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昔なじみが世界レベルになっている

大学のころの昔なじみが、今や世界レベルで認知されている。
これはなんかすごいことだ。
ぼくの学生当時、もちろん彼らはその界隈ではかなり知られたものだった。
とてつもなくびっくりしている。
まさか、PCRやらmRNAやら、そんな言葉が世間一般に広がるなんて誰が思うだろう。

ぼくの学生時代の専攻は応用生物学だ。生物の分類やら、動物のことやらはもちろん、微生物のことや、DNAやらたんぱく質やら、つまりはバイオテクノロジーと呼ばれるものを学んできた。
その時に、mRNAを使ったり、PCRという手法をさんざん使ったりしていたのだ。
その業界のみでの話であって、知っている人は知っているけれどその分野やら業界に関わりない人は一生知ることもないだろう、と思っていた。
ところが、今やそれはその業界どころか、マスメディア、なんだったら近所での世間話にも登場するレベルにまで広まってしまったのだ。
こんな事態になると誰が予想しただろうか。

ちなみにPCRというのは「polymerase chain reaction」の略称で、DNAの特定の配列を増幅させる手法である。

なので今よく出てくるPCR検査というのは、

感染が疑われる人の鼻腔の細胞を採取

PCR法で細胞中のDNAを増幅

ウィルスDNAが検出された⇒ウィルスに感染している:陽性
ウィルスDNAが検出されない⇒ウィルスに感染してない:陰性

ということをやっている。
ちなみに、なんでわざわざDNAを増やすのかというと、あるのかないのか検出することができるところまで増幅させる必要があるため。

もう一つ、よく出てくる言葉、「mRNA」は「メッセンジャーリボ核酸」の略料。
すごく簡単にいうと、
体の機能(骨とか筋肉、抗体など)を作ったりするときに、生物の設計図(DNA)からの指令を体の各器官に伝達する(なのでメッセンジャーと呼ばれる)役割を持つ物質。

例えば体の中にウィルスが入ってきたとしたら、通常は、
DNAが「ウィルスを撃退するぞ!」と、mRNAに「体に抗体を作らせろ! やり方はこうだ!」と抗体の作る方法が書かれた書類みたいなもんを持たせる。
その書類を持ったmRNAが、抗体を作る器官に書類を渡すと「じゃあ抗体作るか」みたいになってウィルスが退治される。

mRNAワクチンというのはいわば、「予行演習」みたいなもの。
襲ってくるウィルスがどんなものかわかっているので、「抗体の作り方が書かれた書類を持っているmRNA」を人工的に作り出して、それを体の中に入れるとその書類に書かれた抗体がつくられる、という仕組み。

とてつもなくざっくり書くとそんな感じなのだけど、別にその手法そのものが画期的なわけではない。
ぼくが大学にいたのはヒトゲノム計画が終わった直後くらいだ。
その手法は確立されていて、実験室レベルでは当たり前に使われてはいたものの、生活にすぐに役立つほどには発展していなかった時代だ。
それが今やパンデミックに対抗するために使われている最先端の技術が、その昔慣れ親しんだものがまさに使われているその現実になんだか驚愕している。

たった20年程でいまや誰もが(言葉としては)知っているものになってしまった。
世の中がどう変わるかなんて、わからないものだ。

もちろんそれが、満を持して、ということはある。

テクノロジーの発展で、世界、宇宙のいろいろなことが驚くべき速度で解明されている。

それは生物の分野でも同じ。

生き物が持っている性質や機能、そして他の生き物や地球環境とどんなふうに関わっているか、などなど、ぼくが学生の頃よりはるかにわかっていることが増えている。

その「わかったこと」をプロダクトに活かしたり、性質や手法を人間社会に還元してみたり。

そういう意味で、サイエンスからの恩恵というのはこれからますます増えていくように感じる。

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