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風起隴西〜五仙道の大祭酒と共に Part3

再会

郭淮様のお出まし
ーーーと言っても
私は三国志は門外漢なため
大好きな郭京飛さんだ!!というキモチだけ。

《琅琊榜弐》では元啓推しだったため、郭京飛さんは彼を唆し利用する濮陽纓役、すてきなお声とお芝居に痺れた。

魏がわの諜報機関の真のボスとして登場
魏での陳恭を操っていたのは彼だった
その隊列の中に黄預のすがた。

フードつきの黒マントというそそる姿の黄預
敗残の兵というか落ち延びてきた風情がかなしい

フードから現れたその美貌
甥に友人として紹介された
フードを取るさい長い腕がべんり
下していた長髪はきっちり結われている
一段と男前が上がる

これが黄預ーーー
甥である郭剛は感慨を持って迎えたろう
もう還らぬ人となってしまった糜冲、そして彼を任務のために非情にも殺した陳恭ーーー

伯父と甥が行くのを暫し見てから後に続く
この決まりっぷり!
暁晨の美しさとは
立ち居振る舞い、所作だけでなくその佇まいだ
『好男儿』のころはフニャフニャクネクネしていたのに
いつのまにこんなに決まる空気を纏いはじめたのか

陳恭は蜀がわの間諜として魏に単身赴任していた間に、父親の死の真相を知らされ、逆に魏の間諜になり蜀の司聞曹の中核を握り、あわよくば馮庸のポストに就き蜀の情報は何でもかんでも魏に筒抜け!
という状態にしたい郭淮様の格好の鴨にされたのだった

そのせいで
郭剛は糜冲を亡くし職場から失脚し
黄預は大事な教団の活動拠点と信者たちを失くしたというのだ
めちゃくちゃだ

カリスマ教祖様だったはずなのに
今やわずかな同志とともにせめて一矢報いて
また立て直しを図らなくてはならない黄預

すまないねえ
陳恭は魏がわの間諜だったのだ
魏がわの仲間だと思い招いたら蜀の間諜で
蜀軍にめちゃくちゃにされたと怒ってるだろう
それみんな私の筋書き通りに陳恭くんがやったことで
めちゃくちゃになったと思うだろうが
じつは成功なんだ

自分は魏に潜んでいる蜀のやり手の諜報員白帝でにせの情報なんか送ってない!蜀がわのゴカイを解かねば殺される!
そのためには糜冲は邪魔だから殺す
五仙道に潜入して魏がわの指示通りに動きながら魏の二重スパイ燭龍を見つける
蜀の武器の設計図を盗む
でも蜀の間諜なんだから設計図は蜀に戻す
その功績でゴカイを解き燭龍を捕らえ重要ポストに就き
魏がわの指示通りこれからは魏の間諜として生きるーーー
ここまでがここまでの陳恭の立場と任務と考え

こんな頭が混乱する遊園地みたいな役を演じた陳坤殿下はさすがの陳坤殿下!
年齢不詳の不老の外見
ダダ漏れる色気で両方の陣営の者たち、視聴者を籠絡し
怪しさと正しさ両方を的確に表現する
色んな意味で陳坤殿下にピッタリの
陳坤殿下しか無理な役だった

方や野望に燃えているのだが
めちゃくちゃピュアで
疑い深いと評判なくせにすぐに信じてしまう黄預
まさに新興宗教なんかに入信し
布教に邁進する教祖の素養充分

陳恭許すまじ、と血圧を高めた黄預を嗜める郭淮様

何も知らずに信じたせいで酷い目に遭わせてごめんよ
でもぴーしゃがね、約束されたのだ
きっと五仙道を国教にするって
それで水に流してよ、ってね

ーーー
ホラまた信じる!

