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大先輩の偉大な手

「彫ってみなさい。俺が漆塗ってやるから」
それがキッカケでした。
大先輩がアートの世界に私を連れ戻してくださいました。

現在、私は民藝品店で働いており、全国のよいものの近くで日々を過ごしています。贅沢な環境だと思います。

デザインの専門学校へ親に通わせてもらい、デザイン事務所に就職するも、2年ほどで辞めています。
それ以降、落書き程度で描く事はあったものの、仕事では勿論、私生活でもデザインから離れていました。

そんな私が縁あって40の年になったところで大先輩からのお誘いを受け、またアートの世界に少し戻って来た事を、母がいちばん喜んでいます。

自分でも静かに興奮していて、緊張もありましたが、見栄を張ってもどうにもならないので「格好つけないで、まずやってみます」と手を動かし始めました。

縁とは不思議なもので、こういう事もあるんだなと他人事のように思うと同時に、チャンスの神様の前髪を掴んだのかなと、大げさかもしれませんが私の人生に確実に彩りを添えてくれるであろうと確信したのです。
自分から進んで「やりたい」と言うのと『やってみなさい』とチャンスをいただいてから始める事は、やはり違うものだなと肌で感じました。

しかしながら、彫り始めた今では短時間でも集中して彫りたいと思うようになりました。
仕事がある日でも、眠る前に手を動かし、眠くなってきて集中力が無くなると敷いてある布団に即、横になります。

「学んで自分が身につけたものは誰にも取られることなんて無いんだから、勉強するのよ」と大先輩はよく言います。
手に入れた知識は、決して人に奪われない。
それを考えると、娯楽や消費へ時間とお金を使うのではなく、自分自身を成長させてくれるものに投資をし、勉強し続けていくことこそが人生を充実させられる答えなのだと思います。

遠い過去に身に付けたものが、私の中でずっと生き続けていて、当時とはまた違った感覚でものづくりを出来る事に自分でもワクワクしています。

遅いなんてことは無い。
いつからだって始めることが出来る。
なんて懐の深い世界だろうと思いました。
自分が楽しんでいれば、おのずと全て楽しくなる。
楽しいだけじゃない、厳しい面もある世界だと言う事は、デザイナー時代に身に染みています。だからこそ、恐れずに制作していきたいと思うのです。

偶然、このようなキッカケをいただいた事に感謝をし、粛々と毎日何かしら作り続けたいと思います。


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