ショートショート①「日本のすずめ」(458字)
「おかあさん こもれびってがいこくに
ないんだって にほんごだけなんだって」
子すずめたちは、えさを飲みこむと
口々に言った 。
しかし母すずめは「そう」とだけ言って巣のふちに立ち、また飛び立つ体勢をつくった。
ちらっとうしろの子すずめたちを見ると、みな くちばしは笑う時のかたちをやっていたが、目は悲しそうだった。
母すずめは胸のあたりがピシッとヒビが入るように痛くなったが、だまって飛び立って行って公園へ下り、えさ探しを始めた。
ふと見上げると、木々の間からきらきらと木漏れ日が降り注いでいた。
へえ 外国にはない言葉なのか。ふうん。と思い、 ちょっと笑いをこらえたあと、またえさ探しを続けた。
帰り、目印にしている高い木の横を飛んでいつもの枝の場所が近づいてくると、なにか様子がちがう気がした。
するとすぐに、めちゃくちゃに散らばった巣が見えてきて、すこし残った底の部分に、見慣れたくちばしの上の部分と、薄い灰色の羽が何枚かくっついているのも見えてきた。
母すずめは目をそらすとそのままずっと飛んで行き、知らない町の電線へ止まった。
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