そんなピュアな野望だから騙されるんだって
懲りてない

だから陳恭に対するウラミは忘れて
目の前の任務に集中してほしい

さすが若くして教祖になっただけあって
純粋で勤勉
言うならば野心じゃなくて夢じゃ?
心から心酔する五仙道への愛がもたらした夢
その夢のために戦うの

東呉がわと西蜀がわに兵を用いなければならない郭淮様は少しでも手駒がほしい
どれだけ死んでも心も懐も痛まない五仙道信者は4000人

人数を言ったあと
ふ、っと何かに思いを馳せる黄預

大打撃ーーー目の前の郭淮の作戦で陳恭が動いたせいで被った被害、尊い信者の命と
30年間培ってきたもの
失った打撃にまだ心が癒えていない
その犠牲を無にしないためにも
悲願を成してみせる

計画は順調なんだが
陳恭の正体がバレたらおじゃんになるので
邪魔な義兄弟を殺させるのだ

"奴は憎っくき教団の仇ですよ
どーなろうと私は構わないんですが"
ウラミは忘れる、と先程心に刻んだばかりなのについ本音が出る純粋な黄預

これだけ仕込みに手間と時間をかけたんだ
陳恭は重要な"駒"
信用できるかどうか試す
そのおつかいを頼みたいのだ

"猛毒仕込みの矢
これで義兄弟を殺せと命じろ"

これほど利用しておきながら
それでも信用できるか測るためにまた辛い選択をさせる
信ずることと欺くことと
裏切ること騙されることーーー
間諜とは
大義のためとはいえ
そこまでされねばならないのかーーー

黄預は思った
憎っくき陳恭に辛いことをさせるのは楽しそう
もし嫌がって拒否れば
それを理由に殺してもいいーーー
しかし
郭淮様も黄預も大事なことを忘れていた

陳恭は陳坤殿下であることと
主人公であることだ
主人公は決して悪事は働かない
主人公の役目とは
悪事に心を痛め愛する女を命懸けで守り
自らの苦悩に同情してもらうこと
陳恭は"裏切る"
義兄は殺さず守り
愛する妻に恥じない選択をする
主人公を殺すことはできないのだ
死ぬのは
黄預の方なのだーーー

すっかり司聞曹曹掾に落ち着き
日々仲間らから機密を聞き放題な陳恭
家に戻るとただならぬ気配
監督らスタッフが拘ったシンプルなカメラワーク、そして何もない家
戦乱続きのこの時代
モノなどないし必要ない
中国ドラマにはあまり見ない
そして私たち日本人には非常にしっくりくる引き戸だらけの板間の家ーーー

聞き覚えのあるその特徴的な声
因縁の二人がまた出会うーーー
オレンジの着物を脱ぎ捨て、二つめのすがたを待ち侘びた黄預、第二ステージ。

白帝(蜀)改め燭龍(魏)となった陳恭は同じ目的の舟に乗る同志(のはず)
だからこそ再び出会ってしまった二人
いやー、まさか聖女、もとい、あの裏切り女は貞操でも私を裏切っていたとは
知らなかった
よくも騙したな
一度ならず何度も

対する陳恭も
女房を拷問により殺され恨み骨髄
よかったよ
黄預が紳士でなく翟悦を我がモノにしていたら
もっと恨まれていた

よく言えたな
貴様を許すものか
ただの女と私の夢
どちらが尊いものかーーー必ずぶち殺してやる

ここの二人の睨み合い
暁晨は陳坤殿下の美しい瞳に映る自分を見つめながら
呑まれぬよう必死で演技した
殿下の瞳には憎しみが燃えており
またその瞳にこちらの憎しみも湧き上がる
殿下の演技により自身も高揚し
共演する悦びに気絶しそうになるーーー
そう暁晨はこのシーンを振り返る。

汗を拭う小芝居はリアルだったりして
というのは
暁晨は陳坤殿下が代表を務める事務所の所属俳優であり
彼自身が陳坤殿下を非常に尊敬し崇拝している俳優だからなのだった

さまざまなドラマでひっきりなしに撮影所にこもっているのに
泣かず飛ばず
それが10年近くに及び
一時期俳優を辞めようかとさえ思い悩んでいたときにひょんなことから陳坤殿下と縁ができ移籍となった
当時の嬉しそうで
安心しきった彼の表情を見ると
ほんとうに英断だったと思える
私が出会い
痺れて俳優張暁晨に夢中になったのも
移籍してすぐの『皇帝の恋』に於いてだった

今回
こんな素敵で高尚な作品に出ることが叶ったのも
偏に陳坤殿下のおかげ
黄預を演じきり表現しきってみせる
そしてまた一段演技派俳優の階段を昇るーーー

黄預は嬉々として陳恭に辛い任務の話をする 

荀詡が燭龍に関してもうだいぶ突っ込んだ推理をしていると
こんなに内外に知られている

見るからに動揺し拒否し
理屈を捏ねて辞退しようとする陳恭
自分の身内はこれほど情をかける
しかし五仙道の信者を数多犠牲にした貴様を必ずや殺す

暁晨ならではの痺れる示し方ーーー
この毒矢で荀詡を殺し魏に忠誠を示すか
拒否して私に殺されるかーーー

"人を用いるのに信じられないとは"
貴様がそれを言うか
私を欺いておいて?

