社内政治生存マニュアル 第7章 上司をパージ(粛清)せよ!
【前回までのあらすじ】
色々あって、未経験のサイコパス上司をパージしようと決意したずんずん。しかし、一人でパージはしてはあかんと気づいたため、仲間を集めるべく「社内政治がめちゃくちゃうまくてめちゃくちゃ仕事しないパーソン」を勧誘することにしたのだが…?
【登場人物】
ずんずん:わい
未経験さん:未経験のサイコパス上司、虚言癖あり。
同僚子:社内政治がめちゃくちゃうまくてめちゃくちゃ仕事しないパーソン
🌟🌟🌟
私は「社内政治がめちゃくちゃうまくてめちゃくちゃ仕事しないパーソンこと同僚子を勧誘することにした。
同僚子は正直なところ、調子が良く信用に値しない人物だった。
しかし、同僚子は非常に社内政治がうまいのだ。
同じチームにも関わらず、私が24時に帰っているのに対して同僚子はいつも17時で退社している。
自分のやりたい仕事だけをやって、それが大変だとアピールする女…それが同僚子だった。
彼女は学生時代から体育会系に入り、成績も良く、先生受けもうまい…そんな常にクラスのヒエラルキーの上にいた「真の陽キャ」であった。
真の陰キャたる私が同僚子と手を組むなんて…
しかし、集団で未経験サイコパス上司をパージするためには、このような「真の陽キャ」が必要である。
私は同僚子にチャットを送ることにした。
『最近、仕事の調子はどうですか?未経験さんの下ってどうですか?』
軽いジャブである。
返事はすぐに来た。
『もう最悪っすよ。コーヒーブレイクしません?』
さすが陽キャ、話が早かった。
チャットではなく、対面で話したがる所がすでに陽キャと陰キャの違いをまざまざと見せつけられた。
私たちは時間を決め、オフィスのカフェで待ち合わせることにした。
ランチタイムではなかったのでカフェには人気がなかった。私たちは会社から無料で支給されている泥のようなコーヒーを飲みながら話し始めた。
ここで愚かな人間は、
「未経験上司どうっすか?まじ仕事できな過ぎて、くそ馬鹿すぎますよ。あいつしかもサイコパスっすよ」
などと、直接的な批判をしてしまうのだ。
多くの人は勘違いしているが、基本的に
オフィスで人の悪口を言っちゃいけないんだよ…。
知ってた…?
正しくは
「オフィスで人の悪口を言って良い人間」と
「オフィスで人の悪口を言ってはいけない人間」が
いるのだ。
「オフィスで人の悪口を言って良い人間」とは、オフィスである程度の権力と影響力を持った人間である。お局様などは影響力を持っているので人の悪口を言いまくれるのだ。
同僚子と私はまだ若輩者、「オフィスで人の悪口を言ってはいけない人間」に部類されいた。
そして二人とも関係性は良好だが、互いに互いを信用していない。
どちらかが悪口を言った場合、
「あいつこんなこと言っていましたぜ」
と周りに言いふらされる可能性もある。
それが未経験上司の耳に入り、尾ひれがついてCFOの耳に届いた場合、私はオフィスで人の悪口を言いふらす人格破綻者としての烙印を押されてしまう。
どちらかがどちらかをはめるかもしれない。
同僚子と私は、そんな薄氷の上で会話をしていた。
「最近、どうですか?忙しいですか?」
と私は同僚子に聞いた。同僚子は17時に帰って、就業中にジムに行っていることを私は知っていた。忙しいわけはない。
「いやそれがですね、未経験さんがレポートラインになってから何か確認作業が増えちゃって時間取りすぎて困っているんですよ」
同僚子の言葉を聞いて、私の目の奥が暗く輝いた。
さすが同僚子、社内政治に秀でているだけはある。
「人格」を否定せず、現状の「仕事」の問題点だけを指摘する
これがオフィスで人をパージする時の第一手である。
「私も似たような状況です。未経験さんがレポートラインになって三か月ですね。このまま同じパフォーマンスが続く場合、年度決算の時、私たちに影響があるかもしれませんね」
と私も「現状の問題点」と「それによって予測される未来」そして「我々に与えるであろう影響」について答えた。
私はここで同僚子の「利害」を刺激したのである。
人を動かす時のコツは、相手の「利害」を刺激することである。
その利害は人によっては「保身」だったり、「面子」だったり、何かの「欲」だったりする。
