僕の場合
教室の真ん中でいつも眠っている。
普通科から特進にきて、出席番号が同じになったあの子はだいたい…いや、いつも寝ている。
堂々とCDウォークマンで音楽を聴きながら。
日直だってほとんどしない。
黒板を消したり移動教室の時の戸締りとか電気を消すとか、
というより彼女はいつも寝ていて移動もしない。
クラスで、もし盗難騒動なんかあったら真っ先に疑われるのに…と思うと僕は気が気ではなかったけど、彼女はそんな事少しも考えていない。
たまに、起きているときはだいたい英語のグループ学習で、テストの成績は良くないみたいだけど単語ゲームになると早いし間違えたりしない。
他の子とハイタッチしたりするから仲良しなのかなと思ったけど、それ以外では全く絡まないし仲良く話している素振りはない。
女子は大抵、グループができるけど彼女はどのグループともお昼ご飯を食べる。
なんならクラスの子とじゃなくて普通科の子とも話をしたり弁当を食べたりする。だけど僕には全く楽しそうには見えない。
それでも誰かと食べるのは群れたがりなのかと思ったけど1人で食べて、やっぱり寝ることの方が多かった。
ある日の日直。僕は日誌を彼女に渡してみた。すると彼女は
「私が日誌書いと良いの?何もしてないのに良いところだけ持ってくみたいになるけど」
と言った。
だったら、お前も手伝えよ!と思ったけど言えないし。僕はただ普通に頷いた。
彼女は渡された日誌を途中くらいから読みはじめて笑ったりしていた。
誰の日誌に笑ってるのか気になったけど聞くことも確認することもできなかった。
僕は彼女が日誌を書いて先生に提出するでもなく日誌置場に戻すのを見た。
何を書いたのか気になって開くと、誰よりも綺麗な字で日誌が埋められていた。
特に変わったことは何も書かれていなくて、というよりも僕に対するコメントを少し期待していたのだと思う。がっかりした。
ふと、彼女が笑っていたところはどこか分かるかなと思ってページを一枚一枚めくると僕の書いた日誌のコメントに彼女の字で「いつもありがとう。」と書いてあった。
僕のページで笑ったのではないかもしれないけど僕は彼女に恋をした。