お前に逃げ場はない
間諜とは
そういう運命のもと生きねば死しか待つものはない
そうやって幾多の命を奪って来たのではないか?

薄暗い家の中の密談を終え
真夏の影の濃い外へーーー

だあーやっぱり騎馬すがたは惚れ惚れする❤️❤️❤️
このねー沓がまたいいのね
今回ブーツじゃないのがね

入ってくるこのポーズと一斉に立ち上がって迎える信徒が❤️❤️❤️
大河ドラマみたい❤️❤️❤️

こんなにちょっぴりになっちゃって…
各地にはまだ何千人か潜伏してるらしいけど
陳恭のせいで死んだ長老、蜀に御用になった長老…幹部クラスの欠員がつらい

最も早くに発表された海報が
ここの腰かける黄預だった
炎天下の外から来たために額にはまだ大量に汗をかいている
髪を留めている簪もすてき
エレガントでノーブルでーーー

諸葛亮が再び北伐を始めた、今が復興のチャンス!大祭酒の第一声は、やはり士気を高めるこのことば。

五仙道復興のためなら命も惜しまぬ
その嬉しい言葉ーーー悲願のために
これだけの数になってしまった信者たち

そのことばがどれだけ尊くありがたく
嬉しいことかーーー

黄預のひとみが煌めく
このチャンスを足がかりに再びーーー
曹魏の先鋒隊を仰せつかった

各地からかき集められるだけかき集め
皆でゆこう

やってみせる
この者らと共に
今度こそーーー

只管に

陳恭と申し合わせた"西郷の関所"ーーー

落ち着き払った風情で部下らに指示を与える
この雰囲気が出せるようでいてなかなか難しい
私がよく表現する
"張暁晨の佇まい"だ
もう全然死なない感じがしない
死ぬ香りがプンプン匂ってくる
今から毒矢で射られようとしている荀詡と真逆のこの感じ
慣れ親しんだ不穏な空気ーーー

関旗に対してだけ柔らかな表情になるのはなぜ

どこか
作戦前に高揚するというよりは物憂げな大祭酒
悲壮感が漂っている

荀詡荀詡って
何なんです?そいつの生き死にがそんなに大事なので?

荀詡などどうでもいいさ
陳恭を苦しめたいだけだ
陳恭を殺すことこそ我らが忘れてはならない大事だ

ただ
その禍根は郭淮から始まった
そして今回の作戦も郭淮からの指示
つまり
またもや五仙道を利用して
お前たちを犠牲にしてしまうやもーーー
それを懸念していたのだ

死ぬことがあろうと
奴だけは許さん
機会を逃すなよーーー

雪崩をうって関所に襲い掛かる五仙道の決死隊!
私が待ち侘びていた絶対にカッコイイに違いないシーン!

本編は奥から、動画は関所がわからの信徒たちを見ることができる
暁晨らは櫓を潜ると入って右手のスペースに溜まっていた
当然一度ではない

躍動感溢れる暁晨の乗馬すがた
今回乗馬シーンがあって嬉しかった
暁晨と馬にまつわるあれこれはぜひこちらで。

ここでも失われる仲間たちーーー

殿下と仲良く並んで荀詡が誘き寄せられるのを待つ。暁晨にとって至福のシーン。

こうして見ると、本編よりも周りの緑が鮮やかだったことがわかる。6月から7月だった。

自分が射らねば関旗が射てしまう、既に手は打ってあるはずなのにこの躊躇しまくる芝居!