同僚子の場合の「欲」は「残業時間」であった。
同僚子はワーク&ライフバランスを非常に重要視している。とはいえ、繁忙期である年度決算時は彼女も残業をしなければいけない。しかし、未経験上司によって残業時間が伸びることは彼女にとって許しがたい状況であった。
「それは良くないですね。ずんずんさんは決算時いつも深夜まで残業してるじゃないですか。これ以上残業したら体が持たないですよ」
と、同僚子はスッと自分の問題を私の問題にすり替えてきた。
う、うめぇ~。
私は心の中でうなった。
「そうですね。私も持たないと思います」
と一旦、私は同僚子の言ったことに同意した。
「そういえば、同僚子さんは仕事の一部を未経験さんに引き継いでるじゃないですか。あれ、終わりました?」
と私は聞いた。
同僚子は苦い顔で
「ずっとやってるんですけど、未経験さん、全然覚えなくて。引き継いではまた教えて、引き継いではまた教えての繰り返しで全然終わらないんですよ」
と、自分の苦労話をはじめた。
同僚子はべらべらといかに未経験の仕事っぷりがやばいかを話始めた。
同僚子は話が長いのだ…。
彼女の愚痴が10分ぐらい続いた所で私は話をさえぎった。
「それは大変ですね…もう三か月も経ってるから上が何か言ってくるかもしれませんね」
「あ~、言ってきそうですね~」
同僚子は苦い顔をした。
もう一押しだと私は感じた。
「未経験さんのせいで、同僚子さんの引き継ぎが悪いみたいな感じになっちゃいますよね。同僚子さん、教えるのうまいのに。だから、未経験さんのおかげでチーム全体としてのパフォーマンスが下がっていることを上に伝えた方がいいと思うんですよ」
私の提案に同僚子の目が光った。
「そうですよね、これはチームとしての問題ですよね」
同僚子の言葉に私は頷いた。
「だったら、ずんずんさんと私で未経験さんにどのぐらいの時間を割いているかを記録していきましょう。私たちだけじゃなくて、マレーシアのチームも未経験さんと関わっているので話を聞いてきます。彼らにも記録してもらって、それを上に報告して現状を把握してもらいましょう」
と同僚子は言った。
は、話はえ~…
私は感嘆した。
同僚子は人数を増やすことで、さらに上司にエスカレーションする際に説得力を増そうとしているのだ。
しかし、私には一つ懸念があった。
未経験さんの上司、つまり前まで私たちの上司だった第五章まで大活躍(?)していた人間の話である。こいつは保身の心が強い。例え私たちがエスカレーションしたとしても、CFOのお気に入りである未経験さんに対して何かしらのアクションを起こすことができるだろうか?そもそも、こいつは未経験さんの採用についてもファイトバックしてないし…。
「あと、私はシニアマネージャーにもレポートするものがあるので、シニマネにも現状報告しておきますわ」
と私の懸念を払拭するように同僚子はサクッといった。
し、社内政治うま~。
とこれまた私は感嘆した。
上司の上の職位の者にまで伝われば、上司も保身を考えている場合ではないだろう。
権威を動かすのは権威が必要なことを同僚子は空気のようにわかっていた。
そして、シニアマネージャーに現状報告すれば同僚子は「チームのことを考え、仕事頑張っている自分」をアピールすることができる。
し、社内政治うま~(二回目)
我々は泥のようなコーヒーを飲み終え、共に「未経験さんの仕事ができない記録」を取ることに合意した。
虚言癖の人間をパージするのに必要なのは絶対的な「事実」である。
そういう意味で「未経験さんの仕事ができない記録」は、その「事実」を突きつける良いエビデンスになるだろう。
私は当初の目的通り、パージを集団戦で計画できることに安堵した。同僚子がプレゼンスを示すのは気に食わないが、パージがうまくいかなかった時、同僚子が返り血を浴びるのでそれはそれでいいのだ。
しかし…。
と私は考えた。
「未経験さんの仕事ができない記録」だけを報告するのではまだ足りない。
そう、私の性格の悪さがばれちゃうので、これはサロンで連載したりnoteの有料記事なのだ…。
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