを選べる。この問題でこの設問を間違える可能性としては➀指示語を明確にしていない、②言い換えが取れていないが考えられる。中期選抜までに自分がどちらであるかを明らかにして、対策を練りたい。
(2)文節の関係
基本的な知識を問うているので、ここは確実に得点したい。
(3)内容説明
選択問題であるか、第1段落の例を踏まえ第2段落の内容を確実に理解してあることが求められるためやや難しい、第1段落冒頭三行から、「ことばは時間をかけて繰り返してきたことで得られたものである」という内容を押さえ、それが記述されたウを選ぶ。ただしアの選択肢がやや紛らわしいため、アとウの2択で間違えた人は、中期選抜にむけて両者の選択肢を見比べて違いを言語化する練習をするとよい。また、を選んだ人は本文が理解できていない可能性が高いので、中期選抜に向けて、やや抽象度の高い文章を用いて、段落ごとに内容をまとめる練習をしてほしい。
(4)熟語の構成
接尾辞=「的・化・性・然」のように覚えていた受験生は「季節感」が選べなかったのではないか。機械的な解法ではなく仕組みを意識した理解が求められた。
(5)漢字の読み
中学2年生で習う漢字である。それほど難しくはないため確実におさえたい。
(6)段落の関係
全体的に文章が難しいため解きづらかったかもしれないが、第8段落冒頭「さらに言えば」に注目したい。
(7)➀内容説明
第5段落に「あらゆることばは社会的な存在である」と書かれているので、ここの内容を押さえればよい。ただし内容を理解することが難しい上に選択肢も難解なため、多くの受験生が苦戦したと考えられる。「そしてことばを発する営み自体もまた、社会的である。それも単なるたちの交換のような社会性でなく〈教える〉〈学ぶ〉といった契機を内包する~」という部分から、「言葉を発することそのもの」が「〈教える〉〈学ぶ〉きっかけとなる」という内容をおさえたい。
(7)②空欄補充(記述)
会話文空欄の直前にある「人々がたとえ同じことばを使っていても」と「言葉の意味が」および、空欄後の「人がそのように異なるから意味の振幅は必然的」に注目すると、空欄には「同じ言葉を使っていても、その意味に差が生じる理由」が入ると見当がつく。こうした内容を想定しつつ、第7段落の内容をまとめる。空欄補充問題に関しては記述にせよ抜き出しにせよ、空欄に入る内容に見当をつけて要素を探す練習が必要である。今回この問題に戸惑った人は、中期選抜に向けて、空欄に補充する内容に見当をつける訓練を重ねたい。

●設問ごとの分析【第三問】



現代語訳
常州に、観地房の阿闍梨という真言師で、流暢に説法をする者がいた。ただし、人の気持ちを考えることのない長説法を行うものであった。あるとき、堂供養の導師を務め、阿闍梨はいつものように長説法をしたのだが、その時は説法の後に音楽と舞が用意されており、それが童舞だったもので、とりわけ見物にきた男女が多かった。説法が終わるのを待っているのだが、あまりにもが長く、日も傾いてきたので、見物の者たちは口々に、「いやいや、説法は終わったか。」と問うたり、「この災い(のような長説法の阿闍梨)め、まだ高座で説法をしているぞ」などと返したりと、人々は言いあっていた。そうこうするうちに日が暮れてしまったので、「とにかくもう舞ってしまえ」といって、舞楽だけやってしまった。
「聖人には凝り固まった心などない。ただ万物の心を自らの心とする」といって、すべてにおいて他者の気持ちに重きをおき、その時その状況に合わせなければならない。仏法の道理を聴きたいと思う人々が集まる機会には、心静かな道場などでは丁寧に説くのがよい。しかし、今回のように舞楽が用意された供養の場ではそれに適した心があるべきだった。
『法華経』には、「仏法に対する深い思いがある者にも、口うるさく説きすぎてはならない」と書いてある。素晴らしい内容であっても、人が飽きる程になってしまえば意味がない。とにかく聴く者の心に合わせるべきではなかろうか。

(1)主語把握
「長説法」をするものという特徴的な人物を選べばよく、それほど難しい問題ではない。この問題を落とした人は、中期選抜に向けて古文では主語把握を意識した読解の練習を行いたい。
(2)現代語訳
「已然形+ば」という形から「~ので」という答えを導くことができるが、こうした事項を知らなくとも、説法が長すぎて日がどうなったのかと考えて正解にたどり着きたい。
(3)現代仮名遣い
基本的な問題であるので、「ただ舞へ」の現代仮名遣いは確実におさえたい。後半の選択問題に関しても、「思ふ」「をかし」「漂ひ」が分かりやすいので、消去法で正解にたどり着きたい。ちなみに選択肢がそれぞれアおくのほそ道、イ古今和歌集の仮名序、ウ枕草子、エ平家物語となっており、「日々の学校の学習における丁寧な取り組み」を重視する姿勢がうかがえる。
(4)➀内容把握
本文の全体内容を把握している必要があり、取り組むのは難しい。第1段落には聞く者の需要を無視して自身の説法をし続ける阿闍梨が描かれる。また、後半で相手に応じた対応の必要性が述べられていることから、自分本位ではいけないという内容の選択肢を選ぶ。
(4)②内容把握(記述)
文脈を押さえた上で「人の心を守り」と「機に随ふべし」を現代語訳する。Cは前のエピソードをもとに、Dは直後の具体例をもとに解答する。
(5)③内容把握
「目出たき事も、人の心に飽く程になれば、益なし。」を現代語訳した選択肢を選ぶ。ここまでの文脈がとらえられていれば解けただろう。

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