荀詡は陳恭の所業に気づいているーーー
自分のことに悩んでいるようすの荀詡に
陳恭の最後の躊躇芝居が。

すっかり騙されている黄預
ここからの陳恭の怒涛の騙しうちがスゴかった
陳坤殿下でなかったら私は暴れていただろう

"さすがだな"
実はスローで見ると分かるのだが
陳恭が射た毒矢は左上から荀詡の左肩越しを掠め
実際に胸を貫いた矢は正面から飛んできた
予め陳恭から頼まれていた林良のGJだったのだ
また欺かれた黄預ーーー

信頼の果て

あーあ、…こんな大変な作業を五仙道にやらせて
本当にひどいよ
うちのぴこらも同情してる
陳恭の合図で蜀の補給部隊が通りかかったところを狙っていっきに放水させる作戦だけど
陳恭は魏がわと蜀がわ
両側から同じ作戦に噛んでいる

土砂降りの中ーーー

大祭酒さまは前の時も今回も
作戦を陳恭に委ね過ぎなの
それもこれも全ては"信頼"しているから
"信頼"しているし
"信頼"したい
人が持つ当たり前のそんな心を
大祭酒は捨てることができない

そういう意味では関旗の方が
もし今度も大祭酒さまを裏切ったら許さないからなーーー!
そんな義憤に満ちている

そんな彼の気持ちを嬉しく思う
今度こそ信じたい
自分が一度でも義兄弟にと思い信頼した弟をーーー

このときロケに使用した景色の前で
"夏を感じる瞬間"というタグに寄せて暁晨は投稿した
『夢魔霊蛇録』で二月の真冬から象山撮影所で過ごし
もう慣れ親しんだ仕事場なのに
今回ほどここの豊かな自然が良いと思ったことはなかった
素晴らしい場所だ、と。
どこまでも広がる田畑に囲まれ
大きく流れの速い河
岩が剥き出しの高く聳える山
海を擁する

この愛する象山の景色と共に撮られた本作は暁晨にとって本当に幸せに満ちた思い出でいっぱいだった。

堤防の作業は夜までかかり
ついに決行の時がきた

蜀軍どもを濁流の中に呑み込ませてやろう
五仙道がやり遂げる
ここから一息に復興させてみせる!

号令をかける関旗
しかしーー

降り注ぐ矢に斃れてゆく信徒たち

その場は騒然となり
関旗は撤退と号令するーーー

堰き止められた河だけが黒々と波打つ
これだけの作戦をーーー!

ああーーー、、、
ーーー本当にひどい
陳恭は許し難い奴だ

笑うしかないとはこのことだ
またしてもーーー
またしてもーーー

陳恭めーーー!!!

外に飛び出して愕然とする
周りじゅう蜀軍だ
まさに自分たちが倒すはずだったーーー

上等だよくもーーー!
蜀軍めかかって来るがいい
こうなったら一人でも多く殺して斬死にしてやる!!あまりのことに思わず我を忘れ半狂乱になってしまった大祭酒さまを関旗が止める
ここよかった

南無三
最早かき集めた仲間たちをも見捨て
敗走するしかない
何てことだ
何てことーーー

そのまま一晩中命からがら
脱出できた一握りの仲間と獣道を逃走してきた黄預

何としても国境へ
そうすれば何とかーーー

果たしてそこには

かの裏切り者がーーー!

待ち伏せしていた陳恭ーー

それでも
訊かずにはいられない
お前は
お前は本当に裏切ったのか
本当に
欺いていたと?
本当に
何もかも
何もかも⁉︎

"裏切った"だと?
何を言うーーー

裏切ってなどいるものか
最初から
一度でもお前らの側にいたことなどない
私は白帝
蜀の白帝なのだ

初めから
一度も
ーーー
何度も信じ
何度も信じたいと思い
信じようとした
それが

それがこのような結果を招いたのだ
なぜ信じた

信じる気持ちこそ
譲れないもの

五仙道復興を成し遂げる
そのために命をも賭す
それだけは貫いてみせる
信じたものを
命を惜しみ
捨てることなどできぬーーー!

"諸位道友ーー、"

"今陥此絶境
有死無生"ーーー

"当先
惨殺此不義之賊ーーー!!"

