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ぼくなりの人間関係の作り方

「営業で売り込むのは商品じゃない。その人自身だ。だから人間関係をしっかりつくれ」
営業をしているとき、よくそんな言葉を聞いた。
今ではその言葉の意味はそれなりにわかっているつもりだけれど、会社員になりたてのころ、それを聞いてぼくは絶望した。
陰キャ根暗で人づきあいそのものが苦手のぼくに、どう「人間関係」をつくれというのか。

その疑問をぶつけるとたいていこんな言葉が返ってくる。

「飲みに行け」

普段の仕事時間では「ビジネスマン」の顔をしている取引先も、アルコールが入れば人として付き合うことができる。そうして相手のことを知り、自分のことも知ってもらえるのだ。
という意味合いだろう。それはわかる。
だが、ぼくは下戸だ。そして人とは狭く深く付き合うのが好きなので、仕事だからと言う理由でしたくもない食事を共にする、なんてことは可能な限りしたくない。

「じゃあ、ゴルフに行け」とも言われる。

ゴルフというスポーツは誰でもプレイすることができる。そして、プレイ中の態度だけではなく、一緒にコースを回るときの様子などからその人となりを知ることができる。仕事では見られないその人そのものを、ゴルフを通して見せ合うこと、ともに同じ目的の時間を過ごすこと。それをすることで仕事でのつながりを離れて人間としてのつながりができる、ということだろう。
わからないでもない。

けれどぼくはゴルフをしない。これまで一回もやったことがない。
そもそもぼくは球を使った競技が苦手だ。やるんだったらマラソンとか、山登りとか、そういうのが好きなのだ。
そもそも、プライベートな時間というのは自分の好きな人と会ったり、自分の好きなことをやる時間だ。仕事の時間外なのにわざわざ付き合いたくもない人と付き合う義理などない。

という体たらくなのだ。基本的にぼくは多くの人がセオリーとしていることで人間関係を作るには向かない。「苦手だろうがなんだろうが、それが手っ取り早いんだからやればいい」と言われたって自分がやりたくもないものは仕事だろうがなんだろうがやりたくない。

とはいえ、確かに「ビジネスをする上での人間関係」というのは肝だ。作らない、というわけにはいかない。
まずはできることから始めよう。

仕事で関わる人はたくさんいる。取引先の人でも少数ではあるけれど気が合ったり、もっと関わりたいなあ、と思える人がいる。
いろいろな人とまんべんなくというのはイヤだけど、「付き合いたい」と思える人と時間を過ごすのはぼくにとっても望ましい。

一緒に食事をするし、仕事でも関わる機会を増やすようにした。
こういう人とは仕事をしていて楽しいし、力になりたいと思えるので、仕事でも優先するし、特別に力を入れたりする。えこひいきと言われるかもしれないけれど、仕方がない。
けれど、この方式はとてもいい効果をもたらす。

自分のために力を貸してくれる、そんな人は信用が置ける。それは他ならぬぼく自身がそうだからだ。その人のために、と思うことでより準備に力を入れ、そのことが実力を底上げすることにつながる。さらには、力を尽くしたことを評価してくれて信頼関係が深まっていく。

そして関係が深まると、今度はその人の仲間を紹介してくれる。信頼できる人が信頼する人は、自分にとっても信頼できる人だ。そうすることで人の輪が広がる。しかも「ただ知っている」というレベルではなく、「この人が信頼している人ならば」という生きた関係になる。
「類は友を呼ぶ」というやつだ。

そうしているといつの間にか味方になってくれる人が増えていく。積極的に飲みに行くわけでも、接待するわけでもない。けれど、ちゃんと「人間関係」が作られる。

この方法は時間がかかる。自分の畑を耕さず、好きな人の畑に行って、その人の畑をひたすら耕すようなところがあるからだ。
初めは自分の畑から実りを収穫することがなかなかできないから、他人からは「自分の畑を耕さず、種をまきもせず、あいつは何をやっているんだ」とみられがちだ。
けれど、誰かの畑を耕していると、ある時「おすそ分け」してもらうことがあったり、「じゃあ、君のところの畑に行って手伝ってあげるよ」ということにつながる。
しかも、その手伝ってくれる人というのはぼくよりもずっと畑についての知識を持っている人だったり、自分のところで採れた種を分けてくれたりもするとても心強い助っ人だ。
課題が出てきたら「じゃあ、詳しい人を紹介するよ」なんてことにもなる。
しかもそれは一緒に働いて楽しい人ばかりだ。こんな最高の人づきあいの仕方があるだろうか。

確かにぼくは王道には乗れない。むしろ乗りたくない、いくら整備されていようがそこが苦痛なのだから。整備されていない道を歩いていくのは大変だ、時間もかかる。けれど、裏ルートには王道では手に入らない隠しアイテムやお助けマンがたくさんいて、いつの間にか王道を行くより早く目的についている、なんてことがある。

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