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Macの“Flurry”スクリーンセーバ誕生秘話

スクリーンセーバ使ってる? ブラウン管の時代が終わって焼き付きの心配がなくなったかと思いきや、最近はいくつかの高解像度液晶で焼き付く話を聞く。筆者も iMac の 5K パネルでそれを経験し、再びスクリーンセーバを使いだした。

こういうのって部屋のインテリアとかと同じで、張り切っていろいろ探して試すものの毎日見るものだから結局は飽きがこないが味わい深いものを選択することが多いと思う。筆者も一通り試したあげく、macOS に標準で入ってる“Flurry”に帰ってくることに。

Flurry といえば Mac ユーザでなくてもどこかで目にしたことがあるぐらい、OS X が登場して以来 Mac の顔の一つだ。シンプルだけど美しく、見ていて飽きない。というか当時から何も変わっていないのに 今日の Mac に表示しても古く感じないセンスがすごい。

ゆらゆらした動きに癒される

しかし、実はこの写真に写っているのは Windows の画面。Flurry には“Windows 移植版”があるのだ。移植版?? クローンではなく...? Apple がわざわざそんなものを作るの!?

オープンソース

実は、Flurry はもともと個人が作って配布していたオープンソースのスクリーンセーバなのだ。それが Apple の要請で OS X に付属するようになったという経緯がある。当時配布されていた姿を知る人はほとんどいないと思うけど Windows 移植版の説明文にはしっかり歴史の痕跡が。

This is a port to Windows of Flurry, a beautiful screen saver for Mac OS X written by Calum Robinson (http://homepage.mac.com/calumr/).

http://www.maddogsw.com/flurry/

オリジナルを作ったのは Calum Robinson という人。homepage.mac.com という URL にも注目で、当時の iTools(iCloud の前身の前身の前身)に存在した Web ホスティング機能のものである。その機能の消滅とともに彼の Web サイトも消えてしまったみたいだけど、探してみたら GitHub に彼自身のものと思われる Flurry のレポジトリを発見。

コードが Swift でなく Objective-C なのは当然として retain、release、autorelease みたいな懐かしい言葉が当たり前のように出てくる、明らかに当時のままのコード。

さらに調べていると数々の派生物が。OpenGL ES ベースで iOS に移植したものや、WebGL 版まで!

WebGL 版:Flurry が Web ブラウザの中で普通に動く

インタビュー

しばらく Google でうろうろしているうちに、なんと、最近書かれたらしい Robinson 氏へのインタビュー記事を見つけた。

スクリーンセーバを専門に取り上げる Web サイトのようだ。実におもしろい内容なので一部を訳して紹介してみる。

アイデアについて

「ある日インターネット上で Brian Wade 氏のコードを見つけた。いくつかの流線でパーティクルを動かすものだったんだ。それを一週間ちょっといじってみているうちに、なんだか自然で、くつろげるような動きになった。Flurry はどこかに存在するものを再現しようという試みじゃない。複雑な動きがいくつかの単純な数式によって生み出されているにすぎないんだ。」

One day I found some code on the internet by Brian Wade for moving the particles in streams, so I spent a week or so playing around with it until it moved in a sort of natural, relaxing pattern. Flurry isn't an attempt to recreate something that exists elsewhere, it's just the emergence of complex behaviour from a few simple mathematical rules.

人々の反応について

「それまでにもいくつかのソフトウェアを配布したことがあったけど、数百ダウンロードぐらいのものだった。だから最初の数週間で数千もダウンロードされてびっくりしたよ。Apple のプロダクトマネージャから Mac OS X に同梱させてほしいとメールが来たときは本当に衝撃的だったね。まあ最初はユーザに選択させるオプションの一つとしてだろうと思ったし、一年もすれば別のものに置き換わるんだろうと思ってた。でも Apple はそれを 10 年以上もデフォルトにしていたんだ。僕はいつもテレビや映画みたいな想像もしない場所で Flurry が動いているのを見かけてはひっくり返ったよ。」

I had released a few bits of software before and got maybe a few hundred downloads, so I was surprised when I got a few thousand in the first few weeks. When the product manager at Apple emailed me to ask if they could include it in Mac OS X I was completely shocked. At first I thought it would be an extra option for users and after a year or so it would be replaced. But Apple made it the default for over ten years. I always get a kick out of seeing it pop up in unexpected places, like TV shows and movies.

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特にソフトウェアの世界で、十年以上も色あせずに現役で(レトロものとしてではなく)人々に愛され続けるというのは滅多にないことだと思う。一生のうち一回でもそんなものが作れたら幸せだろうな。

この記事は筆者の運営する自作 CMS の Web サイト“ひ to り go と”掲載記事を加筆修正したものです。オリジナル記事は 2017 年執筆:

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