"諸君
この窮地から脱することは難しかろう

しかし死ぬならば、

この賊を殺してからだ"ーーー

黄預の矜持
そして信ずるもののために生きる純粋な心
仲間と共に
許せざる裏切り者を道連れにせん

しかしまたもやーーー

陳恭に辿り着く前に伏兵により斃されてゆく仲間たち
目の前で
関旗もあっけなくーーー

確固たる覚悟を持って陳恭は黄預に向かってくる
これがこの男の本性だ
今まで黄預には見せたことのないーーー

まったくふざけた夫婦だ
二人揃って騙し打ちとは
それともお似合いか

ここまで貴様らに蹂躙されると分かっていたなら
もっと惨たらしいやり方であの女を汚してやるべきだった
貴様らは間諜なのだ
貴様らが我が五仙道を滅ぼした

私の聖女に対する想いと真心
私の貴様に対する思いと信頼
それらを見事に踏み躙ってくれたなーーー!

逆恨みも甚だしい
許せん
貴様だけは許せない!!

気魄対気魄の応酬
黄預はここで背中を斬られるも

"助けを大勢呼べよ"

"貴様は私の相手ではない"

強気!
カッコイイ!!
流れるように剣戟を受け流す
渾身の一戟は陳恭が飛ばされるほど!

体当たり
細いからだでも力がある

しかし
一晩中山道を走り抜け逃げていた疲れが

陳恭に徐々に気圧されるようにーーー
ここで腕を斬られ愛刀を取り落とす

腿をここでーーー、

腰に佩いたもう一つの剣で迎え撃つ

陳恭の一手を封じるつもりが

防ぎきれなかった
その左胸に刃が食い込んでゆく

跳ね返そうとするも
陳恭の執念が黄預の意地に優った

何としても仕留める
陳恭の執念!!

何度も持ち手を替えより深く
より深くーーー

まるで翟悦と手を携え
黄預を殺さんとしているようだ
抗うも圧され

苦しげに呻きながらついに地面に縫い留められる黄預
そしてーーー

そしてついに
途切れていた息遣いが消えた
ひとみは無念を語るように陳恭を睨んだまま
地に落ちる両手
引き抜かれる刃

終わったーーー

傍らに黄預の骸
ここからカメラはひたすらに陳恭を追う

愛しげに剣を抱き
黄預の血を袖で拭いながら
"復讐は果たした
奴の血をお前に捧げよう
どうかこれで安らかに眠っておくれ"ーーー
そう願うのだ

陳恭は悦が黄預の拷問により死んでから
復讐だけを縁に終活をしていたというのだ
愛する妻を喪い
目的だった父の復讐は思っていたのとは違う事情だった
何のために味方を欺き敵を殺してきたのか
妻とて間諜でなければ死ぬことはなかったろう
ほとほと間諜稼業が厭になったのだった

そして
カメラは空へとパン・アップしてゆき
夫婦の愛の精神世界を描いてゆく
二度と地面にまだ斃れたままの黄預に戻ることはない
"復讐は成った"
ーーー
"陳恭は激闘の末に復讐を果たし妻の恨みを晴らした"
そう表現されるのみだーーー

結局
黄預の野望は主人公に徹底的に壊され蹂躙された
30年の潜伏期間中黄預が皆を率いて10数年
組織を拡げ武装し力を蓄えてきたはすがーーー

登場したばかりのころ
自身が育て上げた五仙道の威容に誇らしげに
余裕綽々で酒を呑んでいた黄預が懐かしい

全ては陳恭が潜んでから狂ってしまったのだ
義兄弟に、とまで望んだ黄預の信頼を
陳恭はドブに捨てた

その野心を
純粋さを利用され
最後は虚しく敗れ
何も成すことなく野晒しの骸となったーーー

放映後、黄預が翟悦を拷問し狂乱する演技はたいへんな評判となった
相変わらずあれは誰なんだ、というタイトルも乱れ飛んだが
半年前に話題となった人気作《雪中悍刀行》の洪洗象と同じ役者だ、と記憶していた人たちがかなりいて
そちらでも驚きと共に報じられた

洪洗象は大人しく天然で
癒しが服を着ているような静かな佇まい
髭を剃っただけではこうは変わらない
やはり暁晨の演技力あったればこそ

【换剧如换脸!演完《雪中悍刀行》再演《风起陇西》,愣是没认出来】https://my.mbd.baidu.com/r/TJPfI6GD6w?f=cp&u=dd0cc70245e78710&urlext=%7B%22cuid%22%3A%22g82Zagi7vilaaS8UgPBgi0iEva_OPH8BYa-g8liu2ugSi2a80uSC8gfX3a5dtWRar99mA%22%7D

