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バイク乗りが奏でる”重低音の世界”


※ ZxToneチャンネル動画「SOUND -路上の雷鳴-」のコンセプト文です!
東の空が白々と明け始め
照らされた街が姿を現す
さあ行こうか
フルフェイスのストラップを締め
ライディンググローブを身に着け
KEYを右に45度ひねると
重低音がすべてを支配する
そこはもうエキゾースト-ノートの世界だ

重低音がすべての音を飲み込んでいく

ガードレールは共鳴に震え、
バックミラーが小刻みに踊り出す
フルフェイス越しに聴こえるエンジン音が
水温計の上昇とともに
徐々に滑らかに繋がっていく
吹け上がりは上々だ
エンドレスな反響に包まれ、
頬を打つ音圧を噛みしめる

一般人が生涯で耳にする最大の重低音は
“雷鳴”、つまりカミナリの音らしい
大空をつんざくその轟きは
鼓膜どころか山をも揺さぶる。
たかがバイクの排気音など
所詮、蚊の鳴く様なものだ
比べるべくもないだろう

身体に直接伝わる重低音が、心の奥底に染み込んでいく、、

しかし、単車乗り達は反論する
魂を揺さぶるエンジンの爆発音、
胸の奥深くに染み入るエキゾースト-ノート
あるときは優しく心地よく、
またあるときは激しく心を躍動させ
下半身から伝わるピストンの鼓動とその轟音は
生命の脈動を、
生きているという実感を
深く心に刻み込む
それは唯一無二だ。

リスクと風の中というステージ上で聴くこそ、この身に響くのかもしれない

音楽も同じだって?
確かに序章もサビも、
演奏者次第なのは変わらない
だが、単車乗り達が耳にするサウンドは、
後方へと吹き飛ぶ固いアスファルトの
すぐ直上で
ヘルメット越しに聴き取る音の響きは、
この身の躍動とリスクと
風に抗う疾駆の中にのみ、
存在するもの。

決して他人と共有することのない
孤独で過酷なブルースだ
無論、二度とリピートは出来ない。

駐車スペースに単車を滑り込ませ
イグニッションを左へ戻し
ピストンの鼓動を停める
回転計の指針がストンと落ち込み
一瞬の静寂、時が止まる
リアルな無音、無風、そして静寂
あらためて、未だ収まりきらない
自身の胸の鼓動に気付く。

素晴らしい映像と素晴らしい音、まさに上質な映画のよう…

かつて、旧日本海軍に
「雷電」という名の戦闘機があった
電光石火のインターセプター(要撃機)
まさに“雷の如く”だ
敬意を表し、自身に重ねる。

聞こえるか、
平和に裏付けされた妥協の共鳴を
感じるか、
近づく嵐の不穏な遠吠えを。
パイロットのように大空高く
羽ばたくこともなく、
無機質な大地を
這いずり続ける単車乗り達よ
不屈の精神と排気音をこの身に纏(まと)い
我らいざ行かん
己自身が雷鳴となり、
操る鉄馬が嘶(いなな)くサウンドを
路上という最前線で、響かせろ

そして、旋風と地響きの中で
確かめるがいい
世間を飛び交う薄っぺらな雑音に
惑わされていないか?
音の焦点と、生き様は
ブレていないか?


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