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社内政治生存マニュアル 第8章 サイコパス上司の逆襲

【前回までのあらすじ】
サイコパス未経験上司をパージしようと、同僚たちと動き出したずんずん。勝手に炎上する未経験上司のサポートをしてずんずんのプレゼンスは上がるばかり…。このまま未経験上司の命運が尽きるのを待つばかり…と思っていたが…。

【登場人物】
ずんずん…ワイちゃん。
未経験さん…ずんずんの上司。未経験なのに突然他部署から異動して上司になった。虚言癖あり。
同僚子…ずんずんの同僚。未経験さんのパージのため共闘。基本良い奴だが信用できない。
苛烈上司…ずんずんの元直接の上司。性格苛烈。出世して未経験さんの直接の上司

🌟🌟🌟

未経験さんが関わったプロジェクトはどんどんと炎上していった。

そして、同僚子の方も、未経験さんの「仕事が出来ない記録」を色々と集め、シニアマネージャーにエスカレーションするタイミングを狙っている。

愉快愉快…。

私は、比叡山を焼き討ちしている信長のような気持ち(※イメージ)になりながら、未経験さんが焼かれて行くのを見ていた。

しかし、ここで事件が起こった。

「僕にはわからないって言ってるでしょう!!!!!」

未経験さんが突然キレだすようになったのである。

「僕には出来ませんよ!!!!」

会議室でそう叫ぶ未経験さんを見て、私を含むミーティングのメンバーは呆気にとられた。

我々は皆、鍛え抜かれた傭兵のような戦歴(※職歴)の持ち主である。

『出来ません』と言った途端、クビがはねられる…そんな社会人生活をしてきた。

それをあっさりと会議中に「出来ません」と叫ぶとは?

え?それ、やって良いの?

と、我々は呆然とした。

未経験さんの上司にあたる苛烈上司も一瞬呆気に取られていたが、すぐに気を取り直し、

「出来ないじゃなくて、出来る方法を考えろ!!それがお前の仕事だろ!!」

と叫び返した。

さすが、苛烈上司!!その通りだぜ!

と私は思ったが、

「出来ないものは出来ないんです!!!」

と未経験さんがキレ返し、会議室は怒号に包まれた。

おっ、このノリ、懐かしいね…。

私は外資系金融に勤めていた時を思い出した。

オフィスで営業部長が新卒の営業の子に、

「てめぇそんな態度だとこの業界で食えなくするぞ!!!」

って壁ドンしながら叫んでるのを良く見たな…。

ロッカーがぼこぼこだったオフィスに勤めた事のある者は皆友人である。

私は当時の記憶を思い出し、節目がちになった。
チームメンバーの皆も似たような記憶があったのだろう。全員が節目がちになった。

未経験さんと苛烈上司の怒号がひと段落すると、

「同僚子!お前、サポートしろ!」

と突然、苛烈上司が同僚子を未経験さんのサポート役に任命した。

未経験さんのサポート役として正式に同僚子がアサインされたのだ。

やった…!!!

と私は思った。

同僚子は、チームで一番仕事が少なかったので断ることもできない。

これで私は未経験さんのサポートをする必要がなくなった。
同僚子に全部押し付ければ良いのだ。

突然のアサインに同僚子は絶望的な顔をしていた。

🌟🌟🌟

ミーティングが終わると同僚子が私のデスクにやってきた。

「何かサポート役とか言われたんですけど…」

と同僚子は不服げである。

「今の状況からみると大変ですよね」

と私は返した。

「ちょっと早いけど、シニマネに未経験さんのことをエスカレーションしようかと思います」

「!?」

私は同僚子の発言に驚いた。
同僚子としては、未経験さんに関わりたくないので一刻も早く彼をパージしたいのだろう。

「え、あ、うーん…お気持ちはわかりますが、もうちょっと様子を見た方がいいのでは?」

確かに未経験さんの問題をエスカレーションするための証拠は十分に集まっている。
しかし、私はまだ「その時」ではないと考えていた。
なんだかわからないが私の勘が「今ではない」と告げているのだ。

私はそう言ったが、同僚子は「そうですかね」と言って自分のデスクに戻っていった。

この後すぐに、同僚子は私の忠告も聞かずにエスカレーションをしてしまう。
それが彼女の首を絞めることになるとは、この時の私には知る余地もなかったのだ…。

同僚子が去った後、私は遠くに座る未経験さんをちらりとみた。

未経験さんは、オフィスでの居心地がかなり悪いのだろう。
卑屈な笑みを浮かべ、デスクで背中を丸めている未経験さんには、就任当時の自信にあふれた爽やかガイの面影はどこにもなかった。

その姿を見て、私は彼を哀れに思った。

私も社内政治で負けまくってきた人生である。

オフィスの人全員に「使えねぇ奴」って思われながら仕事するのは本当にしんどいのだ…。

未経験さんの丸まった背中はかつての私を思わせた。

『あの子、本当に頭悪いのよね』

と24歳の時、お局様が私の目の前で陰口を言っていたのを思い出す。
目の前で言っていたらそれは陰口なのか、それは永遠の謎だが…。
その時の私もきっと卑屈に笑っていたことだろう。

社内政治をするためには「ある程度の実力」が必要なのだ。
未経験さんは前の部署では「それなりに仕事が出来る男」だったのかもしれない。そして、口がうまかったので今のポジションを得ることができた。

しかし、彼は役職が上がるからと言って、経験も知識もないのにこの部署に来たのが運の尽だった。

未経験者でマネジメントになった場合、生き残る方法はある。

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