【张晓晨:冲破自己设下的围栏丨人物】https://me.mbd.baidu.com/r/TJPm02ZMcw?f=cp&u=13a565ae7ca6f05b&urlext=%7B%22cuid%22%3A%22g82Zagi7vilaaS8UgPBgi0iEva_OPH8BYa-g8liu2ugSi2a80uSC8gfX3a5dtWRar99mA%22%7D

【同一个人《雪中悍刀行》到《风起陇西》换脸式演技,完全认不出了】https://ms.mbd.baidu.com/r/TJPFRffGYU?f=cp&u=176ba3343a3d3379&urlext=%7B%22cuid%22%3A%22g82Zagi7vilaaS8UgPBgi0iEva_OPH8BYa-g8liu2ugSi2a80uSC8gfX3a5dtWRar99mA%22%7D

あまりにもその記事がたくさんで
どれもその演技を絶賛しているものばかりだった
私は今回こそ
"来た!!"
と思った
これほどまでに話題になり
タグ付けされた微博が踊ったことはなかった
ところがーーー、

暁晨は放映中ドラマの撮影を兼ね自身と友人隋咏良の家族と一緒に海南島でバカンス三昧

撮影が終わると今度は上海と湖南省周辺でいくつか仕事をこなし

ARMANIの香水の品牌活動。本当に品牌人だったらどんなによかったろう…
馴れない笑顔笑
MICHAEL KORSの春夏コレクションにゲスト参加
MICHAEL KORSのチャリティー活動
珍しくフォーカスされた 何の仕事なのかなぞ
懐かしい上海の街をサイクリング
思い出の上海のカフェの様子を"ムーンリバー"の曲に乗せて。"ムーンリバー"は初めてオーディションに応募したさい歌った、暁晨にとってエポック的な曲。


まるで取材記事やグラビアなどが出る気配がない
そうこうするうち
たった24集しかない本作はあっという間に放映が終了してしまった
その後も今に至るまで何もない
これだけ演技が評価され話題となるなか
暁晨はデビューしてから最初の2年間を過ごした思い出の地上海をサイクリングやボードをしたりして巡った

アイドル歌手として黄色い歓声を受けていたあのときから15年ーーー
芸能の世界で模索し自答し努力しながら非常な遠回りをしてここに来た
ここまで来たーーー
並み居るベテランと実力派の俳優の中にあって
決して劣らない
独自の輝きを放つ俳優になって
堂々とその画面に在る
不幸な運命を辿った五仙道の大祭酒黄預として

本当に誇らしい
黄預の野望や夢
黄預の生きた人生は歴史に埋もれ
理不尽な権力者や為政者によって消されてしまった
その悲哀や虚しさを視聴者に確かに残した
そんな存在感のある俳優になれた
初めて訪れた上海の夜
迷子になって照れ臭そうに笑っていた青年がーーー

当時22歳

風は
まさに吹き去っただけだったーーー
ただ
日本で放映されたものを
盟友悦姐姐さまのおかげでリアルタイムで視聴でき
親友みぽりんさまのおかげでこのブログのための画像制作ができ
そのご好意に感謝しながら具に黄預を追ってみて
本当に嬉しかった
拷問シーンが話題になったことから
非道を絵に描いたような冷酷無比な下衆な役だったらと心配していたが
見てみた黄預は
本当に純粋で
汚いような行為はまるでしていない
ただただ陳坤殿下のせいで酷いめに遭わせられる不憫極まる役だった
それが嬉しい
そして最後のあの最高の決闘シーン!!
至福としか言いようがない

Part 1で書いたとおり
この決闘シーンがまさしく暁晨が撮った最初のシーンだった
陳坤殿下の演技がとにかく憎たらしく
すぐに入れた、とこぼしていた。
やはり殿下は凄い
殿下によって暁晨もいつもより更にその感覚が研ぎ澄まされ
レベルを上げることに成功した

ここに
私が中国ドラマに興味を持った五年前から愛読させていただいているブログをご紹介させていただきます。

《東京倶楽部》を書いてみえるmangoさまは非常な炯眼の持ち主で
以前『海上牧雲記』で取り上げていただいて以来、再び暁晨について書いていただけたのです。
この作品が発表されてからというもの、もしや今回は、と非常に楽しみにしていました。
その内容の精緻さと豊富なご経験がおありだからこそ書くこと適う確かな情報のボリューム。
今回再び暁晨についての評価を読むことができて、本編以上に感激しました。
mangoさま、ありがとうございました。

