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[初心者向け]藤井五冠の序盤構想をわかりやすく解説!!

△4一飛まで。普通は△5四銀として先手と同じ形を目指すのが普通だが、それをしなかったのが藤井五冠の工夫だ。

手前が先手の豊島九段、奥が後手の藤井五冠。先手が指した手を▲、後手が指した手を△で表す。



藤井五冠が△4一飛と指したところだが、これってどういう意味?となると思う。それを今から説明していこう。


知っておいてほしいのは、後手が△5四銀~△3一玉とできれば先手からの攻めを完全に封じられるということだ。


仮想図 ▲4五歩と仕掛けても数が足りない。こうなると先手から打開するのは不可能だ。

実際に▲4五歩と仕掛けてみる。▲4五歩△同歩▲同桂△同銀▲同銀△同飛

先手は桂損してしまった上に次に△4八飛成がある。これは大失敗だ。

もう一度仮想図を出す。

仮想図 この局面になれば先手から仕掛けることが不可能になる。

つまり、後手の藤井五冠の狙いはこの局面に誘導することで先手の豊島九段の攻めを封じて千日手(引き分け)に持ち込むことである。先手が無理攻めをしてきたらカウンターをしようというわけだ。



その前に先手は何とかしたい。具体的には、▲4五歩と戦いを起こしてみたい。

▲4五歩 △5二玉 ▲3八金

後手が飛車を4筋に振ってきたら▲3八金とするのが部分的な手筋。次の▲4四歩△同飛が金取りにならないため▲4五桂と跳ねることができる。



以下進行の一例を紹介する。軽ーく見てOK。


△4五歩▲同 桂 △4四銀 ▲4六歩 △4三歩 ▲2四歩 △同 歩▲同 飛 △2三歩 ▲2九飛 △5四歩 ▲4八金 △8一飛▲7九玉 △3三桂 ▲1七角


敵陣を睨む好手。狙いがぼんやりとしているが後手陣を牽制している。


先手の桂と角が5三の地点を狙っている。すぐ近くに後手玉がいるので、非常に危険な状態である。こういう時は、玉を安全な場所に避難させるのがセオリーだ。


例えば、ここから右玉に組み替えようとしたらどうだろう。


△6一玉 ▲6五歩 △同 桂▲同 銀 △同 歩 ▲5三桂成 △同 銀 ▲同角成 △同 金▲7三桂

先手は駒損だが、後手陣は飛車にめちゃくちゃ弱いため十分成立している攻め。△6一玉の瞬間に猛攻されてしまうため、右玉への組み換えは成立しない。

具体的な進行例は一旦ここで区切っておく。ここで、最初の図に戻ってみよう。


△4一飛まで。普通は△5四銀として先手と同じ形を目指すのが普通だが、それをしなかったのが藤井五冠の工夫だ。


後手の理想は次の2局面を目指すことだ。

仮想図⑴ 繰り返しになるがこの局面になると先手からの打開が不可能だ。


仮想図⑵ この局面も後手の勝率(千日手含む)がいい。


これと似たような構想は実は他にもある。


次に△4一飛とできれば仮想図⑵になる。

しかし、▲4五歩△同歩▲同銀と仕掛けられてしまう。

図1 詳しい手順は省くが、この局面になった時にすでに後手の勝率がよくない。

こういうのは「△4四歩が争点になってしまう」という言い方をする。つまり、△4四歩と突いてしまったために、先手に戦いを起こされてしまったわけだ。

では、△4四歩と突かずに△4一飛はどうだろう。

今度は▲4五歩としても歩がぶつかっていないので何ともない。後手は次に△4四歩と突く狙い。

しかし、▲4五桂でこれも先手が攻める展開だ。

図2 これも詳しい手順は省くが、やはり後手の勝率がよくない。

つまりどういうことかというと…。

この局面は後手に様々な手が考えられるが…。


△4四歩とすると▲4五歩△同歩▲同銀と仕掛けられてしまう(図1

△4一飛とすると▲4五桂から仕掛けられてしまう(図2

ので、仮想図⑵になる前に先手からガンガン攻められてしまうというわけだ。後手は先手からの仕掛けを封じてしまいたかったのに、これでは不満だろう。


このジレンマの解消にチャレンジしたのが、藤井五冠というわけだ。

ここで冒頭の図に戻る。

後手は△54銀と上がる手を省略することで、△4四歩と△4一飛を両方指すことができている。▲7九玉としてくれれば、今度こそ△5四銀と上がって仮想図⑵に合流させることができるというわけだ。

繰り返しになるがそうなる前に先手から▲4五歩と仕掛けたい。

この局面がどうなっているかが非常に重要だ。

この局面は前例が確か3局しかなく、勝率などもほとんどあてにならないため、この一局が角換わりの歴史を大きく動かす可能性もある。




ざっくりとまとめると、△5四銀と上がらないのが藤井五冠の工夫で、

飛車を4筋に回って先手からの仕掛けを封じたい藤井五冠
vsそんなことは絶対に許さない豊島九段

という構図になっている。

将棋を知らない人からすると難しすぎたかもしれないが、説明したのは角換わりの超最新形なので、わからなくても安心してほしい。序盤だけでこんなにも頭を使う将棋の奥深さを感じ取っていただけたらと思う。


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