収官に寄せて

恒例の暁晨による、撮影当時や役に関する小論文です。
例によって、中国語を全く習ったこともない私の辞書引きによる意訳です。
ぜひアドバイスをお願いいたします。


黄預という星

"昨日《風起隴西》が最終回を迎え、悲しみの中に散っていった無数の星たちの最後の輝きを再び見て、その美しさに再び感じ入りました。
美しく輝き死んでいったそんな数多の英雄たちが生まれた混沌の時代。誰もが感化されました。
"生に歓びなく、死に苦痛なし"
波飛沫の煌めきは、英雄だけに許された美しさではなく、名もなき民のものでもあります。
黄預は終に翟悦の剣によって殺されました。
彼は無実であるのに本当に不当な扱いを受けました。彼は死ぬ間際まで陳恭を信じたくはなくても、協力せざるを得なかった。残された希望の欠片たちから希望を取り戻すために。
このような受動的な状況の中で、大祭酒はもはや当初のような誇りなど持てず、どんなに慎重を期そうと運命に逆らうことはできなかった。
並々ならぬ復讐心を持った陳恭によって彼の全ては台無しにされ、翻弄されるしかなかった。
"皆の者、今この苦境の中にあり生き抜くことは難しいであろう、しかし死ぬのは目の前のこの賊を殺してからだ"ーーーこのせりふは私の劇中で最も好きなせりふのひとつであり、僕がこの作品を撮影した時最初に口に乗せたせりふです。
あの決闘シーン、つまり黄預が死に到るシーンは、僕が撮影チームに合流したばかりの2日間に撮られたものです。この言葉から入り、格闘シーンへと至りました。
脚本を初めて見た時、黄預は獰猛で、残酷で狡猾で疑い深く、陳恭の為人と比べると悪人に当たる役所でした。
当初とっつきにくく戸惑ったものの、最後のシーンから撮影に入ったことで、僕は黄預を演じるための秘密を発見することができました。
一人の人間として生を受けた者の悲劇の色。役作りをしてゆく上で、僕は黄預の心の底を探すうち彼を大好きになってゆきました。
僕は撮影のさい常に真剣に臨みます。幕間に談笑したりリラックスして気分転換したりということは滅多にありません。
僕はずっと黄預の精神世界の中に居続けました。
それは静かで、孤独な世界ーーー
教団を復興させる夢を背負い、生き抜くために魏と蜀の動向に目を光らせ、誰も信じようとせずとも敢えて野心を抱く。
駒に甘んじることに抗いながら、結局は駒として死にゆくしかなかった。彼が負わなければならなかった、《風起隴西》に於ける僕の表現とは、黄預の悲鳴、黄預の哀しい宿命です"ーーー

『瀧夜曲』に寄せて

二年前の正月、《陰陽師瀧夜曲》という暁晨が出演した映画が、監督の過去の悪行と主役俳優の犯罪によってお蔵入りになった事件があった。
私の悲嘆と落胆はひとかたならず、毎日不毛な配信祈願活動などして泣き暮らしていた。

泣き暮らしていた、というのは比喩ではなく、本当に泣き喚いて涙を流しまくっていたのである。
それは彼を日本に紹介できるこの上ない機会であると思ったからだった。

泣き暮れている私とは違い
彼はがむしゃらに前を向き、これでもかと仕事をしまくり邁進した
事件の直後から《贅婿》《雪中悍刀行》《風起隴西》《卿卿日常》と、俄に話題作に立て続けに出演し、『瀧夜曲』が上映後得たかもしれない以上の評価と評判をものにした。
今回私が殊に嬉しかったのは、この《風起隴西》の音楽が川井憲次によるものだったことだ。

暁晨は
弛まず情熱を抱き邁進することで
この作品に出演するチャンスを掴み
『瀧夜曲』では叶わなかった
川井憲次の音楽に乗せて演ずる姿を私に見せてくれた
私はそんな彼が誇らしく嬉しい
最後に
彼も聴いてくれた私の拙いピアノによる
オープニング曲をお聴きください
この演奏には
二年間にわたる私の悔し涙と
彼に対する感謝の気持ちが込もっています。

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